第13話 復活への祈り
天使ラギエルと天使ラグエルの攻撃によってまほろばは太平洋上で撃墜された。人類最後の希望とも言えたまほろばが沈んだことで、人類滅亡は確定的なものになった。
「あはは。すごい・・・すごい!私達の前に敵はない!!」
ウリエルを倒したまほろばを倒したことでラギエルの興奮は頂点に達していた。
「・・・」
相棒が高笑いを浮かべる様をラグエルは心配そうに見ていた。普段のラギエルはラグエルよりも感情表現は豊かだがここまで顕著に感情を出したりはしなかった。常にラグエルを守り寄り添うことを考えていたはずだった。まるでたがが外れたように、ラギエルは高笑いを続けていた。
「全員・・・無事か?」
暗闇の中で、昇はブリッジクルーに呼びかけた。
「はい・・・なんとか・・・」
昇の周囲にいたオペレーター達が次々と無事を報告していった。
まほろばが高速空中戦闘を主眼において設計されていることが幸いした。クルーは常にシートベルトに固定された状態で操艦、火器管制を行なうため強い振動でも体がそれほど揺さぶられることなく衝撃に耐えることが出来たのだった。
「しかし、機関が停止し、システムもダウンしています。被害状況も本艦が今どんな状態なのかも分かりません。」
「大丈夫だ。桜花を信じろ。彼女ならきっと、何とかしてくれる。」
その頃、南太平洋の孤島地下にあるM機関の秘密基地では、まほろばが海面に落下していく様子を誠と千尋が悔しそうな表情で見ていた。
「まほろばが・・・沈む・・・」
10年近く追い続け、乗っていた無敵の戦艦。それが今まさに沈む。千尋は一瞬自失した。
「千早博士。かぐづちは!?」
誠は隣でモニターを見ていた千早博士に詰め寄った。
「かぐづちは今、最終調整中だよ。」
「しかし、このままではまほろばが・・・」
「火器に通じている君なら分かるだろう?カグヅチの火力と出力はまほろばを遥かに凌駕している。それだけにコンピュータと主機の連携が不可欠なんだ。」
「しかし・・・」
「大丈夫。僕が作ったまほろばはそれほどやわじゃない。信じるんだ・・・彼らを。」
千早博士は二人を諭すように優しくそして、強く言った。三人の目の前にはもう一つの巨大戦艦がしずかに目覚めの時を待っていた。