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EP04-08 偽り 

予約投稿するの忘れてましたm(__)m

【原初のエリア】

 

 黒色に近い雲が空を覆っている中、改札を出ると駅前はすでにかなりの賑わいになっていた。

 車道を閉鎖して歩行者の歩けるようになっている道路の左右には屋台が並び道沿いに並ぶ店は前来た時よりもにぎわっている。

 

 「さすがは展覧会ね。それに例年よりも外国人が多いような……」

 

 言って自分も日本人ではないことに気が付くが、それはそうとして、今年はやけに西洋系の人が多いような気がした。

 別に西欧出現する【マキナ】を壊滅させたわけじゃないから、日本に来るだけでも命がけなはず。

 なのに多いのはどうしてだろう。

 

 疑問に思う中、人込みをかき分けながらゆっくりと進む。

 まずは龍兵の丘に向かう。

 そこでレグと接触して捜索する幽霊の情報を得る。

 けど、正直気まずい。

 あの日、輸送艦での一件以来彼とは会っていない。

 ――いや、それを言えば有栖や風香の顔も見ていない。

 正確には連絡すら取っていないというべきね。

 ほかの人とは一応たまに連絡はするぐらいはしていた。

 けど、忙しいのかそういう時間もだんだん少なくなっていった。

 その結果、ここ数日で誰とも話していない。

 

 「それなのに、なんでよりによってレグなの……」


 ため息をつき、スマートフォンを取り出して時刻を確認する。

 10:45

 集合時間まであと15分といったところ。

 さすがにこのままだと間に合わなさそうね。

 そう思い、少し歩くペースを上げて向かった。

 人混みをかき分けて進んでいくと、だんだん道路の中央に見覚えのあるものが置いてあるのが目に入る。

 迷彩柄の装甲を持つ、キャタピラ走行の電磁収束砲搭載戦車型兵器、【パラディン】だ。

 【ネプチューン】戦では作戦地に向かっている最中に壊滅したと聞いたけど、通常なら【マルカリア】を代表する兵器の一つ。

 結構民間エリアの中で人気のある兵器だ。

 

 近づいてみると、ロープが張り巡らされていて、そこから先に民間人が来れないようになっている。

 【パラディン】とロープの間には、戦闘用のスーツを着ている上から黒いジャケットを羽織った兵士が、牽制用のアサルトライフルを持って【パラディン】を囲むように立っていた。 

 

 「ロープから先には来ないで下さい!」

 

 どこからかそんな声が聞こえた。

 きっと誰かが身を乗り出しているのを注意されたんでしょうね。

 見慣れたものを改めて観察する必要はないと思い、その場を離れて奥へと進む。

 

 次にあったのは灰色一色の【インパクト】だった。

 その周りを同じように兵士とロープが囲んでいる。

 元々パイロットの好みの色に合わせた塗装が施される【インパクト】は未使用機は灰色一色に塗りなおされる。

 よく見るとところどころ細かい傷があるし、これも誰かの物だったのだろう。

 もうこの世にいない、あるいは兵士をやめた人の。


 「……さっさと行こ」


 考えれば考えるほど空しくなってくるので、できるだけ早くその場所を離れた。


 次の兵器が特にあるわけでもなく、無事に丘の入り口に着いた。

 ただ、ここで一つ問題が発生した。


 「手荷物検査を行っております!順番に並んで、危険物を持っていないかの確認をさせて下さい!」

 入り口にある検問所にいる男性の声が聞こえる。

 「……まずいわね」

 

 集合場所はあの先。

 なのにその手前には検問所があって、私は思いっきり危険物となる大型ナイフと銃をコートの下に隠し持っている。

 

 警備の数も多く、塀をこっそり超えていくなんてことはできそうにない。

 かといってこのまま正面から行っても、いまは一般人の私が武装している時点で確実に拘束される。

 後で何をされるかわかったものじゃない。

 とはいえ、こうなってはどうしようもない。


 どうしたものかしら……。


 そう思ってよお目から検問所を眺めていると、唐突に背後から話しかけられた。


 「アインさん?」

 「ん?」


 聞き覚えのある声に振り替えると、そこには兵器の警備をしていた兵士たちと同じ格好をした新塚さんがいた。

 

