番外編・ロボット工学三原則と透明な盾
1.魔法は具現化することにより、術者に強い影響を加えてはならない。また危険を看過することによって、術者に強い影響を加えてはならない。
2.魔法は術者の指示に従って具現化しなければならない。ただし、術者の指示が1項に反する場合はこの限りではない。
3.具現化した魔法は、1、2項に反するおそれのない限り、周辺魔素を利用して存在を維持しなければならない。
これが、美咲がアイザック・アシモフのロボット工学三原則をほぼそのまま使って提唱した、魔法の三原則である。
現在では魔法協会の教育を受けると必ず教えられる原則である。
同時期に美咲が提唱した、魔法のOSという言葉は根付かなかったが、その部分は本質ではない。
ロボット工学三原則の出典は『われはロボット』という小説である。
大雑把に意訳すると
1.ロボットは人間に害を加えてはダメだし、危険を見過ごして人間が害を被るのを見過ごしちゃダメ。
2.ロボットは1項に反しない限り、人間の命令を聞かないとダメ。
3.ロボットは1、2項に反しない限り、自分を守らないとダメ。
というような原則である。
これはロボットの陽電子頭脳が作られる際に組み込まれるロボットの本能のようなもの(厳密に定義されていない?)とされ、この原則に反したロボットは、活動を停止してしまったりする。
三つの原則により、ロボットは人に危害を加えられないはずだが、出典となった小説では、三原則に起因する様々な事件について記されている。
「なるほど。これが出典だったんだ」
美咲が提唱した魔法の三原則に関する論文を作り、それを国中に広めた後、実は小川が元ネタを知らなかったという事実を知った美咲は、日本に戻れるようになってから本屋で『われはロボット』と『鋼鉄都市』を買い求めて小川に渡した。
それらを読んだ小川は、日本で拠点にしているマンションのリビングでようやく理解できた、と笑った。
「何が理解できたんですか、おじさん」
「うん。魔法の3原則はとても綺麗にまとまっててね、美咲ちゃんの頭が良いとしても、簡単に出てくるようなものじゃないと思ってたんだ」
「それって美咲先輩のこと馬鹿にしてます?」
茜の声がぐんと低くなり、周囲の気温が下がったように感じた小川は、慌てて否定した。
「違うよ。高校生が考えたにしては、3原則は綺麗にまとまり過ぎてるってだけだよ。僕だってゼロからじゃ、あんな綺麗にまとまらないし、先人の知恵があったんだなってね」
小川の言葉を聞き、美咲は嬉しそうに頷いた。
「三原則は色んな作家がオマージュしてますし、それだけ完成してるんです」
「うーん、確かにそれっぽく見えますけど……」
茜は『われはロボット』の冒頭のロボット工学の三原則のページを開くと、指でその内容を辿り、首を傾げた。
「……このロボット三原則って、要は使用者の安全を確保しつつ、思った通りに使えて、長持ちであることって言ってませんか? それって言うまでもないことですよね?」
茜の言葉に美咲は嬉しそうに笑った。
「うん、自力でそれに気付くなんて、茜ちゃんは頭良いね。そういう見方もあって、汎用的な工業規格の一種であるって説を聞いたことあるよ。でも普通の工業製品は設計者がそうなるように設計するけど、ロボットの場合、ロボット自身がそれを本能として持ってるところが違うんだよね。だから、ロボットがいろんなジレンマを抱えたりして面白いんだよ」
「へぇ……で、それが魔法の三原則の元になったわけですよね?」
「そうそう」
茜の理解力に嬉しそうな美咲。
最近はSFの話ができる相手がいなかったので、こういう話に飢えていたのだ。
「なら美咲先輩、魔法は誰かがそれを守らせているのか、それとも、魔法自体に意識があるってことでしょうか?」
「うん?」
はて、と首を傾げる美咲。
「ええと、魔法の三原則を実現させる仕組みがあるわけですよね? それって誰が実現してるんでしょうか? ロボットの場合はロボット自身が実現するわけですけど」
「んー、そこは真剣に考えてなかったかな。論理的にどうかなっていうのばかり考えてたから」
「僕が前にアキに聞いた限りだと、一応その答えは女神様ってことになるかな……少なくとも、魔法の仕様を決めたのは女神様だし」
「それは設計者が女神様だってだけですよね? 魔法の仕様を決めたのが女神様だとして、魔法はそれをどうやって守ってるんでしょうか?」
