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番外編・ミストの守護者

前にちらっと話題に上がったことがある吟遊詩人のお話です。

 ミストの町を白狼の群れが襲ったという話をヒースが聞いたのは、王都の酒場で吟遊詩人として歌っていた時のことだった。

 辺境部での魔物溢れはそれほど珍しいことではないが、50頭を超える白狼の群れが町を囲んだというのは珍しい。

 そして、その危機を、ふたりの少女が救ったのだというのであれば、それはどれほど珍しいことか。


(これは、歌にできるかも知れない)


 既存の歌に飽いていたヒースは、王都の酒場で仕入れられるだけの情報を仕入れると、ミストの町で詳しい情報を集めることにした。



 ミストの町の酒場で白狼退治の話を振ると、記憶に新しい話題だからか、大勢の傭兵たちが詳しい話を聞かせてくれた。

 炎槍使いのエルフと青いズボンの魔素使いのふたりが、普通なら魔法が届かないような距離から魔法を撃って白狼を倒しまくったのだと傭兵たちは口々に言う。


「魔法が届かない距離から魔法を当てるっていうのは、炎槍使いのエルフと、青いズボンの魔素使いのどちらの技能なんでしょうか?」

「フェルの話だと、青いズボンの魔素使いがいなきゃできなかったって話だが、まあふたりが揃ってこそだ」


 ヒースは傭兵たちに酒を奢りながら、情報を集めていった。

 対魔物部隊の力を借りずに白狼50頭の群れを撃退したというのは快挙である。

 しかし、噂の二人組がやったことがどうにも地味だった。

 塀の上を回って魔法を放って白狼を一匹ずつ倒していくというのでは、歌にするにしても、盛り上がりに欠ける。


 もう少し何かないものかと考えながら、ヒースは新鮮な空気を求めて酒場から表に出た。


「私たちのことを聞いて回ってるのはあなた?」


 酒場の入り口の横にエルフが立っていた。

 金髪に緑の目、ローブを身にまとっている。

 話に聞いた炎槍使いのエルフの特徴に、ヒースは酔いが覚めるのを感じた。


「あ、ああ。白狼退治の功績を歌にしたいと思ってるんだ。傭兵なら有名になるのは悪いことじゃないだろ?」

「それくらいなら構わないけど、あんまりおかしなことはしないでよね」

「それは約束する。そうだ、酒を奢るから、白狼退治の話を聞かせてもらえないか?」

「……いいけど、今まで聞いた以上の話は出てこないと思うよ?」


 こうしてヒースは、白狼の群れを退けたふたりの少女の片割れから話を聞くことに成功した。そして、ヒースは、歌にするには盛り上がりに欠けると判断した。

 たいした被害も出ていないし、少女がふたり絡んでいるのにロマンスの欠片もない。

 遠くまで届く魔法という驚きこそあるが、戦いは魔法で白狼を退治しただけでピンチも何もない。

 ヒースは白狼戦を歌にするのは諦め、フェルの口から語られる美咲という少女の話に耳を傾けるのだった。




 王都に戻ったヒースが次に美咲の名を聞いたのは、地竜騒動のときだった。

 地竜退治のためにミストの砦に籠もった傭兵の中に、美咲とフェルの名があった。

 対魔物部隊も参戦したことから、王都の酒場でもそれなりに情報が手に入ってくるので、ヒースはミストの町に行かずに情報を集めて回った。

 聞き取りの結果、地竜の大半は対魔物部隊によって倒されており、美咲たちの出番はあまりなかったということが判明するが、ヒースの中で美咲の名前は大きくなっていった。




 ミストの町の方にある湖の畔にあった大昔のゴーレムが暴走し駆除されたという話を聞いたとき、ヒースがまず気にしたのは、美咲とフェルが関わっていないかということだった。

 調べてみると、駆除に関わったのは美咲と茜という少女で、最近開発された新魔法を使ってゴーレムを破壊したという。


「これは歌になりそうですね」


 ヒースはミストの町に赴くと、酒場で傭兵たちに話を聞いて回った。

 虎のゴーレムが魔法協会の調査で暴走したということ。

 暴走したゴーレムはまっすぐにミストの町を目指していたということ。

 ゴーレムはとても大きなもので、ミストの町に到達したらどんな被害が出たか分からなかったという話。

 そして、住民には避難指示が出されたという。

 それなりに盛り上がりもあるし、脳裏に浮かぶ絵面も悪くない。


 ふたりの女神様の色の少女。

 岩をも溶かす蒼炎と、鉄をも凍らせる氷魔法。

 町に迫る異形のゴーレムに立ち向かうふたりの少女。

 ゴーレムを倒して凱旋する少女たちと、それを迎える町の人々。


「これにロマンスが加わればいいのだけど」


 年頃のふたりの少女が関わっているのだから、何かないかとヒースが聞いて回ったが、そういう情報は出てこなかった。


「ミサキちゃんは成人してるらしいけど、そういう話は聞かないな」

「まあ、見た目が子供だしな。アカネちゃんに至っては成人もしてない子供だし」

「顔立ちは整ってるから美人になると思うけど、もう少しこう、凹凸がだな」

「フェルやアンナと一緒にいることが多いから、まだ女の子同士で遊んでるのがいいのかもな」

「それで、そのミサキとアカネって娘は酒場には来ないんでしょうか?」

「あー、ゴーレム倒した後の祝勝会には顔出してたけど、あのふたりは酒は飲まないからなぁ」

「そうですか、あ、これどうぞ」


 ヒースは新しい酒を傭兵たちに配ると、酒場を後にした。



 王都に戻ったヒースは、白狼、ゴーレムのことを歌にした。

 歌の主役は、どちらにも関わっている美咲である。

 残念なことに、ミストの守護者という曲名のその歌はあまり受けはよくなかったが、後に、初めて美咲と茜を世に知らしめた歌として、長く歌い継がれることになる。

 

大雨の話。

広瀬が来たばかりの頃の話。

小川の農業改革の話。

なんかを考えています。


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