プロローグ 消滅アメリカ第七艦隊
「うわぁぁぁぁぁ!!!!」
太平洋上空、高度500mでアメリカ海軍のF-18Eスーパー・ホーネットが爆散した。
「この・・・化け物・・・」
スーパー・ホーネット隊長のジョシュア大尉が憎々しげにオロチを見た。
上空をフライパスするスーパー・ホーネットの編隊の真下には、オロチの姿があった。戦闘開始から15分が経過し、30本以上のミサイルをアメリカ海軍が誇る最新鋭機の編隊はお見舞いしたが、オロチの周波バリアの前にことごとく無力化され、オロチの放つ光弾の前に次々と撃墜されていった。
のこるはジョシュア含めて2機になった時、オロチはいきなりその姿を海中に没した。
「いったい・・・どうしたんだ・・・」
ジョシュアは理解出来なかった。勝っていた戦いだったのに、どうして逃げたのか。だがジョシュアには考える時間はなかった。燃料が限界に近づいていたのだった。ジョシュアはすぐに機を母艦のある艦隊に向けようとしたそのとき、無線から見知らぬ男の声が聞こえた。
ジョシュアの機だけではなかった。アメリカ本国でも、日本でもイギリスでも、ロシアでもフランスでも、インターネット、TV、無線、ラジオありとあらゆる媒体から声と映像が現れた。
「我が名はミカエル。人類を滅亡に導くもの。人類よ・・・我が天の槍を刮目せよ。」
ミカエルが空を指差すと、太平洋の映像が現れた。眼下にはアメリカ第7艦隊の輪形陣が広がっていた。雲を破って人型の機械が現れた。
白く神々しく輝くその機体は背後に大きな六対の翼を持ち、右手には大きな槍を携え、まさに天使と形容するに相応しい姿をしていた。第七艦隊の面々は突如現れたこの巨人をただ見上げることしか出来なかった。
「ウリエルよ。無知なる人類にその力を見せよ・・・」
ウリエルと呼ばれたそれは、右手に持った槍を下に向けてただ回した。わずか1秒にも満たない、流れるような美しい動きだった。
だが、その動きがもたらしたものは恐ろしい結果だった。その天の槍の一撃は海を割り、第7艦隊を一瞬で消滅させた。その爆煙は遥か遠くを飛行するジョシュアからも見えた。
「何だ・・・俺は、夢を見ているのか・・・」
ジョシュアの目指している先に最早艦隊は存在しなかった。あるのは破片と、重油にまみれた海面が広がっているだけだった。
「世界よ・・・我々は対話も交渉も望まない。ただ望むのは世界の滅亡。それだけだ・・・」
ミカエルと名乗った男の背後で6体の人型兵器が見えた。その姿はウリエルと同じように白く光輝いていた。
「人類よ。我らが七大天使の前に滅ぶが良い。」
その姿を最後に。通信が切れた。
この日、全世界が人智を超えた力と絶望を目にした。
太平洋上空、アメリカ艦隊上空を小さな戦闘機が飛んでいた。
零式桜花二型強行偵察タイプ「影花」であった。
「千尋さん。まもなく現場の海域です。」
機体を制御する人工知能の桜花が千尋に話しかけた。
「こいつはひどいな・・・桜花さん。アメリカ艦隊は全滅だ。どの艦も原形をとどめていない・・・」
影花に搭載された超望遠光学カメラで撮影しながら千尋は桜花に言った。
「これほどの力を持つものが私達以外にいるなんて・・・」
モニターに映し出された桜花は口を押さえていた。桜花自身、M機関以外オーバーテクノロジーの存在はショックであるようだった。
「もしかしたら、生存者がいるかもしれない。桜花さん、もう少しだけ探してみよう。」
桜花はモニター越しに頷くと、高度を下げて行った。
天使ウリエル
頭頂高:170m
全幅:300m(翼含む)
主機関:不明
武装:神槍ブリューニク
七大天使の一機。主機関、その他ほとんどが謎のベールで包まれている。
固定武装は神槍「ブリューニク」。近接戦闘の他、先端からビームを発射する遠距離用の武器としても活用出来る。
ブリューニクの一撃で、第七艦隊を壊滅させてしまった。