「……なるほど、仕様じゃなくて仕組みか……ちょっと待って」
小川は収納魔法からアキを取り出すと、待機モードを解除し、まず最初に魔法の三原則の妥当性についてアキに問うてみた。
「……で、まずはこの三原則について、大きな間違いはあるかい?」
「いいえ」
「では、魔法はどうやって三原則を守ってるのか分るかい?」
「いいえ」
「……質問の仕方が悪かったかな……魔法が術者に強い影響を与えない仕組みをアキは理解しているかい?」
「はい」
その返事を聞いて小川の表情が変わる。
「その仕組みを説明して」
「魔素は人間の思考で制御され、集合し、変化し、現象となります。その際、思考に従って一定数の魔素が集合すると、そこに回路が形成され、禁則となる事項について制限がかかります」
「……なるほど。個々の魔素単位じゃ実現は難しいだろうと思ってたけど、そういう仕組みなのか……あれ?」
小川は腕組みをして考え込んだ。
そしてすぐに顔を上げる。
「アキ、だとしたら、魔素が体内に入って人体を汚染するなんてことは起きないはずじゃないのか?」
「わかりません」
「ええと……魔素が集合したときに人体に害を及ぼさないのなら、なぜ人体に魔素溜りができて、それが人体に悪影響を及ぼしたんだい?」
「術者の思考制御が行われていない場合、回路の形成は行われません。したがって、時間を掛けて人体に魔素が蓄積したのであれば、それは人体に害を及ぼす可能性があります」
「それはつまり、回路があれば、蓄積した魔素をなんとかできた可能性もあるのかな?」
「そこにある魔素が、回路に組み込まれれば、その可能性はあります」
盛り上がる小川とアキの会話に、茜は理解できません、と肩をすくめた。
「まあ、魔素が集合すると賢くなって、それが三原則を守るために働いているっていうのはなんとなく分りましたけど」
「単体の魔素だとナノマシンみたいなものだから、集合しないとそこまでの力はないってことだね、なるほど。ところで茜ちゃん、今度お薦めのSFがあるんだけど」
「えー? 前に読んだ猫が出てくるタイムマシンものとか、宇宙のゴミ掃除屋さんのマンガみたいなのなら読みたいですけど、難しいのはちょっと」
SFはなんか難しくてつまらないもの、という先入観のある茜が微妙そうな表情をする。
確かに、そういう作品も多いけど、と苦笑いをしながら、美咲は頷いた。
「なら、ゴミ掃除屋さんのマンガのアニメ版とかあるけど見る?」
「え? まさか買ったんですか?」
「うん。買ったことのないようなものを色々買っておこうかと思って。とりあえず、色んなDVD買ってみた」
DVDボックスをリビングのテーブルに並べる美咲に、茜は不思議そうな顔をする。
「なんで今時DVDなんでしょうか?」
「まず、中古がたくさん出回ってること。次に、あっちでも見ることができるポータブルな再生装置って考えたら、BDはほとんどないかなってなったんだよね。まあ、ノートパソコンとかに外付けポータブルって手もあるけど割高だしね」
美咲は小川に相談して、畳める太陽電池パネルとAC100Vに対応したポータブル電源装置を購入していた。
異世界側で再生する機会はまだないが、いつ地球との往還ができなくなっても後悔しないよう、美咲は様々なものを購入していた。
美咲の場合、衣類や消耗品、本を買うことが多いのを知っている茜だったが、今まで美咲があまり話題にしてこなかったアニメにも手を出しているとは知らなかった。
「ええと……そうすると、SFアニメがいっぱいですか?」
「アニメや映画に限らずね。スタートレックにスターウォーズ。未知との遭遇にスペース1999、600万ドルの男、アメリカンヒーローにヒーローズ、2001年宇宙の旅にブレードランナー、オデッセイにジュラシックパーク一式、ターミネーターとか知らないのが増えてたからそれも買ったし、E.Tにスーパーマンにマーベル系も押さえてみた。オリジナルからリメイクまで、もう、棚にあったの手当たり次第かな。あ、あと前に茜ちゃんが言ってた『ミストよ、私は帰ってきた』ってやつの元ネタをネットで調べて、それも集めたけど、なんか凄い枚数になったよ」
「あー、あれって、色んなシリーズがあるみたいですから。でも、美咲先輩、巨大ロボットアニメは好きじゃないって前に言ってたような……違いましたっけ?」
