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08.傭兵組合

傭兵組合のドアを開く。

グリンからの情報通り、傭兵組合の作りは入り口を入ってすぐの所に掲示板、奥に幾つかの受付という構造だった。


掲示板を眺めてみると、次のような張り紙が張ってあった。


『セイル食堂。皿洗い兼フロアスタッフ募集。条件なし。賄い付き。詳細は面談。』

『王都まで片道。荷馬車の護衛3名。黄以上必須。最低保証1000。道中の状況で加算あり。』

『白の樹海の砦まで食料輸送護衛。緑以上推奨。日帰り。700。』

『うちのねこをさがしてください。100。』

『黄の魔法使い。空間魔法、攻撃魔法に自信あり。パーティメンバー募集。』

『白の樹海の魔物分布調査。緑以上。詳細は面談。』

『青の迷宮5階層まで探索中。前衛職を求む。緑以上。報酬は頭割り。』


掲示板の上には依頼票と記されていた。


(グリンの言っていた通りね。傭兵っぽい戦闘を想定した仕事もあるけど、町の何でも屋としか言えない仕事もある)


受付は総合窓口。契約窓口。買取窓口。傭兵相談窓口とある。傭兵になる。という事はある種の契約だろうから、契約窓口だろう。と、美咲は契約窓口に向かう。


「傭兵組合へようこそ、シェリーです」


受付のお姉さんが迎えてくれた。

年代は多分美咲と同じ、茶色い長い髪に青い目。


「あ、美咲です。ええと、傭兵になりたいんですが」

「承知しました。傭兵についてのご説明は?」

「お願いします」


傭兵は基本的に自由。例外は魔物溢れが発生した時だけで、町の自衛のために出来る範囲での協力を求められる。

他は好きな仕事を選んでこなす。選んだ仕事には最後まで誠実に。が求められる基準だ。当然、達成しなければならず、未達成では無報酬、場合によっては罰則金を払わされることになる。嫌なら出来ない仕事は受けない事。受けたい仕事が掲示板にあったら、紙を剥がして契約窓口へ。

仕事は多種多様だが最近は街中での仕事が多いらしい。ある程度戦いが得意な傭兵は依頼を受けずに魔物を狩り、魔石を持ってくることもあるそうだ。その場合は買取窓口へ。

その他、生活上困っていることなどあれば、取り敢えず相談窓口に行くと助言を得られるらしい。役立つ助言となるかは状況によるとの事。

傭兵には階級が割り振られている。

戦う可能性が高い仕事には、この階級制限が掛けられている場合が多い。発注者が、この仕事はこれ以上の階級の傭兵で募集する。というように、目的達成に必要な階級を定めるのだ。

当然だが、戦いに関する依頼では階級が高い方が実入りが良い。逆に、階級制限のない、例えば猫探しであれば、階級が高かろうが、低かろうが、貰える額は同じだ。

階級は虹の色で決められている。ミスト、と言うよりエトワクタル王国において、虹の色は5色だった。

赤黄緑青紫。それが傭兵のランクとなる。虹の外側の赤が最も高い階級で、紫がもっとも低い階級だった。

傭兵になると身分証明となるペンダントが支給される。

支給されるペンダントはこれらの色に色づく魔道具との事で、そこそこ高価な物らしい。


「……ということで、加入費用は300ラタグ。翌年からは年会費が100ラタグです。魔物溢れ対応以外の義務はありませんが出来れば年間1回以上の受注を努力目標としてください」


との事であった。


「努力目標でいいの?」

「体調や体力のご都合次第ですので」


聞けば、傭兵には怪我で引退した兵士やご老体もいるとか。

300ラタグ。青海亭一泊相当で、ハロワを使える権利を買う。と考えれば暴利でもないし、年会費も無理な金額ではない。


「それじゃ、加入します」


傭兵組合加入の手続きは、数枚の署名と300ラタグの支払いで完了した。

代わりにペンダントが一つ。

紫色の直径3センチ程度のペンダントはトップの位置を自由に変えられるが、大半の傭兵は目に見える位置、首元にペンダントトップが来るように着けている。それを真似てペンダントを着ける。


