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EP03-09 The Hunting strategy②


 「RONA。特攻したアインリット・ラーチとそうさせた先行者の状況はどうなっている」


 サルファガムの操作に意識を集中させながら聞く。

 

 『アインリット・ラーチさんはいまだ戦闘中。戦闘方法かかなり荒いですが、これまでの記録を超える勢いで【ヒューマン】、【アニマル】を撃破しています。次に先行者ですが、待機ポイントについたとの連絡がありました。すぐに移動を開始し、5分後には支援に入っている可能性が高いです』

 「そうか。――もうひとつ、α班と合流予定の部隊の様子はどうだ?」

 『――α班は先行部隊を拠点ポイントに撤退させ、籠城を開始しました。順を追って撤退すると思われます。合流予定のチームですが……』

 

 なんだ? 

 なぜ言わない。


 「何かあったのか?」

 『――合流予定だったチームですが……全滅しました』

 「――なに?原因は?」

 『奇襲にあったと思われます。詳細は作戦後に詳しく報告しますが、破壊された【パラディン】には意図的に破壊されたと思われる箇所がありました』

 「気にはなるが、その件については後にしよう。――先行者とニア、それとオオミヤに連絡。作戦は俺たちだけで完遂すると言っておいてくれ」

 『了解しました。まもなく作戦開始ポイントに到着します』

 「ああ、上昇するぞ。制御を頼む」

 『はい』


 サルファガムの全身に搭載されたブースターの出力が上がり、より一層まばゆい輝きの線を描きながら、弧を描くように上昇していく。

 600m、640m、710m……。

 機体はやがて約高度1キロ地点に到達したところで速度を落とし、やがて宙にとどまるように出力を制御する。

 


 モニター越しに見える一帯の光景を一望し、俺は深呼吸をして余計なことに思考を回すことをやめる。

 必要なことだけを考える。

 余計なイメージを排除し、もう一度戦場となる【エリアG南部】の立体イメージを構成。

 先行者とアインリット・ラーチ、【ネプチューン】。

 そして俺たちの乗るサルファガムの場所にポイントにピンを打つ。

 

 「ナズ・レグルニア。現時刻を持って殲滅行動を開始する」


 俺は機体を上下反転させ、ブースターの出力を上げて降下を開始した。

 引力とブースターによって落下速度が上がる。

 衝突地点は【ネプチューン】の背面装甲。

 その中央にある、突出した周辺探査機関だ。

 そこを破壊できれば、たとえ本体を破壊できなくとも潜水されることはない。


 「両腕の出力調整。平常値から60%に」

 『了解。通常値の46%から60%に引き上げます』

 

 バイザーに出力変更の表示が入り、右手一本でタッチパネルを操作して、それを前面左側モニターに移す。

 操縦菅を握り、より意識を集中させて、待機状態にしておいた武器を起動させる。

 

 問題なく起動したことを確認し、斧を両手で持って振りかざす。

 【ネプチューン】が今更俺たちに気がついて、側面の砲門を向けるがもう遅い。

 俺は機体が【ネプチューン】の背ひれのような、突出した機関に接触した瞬間、機体の両腕を降り下ろす。

 


 斧から発される赤い光の線が弧を描き、突出した機関に吸い込まれる。

 斧はその機関に接触し、装甲を強引に裂きながら振り切られた。

 振り切ったと同時に、サルファガムは両足で曲線を描く外装に着地。

 わずかな揺れと、緩和された衝撃を感じながら、機体頭部を上げて切断面を見る。

 断面は赤く照っており、かなりの高温であることが分かる。 

 ――どうやら、この武器は正常に稼働してくれたらしい。

 

 「まさか、現状最も機体に出したくない色を武器として使う日が来るとはな」


 だがその威力はなかなかのものだ。

 これは今後に開発に応用できるかもな。

 ――一瞬そんなことを考えてしまったが、さっさと破壊しなければならないので攻撃を再開する。

 ブースターを駆使し、【ネプチューン】の背面艦橋を移動。

 武器が届く範囲にある砲門を破壊していく。

 ――アインリット・ラーチのほうに攻撃されると困るからな。

 まぁ、たとえ撃たれてもあいつが守るか。

 