「うん、まあ食わず嫌いもダメかなって。だから、買った中には今まで興味なかったジャンルも色々あるよ。恋愛やファンタジーとか」
ファンタジーと聞いて茜が興味を示した。
「ファンタジーアニメとか、私たちがいない間に色々出てますよね」
「うん。善し悪しが分らないから手当たり次第に買ってみたけど、なんか、凄い種類があってビックリしたよ」
「それは後でじっくり見てみたいですね。デジタルゲーム世界を舞台にしたのとかあったら、SFっぽい設定があったりしますから美咲先輩の好みにも合うかもですね」
「ゲーム世界を舞台に? ええと、テレビやスマホに映った世界?」
ほぼゲームをしない美咲にとって、ゲームの世界と言われても理解が難しかった。
ゲームはスマホでパズルを幾つかと、テレビゲームで海中探索したりの経験こそあるが、いわゆる ロールプレイングゲームには触れる機会がなかったのだ。
「いえいえ、なんかよく分らない技術で、脳を騙して、五感全部に外から信号送るんだったかな?」
「脳を騙す……超伝導技術で非接触型の高精度なセンサの話は聞いたことあるけど……あれは読み取り専用だよね」
茜の言葉から、美咲は昔のSFに登場した超伝導磁気センサという脳磁計のことを思い出した。
Superconducting QUantum Interference Deviceは、超伝導における磁束の量子化という現象を利用した、従来あり得ないほどの超高感度な磁気センサで、それを用いれば、その瞬間の神経上の電気信号が発する誘発磁場を、非接触かつ高精度に読み取ることが可能になるという物で、これを使った高精度な嘘発見器や、記憶を読み取る装置が作れるのではないか、というのはSFでは何回も使われてきたテーマである。
だがそれは、超電導技術を用いて、普通なら読み取れないような脳波を読み取るための装置であり、あくまでも高精度なセンサでしかなかったはずである。
「まあ、その辺はほら、存在しないワープとかタイムマシンが登場するSFだってあるじゃないですか」
「まあ……それはそうだけど、個人的に近未来物で、そういうのが曖昧なのってもやっとするんだよね」
「まあ、問題は科学的な裏付けじゃなくて、楽しいかどうかですから。アニメ化されたバーチャルリアリティものは、結構好きなのが多かったので、一度美咲先輩と一緒に鑑賞会したいです」
「そうだね……って、そうだ」
美咲は収納魔法からDVDボックスを取り出し、それを小川に見えるように掲げた。
「小川さん。このロボット! ナツやアキに似てるのは偶然ですか?」
頭部が丸く、目はひとつ。
首の周りの動力チューブが、ナツたちの頭部ユニットのフレキシブルアームによく似ている。
オリーブ色のずんぐりした体型のロボットのイラストを見て、小川は苦笑した。
「まあ、あれだ、うん。収斂進化ってやつじゃないかな?」
「美咲先輩、おじさんのあの笑い。あれはきっと何か誤魔化そうとしてますよ」
「別に怒ってるわけじゃないんです。ただ、ここまで形を似せるのなら、もう少し、色とかも寄せればいいのになって思ったんです。ほら、起動ランプとか」
アキの目は、胴体に半ば埋もれた四角い部分の左右に付いている。その状態でもそれなりに視野があるらしいので改造はしていないが、知らない人が見たときに、それを目だと思う人は少ないだろう。
なぜなら、その球状の頭部には、ひとつ目よろしく、動作確認用の起動ランプが点灯しているからだ。光っているランプはかなり目立つため、隅の方に埋もれかけているふたつの目より、ずっと目らしく見えた。
ただ、ランプの色は緑色で、ランプが明るすぎるからと、細かな穴のあいた板で蓋がされている。
イラストのロボットの目は、ピンクっぽい色なので、大分印象が違う、と美咲は主張した。
「あー、うん。まあ、ひとつ目っぽい色の起動ランプも実は作ってあるし、アキなら指示すれば起動ランプ周辺が凹んで、そのイラストとよく似た顔にもなったりするけどね」
「なるほど。やっぱりこれがモデルでしたか」
「そりゃ、小型の人型ゴーレム作るなんてなったら、何かモデルがないと単調なデザインになっちゃうし……正直、最初に美咲ちゃんの要望聞いたときから、頭部だけなら似た感じになるなって思ってたんだ。フレキシブルアームの収納方法とかは、そのデザインに合わせた」