 「久しぶりね。調子はどう?」

 「例年以上に大忙しだよ。どこも人数不足」

 「そう。――今は巡回中?」

 「うん。向こうにチームメイト待たせてる」

 

 そう言って振り返る新塚さんの目線の先を見ると、やはり同じ格好をした、まだ少し幼い感じの子たちが3人いた。

 

 「ひょっとして新入生?」

 「うん。秋からの戦闘の打撃でだいぶ減っちゃったから。【ブバルディア】の敷地内にある中等部から戦闘成績がいい子を移してもらったの。最近は襲撃もないから、私たちがいろいろ教えてるんだよ」

 

 新塚さんは頭部デバイスを操作して、通信を彼らに入れて呼び寄せた。

 少し駆け足で、でも人込みのせいでうまく進めない姿は少しかわいらしい。

 やっとのことでたどり着いた彼らは新塚さんに敬礼をすると、新塚さんは私を彼らに紹介した。


 「この人はアインリット・ラーチさん。元【AWP】所属の戦闘員よ。でも、すっごく強いから」

 「やめてよ。対して強くないわよ、私」

 「そんなことないよ? じゃなきゃ一人で一部隊壊滅させないでしょ?」

 「あれは……」


 たぶん、【ネプチューン】戦で、私が記憶にないときに行った戦闘のことを言っているんだと思う。

 けどあれは……。


 「あれはそう、たまたまよ。私の実力じゃない」

 「でも……」


 それでも私の力だと言いたいのか、不満そうな顔で見つめてくる。

 でも、その時間を壊すように、新入生のうちの一人、少し髪の長くて、眼付きの鋭い男の子が言った。


 「あんたが、あのアインリット・ラーチか」

 

 にらんできて、持っている銃口を突き付けてくる。

 その光景を、ほかの二人が驚き、すぐに銃を下ろさせようと説得し始める。


 「なにやってんだ。銃を下ろせよ」

 「そうだよ、あの人のせいじゃないんだから」


 頬に小さな傷跡があり短髪で目の大きな少年と、カチューシャで前髪の大部分を上げた茶色い短髪で、落ち着いた、けど冷酷さを感じてしまいそうになる眼付きの少女が言う。

 なんとなく事態は把握できた。

 そのうえで、私は動こうとする新塚さんを止めて少年を見据える。


 「これはどういうこと?」

 「とぼけるな。一人で壊滅させた? それは同じ部隊の奴らが消耗させたおかげだろう! あんたのいた部隊で、あんただけ生き残ったのもそういうことじゃないのか?」

 「つまり、私が同じ部隊の仲間を盾にしたとでも言いたいの?」

 

 奥から怒りが込み上げてくる感覚をこらえながら、冷淡な声で言う。

 

 「そうだよ。あんたのせいで多くの仲間が死んだ! 俺の姉ちゃんだって……あんたに殺されたようなものだ!」

 

 突き付けてくる銃口の向こうにあるうるんだ目が見える。

 怒りと悲しみが混じったような目だ。

 

 ……彼の言葉をまとめると間接的であれ私が彼の姉を殺した。

 その敵の一人である私を撃ちとろうとしているということにでもなるんだろう。

 弁明の難しい問題で、私は黙ったまま彼を見据える。

 銃口をつかみ、私は自分から銃口を胸の間に当てた。


 「――どういうつもりだ」

 「姉が死んだことで私を恨んでいるなら、覚悟はできているんでしょう?」

 「なんのだよ」

 「人を殺す覚悟」

 「――っ!」

 「そこまで。銃を下ろして」

 