 破壊された砲門が爆ぜ、黒煙を上げる。

 装甲の破片が散乱し、一部が海へと沈んでいく。

 サルファガムは戦斧を振るい、【ネプチューン】の背面外装を駆け、次々と砲門を破壊していく。

 【ヒューマン】や【アニマル】とは違い、【ネプチューン】には全身を覆う装甲がある。

 しかしその装甲は戦斧の前では意味をなさず、振り下ろされた箇所は例外なく切断されていった。



 ――◇――

 「――この程度か」


 確認できるほぼすべての背面にある砲門を破壊した。

 そう判断して、俺は意識を一度戻してシートにもたれかかった。

 集中しすぎたのか頭痛がする。

 これでもまだ負荷は大きいか。 

 なにが問題なんだ……。


 『マスター、【ネプチューン】の前面に反応を確認。出てきます』

 「やっとか。全く、遅すぎるな」


 頬を流れる汗をぬぐい取り、再び操縦菅を握って意識を集中させる。

 振り向いて反応のあった前面を見ると、ちょうど【ネプチューン】の甲板に着地した、2体の【ジャイアント】がいた。

 ――ん?

 そいつらをよく見ると、部分的にパーツが違う。

 肩の砲門はなく、代わりになたのような武骨な武器を持っている。

 それに全体的にあのごつい装甲がなく、機構を守るための最低限の装甲しかない。

 少し工夫してきたか。

 だが、見たところほかのところは全く変わっていない。

 ――そのあたりを考慮すると、案外大したことはないかもな。

 

 「俺への対策だろうが、その程度でどうにかなる相手と判断したのなら、ずいぶんと舐められたものだな」


 しかし、近接兵装を出してきたということは前回の戦闘から学習したということか。

 これは思った以上に早く超えられるかもな。


 『マスター』

 「問題ない。早急に排除する」

 『いえ、追加反応です。アインイット・ラーチさんの近くに、新たに3体の【ジャイアント】が出現しました』

 「――。どこから来た?」

 『どうやら海上を飛行して移動したと思われます」

 「形状は?目の前の奴とな時か?」

 『すみません。【ネプチューン】から上がる黒煙でそこまでは確認できません』

 「わかった。先行者に任せたと言ってくれ。最悪出てきても構わんとな」

 『了解。前方の敵、来ます』


 二人のいる方角から目の前のやつに視線を戻す。

 そいつらは鉈らしき武器を振りかざし、破壊した背ひれのような機関を挟んで、左右に分かれて接近してきた。

 確かに移動速度は上がってるらしいな。

 だが……たったそれだけだ。


 背面ブースターを中心に駆動させ、装甲を蹴って右の奴に近寄る。

 そして、問答無用で斧を振り下ろそうとする。

 だが、奴は俺の予想を超えてきた。

 

 斧を振り下ろそうとした瞬間、そいつは後ろに飛んで回避した。

 斧は装甲を裂いて内部に入り込む。

 すぐに引き抜こうとするが、何かに引っかかったようで簡単には抜けそうにない。

 

 その隙を狙って接近され、手にもつ鉈を振りかざしてきた。

 ――さすがにこれはまずいか。

 

 即座に斧を手放し【ネプチューン】の装甲を蹴る。

 そして全身のブースターを逆噴射させて後退する。


 『マスター、後方から接近してきます。それと上陸した機体の確認ができました。以前のモデルと同一のものです!こちらを向いています!』

 「っ!狙いはこっちか!」


 前後で挟まれ左は壊した背ひれ、右は海。

 その上さらに遠距離から撃たれると来た。

 

 「全身出力変更。とりあえず80%まで引き上げろ」

 『それでは機体への負荷が危険域に達します』

 「機体を失うよりはマシだ!とにかく今はこの状況の打破が最優先事項だ!」

 『りょ、了解!』


 