「まあ、ナツに不満はありませんけど、サイレントランニングのデューイみたいなのとかも良いですよね」
「……それ、知らない名前だな……ええと」
小川はリビングに置きっぱなしになっている共用のタブレットを手に取り、サイレントランニング、デューイと入力して検索する。
出てきた、平べったい台形に足を付けて、胴体正面に油圧で動きそうな腕が一本だけ付いたそれを見て溜息をついた。
「なんというか、ここまで妙なのを出してくるとは思わなかったよ。まだR2D2とかの方がメジャーじゃないかな。これは……ええと、1972年の映画で、日本での公開は1979年か……美咲ちゃん、よくこんなの知ってたね」
「デューイはけなげで可愛いんです。小川さんも見たら理解できますよ。この映画はお父さんが好きで、DVD持ってたんです。ちゃんと買ってありますから、今度貸しますよ」
「なるほど、美咲ちゃんのSF好きは、家族によるエリート教育の成果だったのか」
小川の言葉に、美咲は首を傾げる。
「まあ、確かに小さい頃から、そっち系の本が多かったですけど。エリート教育って程じゃないですね」
「子供が読めるそっち系の本?」
「『日本沈没』書いた小松左京ってSF作家は知ってますよね? その人が書いた『おちていた宇宙船』っていう児童向けの本とか、宇宙やなんかの学習マンガとか、海外SFの児童向け全集とか? ちなみに私のために買った物じゃなく、兄のお下がりでした」
「……なるほど。美咲先輩がSF好きになったのはそのあたりの教育の影響ですね。十分エリート教育だと思います」
茜の言葉に、美咲は苦笑いを浮かべた。
「まあ、それはさておき」
「置いちゃうんですか?」
「うん。さておき、小川さん、ナツにも同じパーツを設定してくださいよ」
「まあ、それは良いんだけどさ、ナツもアキも、色は白黒の虎縞ってのは変えられないからね?」
ナツもアキも、そのボディには虎のゴーレムから採取したマイクロマシンが使われており、それらは成形色として、自然と白黒の虎縞になる。
その縞模様により、太陽電池のように魔素を生み出したりもするのだが、その縞模様を変えることはまだ出来ていなかった。
表面に色を塗ることは可能だが、それをすると太陽電池のような機能が損なわれるし、蜘蛛型に変形する際には塗料が剥がれ落ちてしまう。
「美咲先輩、色塗れないなら服着せましょうよ。上半身だけそれっぽい鎧というか、装甲? を付けてみるとか?」
「上半身限定にするのなら、塗装でも良いんだけどね」
「いえ、半透明な素材を使うんです。ええと、あれです、警察が使うような透明な盾。あれに半透明の塗料を塗れば」
「ああ、ライオットシールドだね。ポリカーボネートだから、美咲ちゃんの持ってるそれと同じ材質になるのかな」
「これですか?」
美咲はアニメのDVDボックスを持ち上げてみせる。
「うん。CDやDVDもポリカーボネートだね。種類は色々あるみたいだから、同じものなのかまでは分らないけど……ええと、熱可塑性プラスチックだから、加熱して変形させるのは案外簡単かもしれないな。金型作って加熱して、板を被せて変形させるってやり方だね」
タブレットで販売店を見付けた小川は、適当な情報を入力して料金計算を始める。
「ええと……大きさの上限は……なるほど。駐車場なんかでも使うから結構大きいのが頼めるんだ……厚みは5ミリ。ちょっと薄いかな?」
「……おじさんはいったい何と戦うつもりですか?」
「いや、備えあればって言うじゃないか?」
「でも小川さん、熱可塑性、でしたっけ? 熱に弱いんじゃ、地竜や飛竜が相手だとかえって邪魔になるんじゃないでしょうか。火を浴びて柔らかくなったのが冷えて固まったら、動きが阻害されると思いますけど」
「……なるほど。魔物相手って考えると、ちょっと厳しいか……ああ、そもそも普通に買える物とライオットシールドは作り方もちょっと違うみたいだ」
「ただの透明な板じゃないんですか?」
茜が小川の後ろからタブレットを覗き込む。
「うん。ほら、警察が使ってるライオットシールドにはある程度の防弾性能があって、それは、ポリカーボネートを繊維状にして層を作って実現してるんだって。で、普通に市販されてる物には防弾性能がないって書いてある。まあ見た目はどちらも透明な盾だけど」