(カラータイマーっぽいなぁ、出来れば胸に着けたいかも)


さて、傭兵らしい服装で、傭兵のペンダントも手に入れた。


「後は武器、かな」


美咲の今までの最強は包丁だった。だけど、あれは木の上からの攻撃だから成立した戦い方だ。

何かあった時に身を守るには、相応の武器が必要だろう。

それに武器があれば色々と抑止効果が期待出来る。

折角武装が怪しまれない傭兵の姿になったのだから武器を持たないという選択肢はない。


 ◇◆◇◆◇


傭兵組合で聞いたところ、鍛冶屋とは別に武具専門の武具屋があり、初心者にはそちらがお薦めとの事だったので、場所を教えて貰った美咲は武具屋を訪ねた。

入ってすぐ、壁一面の武器を見て美咲は首を傾げた。


「はて?」


種類は思ったほど多くはない。

槍。両手剣、両手・片手両用の長剣に小剣、短剣。ナイフに投げナイフに弓矢。見た目のバリエーションはその程度。

それぞれ、何種類かの見た目とサイズが用意されている。

だが、それらを見て、美咲は迷った。


(どれが良いのか分からないや)


当たり前である。

SF以外の小説に興味を持たず、中世の歴史も学校で習った程度の普通の女子高生に中世の武器が理解できる筈がない。

例えば、壁に掛けられた短剣には、通常の短剣と、マン・ゴーシュと呼ばれる左手用の物、同じく左手用だが敵のレイピアを圧し折るためのソードブレイカー等がある。

だが、美咲にとって、それらは等しく短剣でしかない。

選ぶには識らねばならない。だが、美咲には情報が欠如していた。用途を意識して選べるわけがなかった。

暫く武器を眺め、美咲は見た目が気に入った短剣を一本購入して武具屋を後にした。


(取り敢えず、対人間用の抑止力として、そこそこ目立つ大きさの武器を買ってみたけど、使う自信ないなぁ)


美咲が普通の短剣だと思って買ったのはマン・ゴーシュだった。

柄の部分に大きなフィンガーガードが付いているタイプのそれを、美咲は腰の後ろ、アタックザックの下に装着した。

……右手で抜けるように。

………主武装もなしで。

素人丸出しであった。

マン・ゴーシュはある意味盾的な武器ではあるが、そもそも防具の存在に思い至っていない。

素人以下であった。


 ◇◆◇◆◇


武装を整えそれなりの恰好になったつもりの美咲は、青海亭の自室に戻っていた。

再び今後の方針である。

グリンからの情報は、子供目線だけに偏ってはいるだろうけれど素直なもので役に立った。

それを踏まえて今後の方針の再検討である。

あの白い野犬が魔物だったとして、美咲が正面からあれを倒せるか――否である。

よって傭兵になって魔物退治で稼ぐのはNGだ。

『呼び出し』での商売については保留とした。どうしようもなくなったら考えなくもないが、元々この世界にない物を販売するのは目立ちすぎる可能性がある。既に手遅れかもしれないが。

後は魔法と言う物について勉強してみるのもありかもしれない。

魔素と魔法に関係があるとすれば、フェルが二度見したほどの濃密な魔素は、この世界で生きる力になるかもしれない。この世界にある力ならおかしな目立ち方はしないだろう。


「見た目は完璧な傭兵になった」


気のせいである。見た目、完璧な素人である。


「常識も身に付けた。後は溶け込むだけ」


10歳程度の子供と会話した程度の知識。当然穴だらけである。


「完璧だよね」


完璧に穴だらけであった。


「当面のお金はあるから、しばらくは傭兵組合で出来そうな依頼探して、依頼をこなしつつ更に溶け込む」


ただし臆病者だけあって、幸いな事にその方針は無難なものだった。

ご指摘いただいた誤記を修正しました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 壁]_・)ぷぷぷ ってか、砦に飯、運んでやって…………………………ひもじくなるから
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