 機体出力が上がり、緑がかった発光部が戦斧の赤に近い、赤みがかった橙色に変化する。

 その光は黒煙に覆われても消えることはなく、はっきりとその場に残り続けている。

 装甲を蹴りブースターを使用。

 赤い軌跡を残しながら前方の軽量型の【ジャイアント】に接近。

 鉈をふるう隙を与えず、サルファガムは右手で首をつかみあげた。

 そのまま左足を軸に腰をひねり、破壊した探査機関の装甲にたたきつけた。

 轟音が周囲に鳴り響き、軽量型の【ジャイアント】がめり込む。

 金属片と思しきものが飛び散り、金属同士がこすれて高音を上げる。

 そのはずみに何かが破壊されたのか、【ネプチューン】の割れた装甲の隙間から黒煙が噴出し始め、2機を包み込む。

 だが、サルファガムは気にすることはなく、右手を閉じるように力を入れ、軽装型の【ジャイアント】の首を握りつぶし始める。

 装甲が割れ、折れていく。

 ひしゃげるような音が鳴り、指がめり込んでいく。

 軽量型は抵抗しようと、腕を上げようとするが鉈はサルファガムに踏まれていて持ち上げることはできない状態。

 だが、軽量型は抵抗の意思を見せようと左手を上げようとする。

 しかしそれも無駄だった。

 抵抗される前にサルファガムは軽量型の頭部を左手で抑え、右手引いて抉り取ったのだ。

 コードが伸び、ちぎれ、様々な破片、残骸が飛び散る。

 軽量型の四ツ眼から光が消え、腕をだらしなく降ろし、完全に停止した。



 「まずは一体。次だ!」



 右手の中にあった首の残骸を捨て、甲板を蹴り、脚部ブースターを使って前面に移動する。

 速度を落とし、向きを反転させてもう一体と対峙する。

 だがその瞬間、この機体に向けて北東から円柱状の物体が飛んできたという反応があった。

 そしてそれは俺にあたる……のではなく、機体の足元に着弾した。



 物体は甲板を貫き、内部で爆発を起こす。

 甲板と、その周囲の装甲ごと爆ぜ、連鎖爆発を起こして黒煙が上がる。

 その一連のことが起こる寸前サルファガムは前に飛んでいた。

 赤い軌跡を描き、【ネプチューン】の装甲を蹴り、突き刺さった戦斧を超える。

 対して軽量型も装甲を蹴り、鉈を構えて接近する。

 両者の距離が腕の届く範囲に来たと同時に、軽量型の鉈が振るわれた。

 サルファガムは右肩のブースターを使って左に飛び、そのままさらに前進して背後に回り込む。

 右腕をうなじに伸ばすも、軽量型は甲板を蹴って距離をとる。

 円柱状の砲弾が再び飛来し、サルファガムの接近を阻止する。

 徐々に足場と視界が不安定になり、破壊されていく【ネプチューン】

 

 火災の光が両者を照らし、黒煙が両者の輪郭をあいまいにする。 

 それでもサルファガムは、軽量型との距離を詰めた。

 しかし、またしても飛来した。

 今度は仕留めようと、頭部の予測通過点を狙って。

 


 「無駄だ!」


 だが、ナズ・レグルニアはその弾道予測を瞬時にこなし、機体を操作した。

 左肩のブースターを最大出力で噴射させ、あえて海に飛び出す。

 続けて全身のブースターを駆使して【ネプチューン】の側面に沿って飛行。

 前面までもう少し、というポイントで上昇し、再び上部装甲に着地した。

 間髪入れることなく、軽量型の背後をとって距離を詰める。

 しかし、軽量型は振り向き際に鉈を一閃。

 とっさにガードしたサルファガムの右腕を切り付けたが、サルファガムのタックルで後方に吹き飛ばされた。

 近接型は装甲の破片と鉈を飛ばしながら2,3回バウンドして転がっていく。

 足がもげ、装甲が取れ、腕が取れてバラバラになっていく。

 やがて軽量型は突き出た【ネプチューン】の残骸に衝突。

 それ以上、近接型が動くことはなかった。


――◇――


 「はぁ、……はぁ、……はぁ、……はぁ」


 操縦菅から手を放す。

 モニター越しに転がっていった軽装の【ジャイアント】を見ながら、俺はシートにもたれかかる。

 頭が響くような痛さに襲われる。

 さっきとは比べ物にならない。

 額を、ほおを汗が流れる。

 さすがに……無理をしすぎたか……。


 すぐにこの場を離れなければ、また上陸したやつの砲弾が飛んでくる。

 分かってはいるが、痛みのせいで体がうまく動かない。

 視界がかすむ。

 

 それでも、RONAの声ははっきりと聞こえた。


 『マスター、マスター!』

 「ああ、聞こえてる。聞こえているぞ……」


 だから、そんな悲しそうな声は出すな。


 『よかった……。マスターのバイタルに急激な負荷がかかっていましたので……』

 「わるい……な。出力を正常値に戻してくれ。……それと、さっきから飛んでこないが、あいつが何とかしたのか?」

 『現在交戦中です。しかし、アインリット・ラーチさんには【アルマテル】の存在がばれたと思われます』

 「――そうか。悪いが少しの間操縦を任せる。少し休みたい。なに、一度陸に戻ってくれるだけでいい」

 『了解。――お眠りになる前に一つ、お聞きしてもよろしいですか?』

 「なんだ?」

 『なぜ、上陸した【ジャイアント】は砲撃をしたのですか?』

 「――ああ、そのことか。それなら簡単だ」


 そう、簡単だ。

 あいつらだからできること……。


 「――敵は、【ネプチューン】を完全に放棄したんだ。おそらく、俺たちが背面の探査機関を破壊した時点でな」

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