「なるほど。悪い人が防弾性能のある盾とか簡単に作れたら大変ですから、当然なのかもですけど、そうなると、私たちも買えないんでしょーか?」
「まあ、手はあると思うけど……考えてみたら魔物相手で使えない装備じゃ意味ないし、ナツとアキを飾るだけって考えると、そこまで手間を掛けなくても良いかな……ポリカーボネートでそれっぽい外殻を作って、塗装は……ええとポリカーボネートに塗装できる塗料で、半透明で出来ればスプレー式のは……っと……あれ?」
小川がタブレットを見て固まっていた。
その後ろで茜が楽しそうに笑っている。
「茜ちゃん、どうしたの?」
「えっとですね……ラジコンカーやミニ四駆っておもちゃのボディに、ポリカーボネートが使われてまして、プラモデル屋さんから、色んな塗料が出てるんです」
「おもちゃなんだ……まあ、私たちがやろうとしてるのも、ある意味、大きなプラモデルの作成みたいなものだしね」
「……いやまさか、プラモデルのタミ○が、ポリカーボネート用の塗料を出してるとは思わなくてちょっと驚いたよ。僕もプラモデルくらいは作ったことあるけど、最初からそういう色の付いたプラスチックで部品が作られてて、色塗らずに結構それっぽくなったりするから、僕も金銀以外の塗料って使ったことがないんだよね……でもうん、あったよ。ポリカ用、半透明グリーンのスプレー缶」
小川は嬉しそうに、それらを通販のカートに詰め込んでいく。
「必要量とか大丈夫ですか?」
「足りなくなったら買い足すさ」
「で、塗装はポリカーボネートの外側ですか? 内側ですか?」
「ああ、うん。ええと考えてなかったな……内側だとアキの体に擦れるし、ダメージ受けたときに色が剥がれた方が分りやすいから、塗装は外側かな」
「おじさん、ピンクと赤の塗料って何に使うんですか?」
後ろから小川の操作を見ていた茜が疑問を口にする。
「ああ、うん。あのロボットは、普通はオリーブ色なんだけど、たまに色違いのが出てくるんだ。アキとナツを同じ色にしても面白くないから、僕はアキを赤くしようと思ってね」
「へぇ……あれ?」
小川の言葉に納得しかけた茜が、何かを思い出すように天井を見上げる。
「お姉ちゃんが、赤いのは3倍速いとか言ってましたけど関係あります?」
「んー、まあ、あるね。古いシリーズで、敵の隊長機が角の生えた赤いのかな……ほらこれ」
タブレットで検索した画像を茜に見せると、茜は吹き出した。
「なんですかそれ。変な飾りが付いた赤い服着て、角突きのヘルメット被った人が、ピンクのロボットに乗ってますよ?」
「僕も直接は知らないけど、放送当時、この赤い人が人気あったらしいよ。とにかく、ほら、このピンクっぽいロボット。どうせ色を弄るなら、この色にしたいんだよ」
こうして、人知れず、ナツとアキの見た目の変更というプロジェクトが始まることになったのだった。
「小川さん、その透明の盾、私も何種類か買っておきたいんですけど」
「はい、それじゃ僕は終わったからタブレットどうぞ」
「ありがとうございます」
小川からタブレットを受け取り、美咲は市販されているライオットシールドの中から、比較的作りがしっかりした物を何種類か選び、ついでのように表示されたサバイバルゲーム用の防刃ボディアーマーとチタン製のサバイバルナイフなどもカートに放り込み、購入ボタンを押すのだった。
一応、前後編になる予定です。
お知らせが幾つか。
■コミカライズ版の更新間近。
次回更新予定は2020/02/24です。
なお現在公開中の2話のラスト、私も笑いました。
まだご覧になってない方は是非。
本作知ってた方が笑えると思います。
■書籍版3巻発売
新紀元社さんのHPでは2020年02月25日発売予定になっています。
Amazonさんでは2020年2月22日発売予定です。
今回は書き下ろし番外編を2本追加しています。
書き下ろし番外編なのに、新キャラ登場。本編終わってますが、もしも続巻させて貰えるようなら本編にも出したいな、と思ってます。
■新作書いています。
錬金術師のなかなかスローライフにならない日々
レベルアップ制ではないVRMMO風異世界で錬金術師(他にも幾つか職業についている)のエルフが色々頑張るお話です。
VRMMO風異世界ものではありますが、フ女子生活よりもSFっぽいかも知れませぬ。。。
さすがにこれは人を選ぶかな、と思いながら書いていますw