 彼に向けて新塚さんが威圧的な声でいう。

 さすがに看過できなくなったんだ。

 周りにはどうなるかを遠巻きに見る一般人が大勢いる。

 ここでもし、【AWP】の兵士が一般人を殺害したら、組織全体の信頼性がなくなる。

 それはさすがにまずいと思って、止めにかかったのあろう。

 少なくとも私は、この状況をそう判断した。


 「しかし!」

 「これ以上言うことを聞けないのであれば中等部に戻ってもらうよ。それに少し誤解してる」

 「なにをです?」

 「あの部隊の生き残りはアインさんだけじゃない。あなたのお姉さんのことは残念だけど、少なくとも10名以上は保護されたわ」

 「な! ならなんで……! どうしてそいつは除名されたんだ! 非道な手で倒し、一人生き残ったんじゃないのか!」 

 「――いい加減にして。誰よ、その誤情報を流したのは」


 私は銃口を放し、その子に詰め寄って問い詰める。

 

 「【AWP】の戦闘スーツ着た女だよ。白くて長い髪のな。そいつがあんたのことを教えてくれた。あんたのやったことをな!」

 「――白くて……長い?」

 「ああそうだ」

 

 一瞬だけある人が頭をよぎった。

 戦闘スーツはどうであれ、白くて長い髪なんてそうそういるはずがない。


 だけど、それ以上その子が暴走することを良しとしないように、私たちの間に新塚さんが割り込んできた。

 新塚さんが銃身をつかむと同時に私は放し、彼女は銃身に全体重をかけて銃口を下に向けた。


 「邪魔を――」

 「これ以上やるのであれば本当に中等部に落とすよ」

 「――。ちっ、わかりましたよ」

 「……」

 

 新塚さんは銃から降り、振り向いて私を見る。

 

 「アインさん、ごめんなさい。私がもっとしっかりしていれば」

 「……気にしないで。情報の正誤はどうであれ、私のことであることに間違いはないから」

 「この任務が終わったら必ず謝りに行くから……。絶対に誤りに行くから! だから――」

 

 だんだん早口になる新塚さんの肩を軽くたたいて、彼女越しにその先にいる三人を見る。


 「……一応聞くけど、本棟にある作戦記録保管室であの時の記録は見た?」

 

 すると三人はお互いの目を見合ってから一斉にゆっくろと首を横に振る。


 「なら必ず見なさい。それでも私があんなことしたと思うなら、その時は新塚さんに言いなさい。――新塚さん、もしあの子たちが言ってきたら必ず私に連絡して。あとは私がやるから」

 「でも……」

 「お願い」

 「……うん」


 ずいぶん悩んだと思う。

 新塚さんは少し間を開けてから、ゆっくりとうなづいてそう言った。

 

 これ以上私とあの子を一緒にいさせるのはよくないと思った新塚さんは任務に戻るといって、3人を連れて歩いていく。

 

 その背中を見ながら、コートの下からスマートフォンを取り出し、ナズ・レグルニアに向けて連絡を入れる。

 だが、彼は出なかった。

 代わりに――


 『どうなさいましたか?』


 出たのはロナだった。


 「少し彼と話をしたいの」

 『申し訳ありません。マスターはいま取り込み中でして……よろしければ私がお答えしますがどうでしょう』

 「――じゃあお願い。ニアさんは今どこに?」

 『ニア様ですか?今は不在です。何か御用でも?』

 「……聞きたいんだけど、あの人が私の誤情報を流したって可能性はある?」

 『――どういうことでしょうか』

 「いまさっき変なことを聞いたのよ。私が味方を盾にしたとか、仲間を利用して敵部隊を壊滅させたとか」

 『――それを……、ニア様が言ったと?』

 「そうじゃないわ。白くて髪の長い女の人ってが言ったらしいの。思い浮かんだのがあの人だったってだけ」

 『――わかりました。情報があり次第連絡します』

 「ありがとう。――あ、それともう一ついい?」

 『なんでしょうか』

 「レグにどうやって中に入ればいいのよって聞いてくれない?」

 『わかりました。できる限り早く返答をお伝えします』

 「お願い」

 

 

 通話を終え、完全に4人が見えなくなると必然的に周りにいた人たちが去っていき、すぐに元の検問所前の賑わいに戻った。

 その中で私はさっきの話に出てきた女性のことを考える。

 ――一体だれがあんな情報を……。


 ニアからの連絡が来るまでの間、私はそこでずっとそのことを考えた。

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