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EP01-02 出撃のサイン ver2.0

 私達が住む【エリア001・ナゴヤ】は日本の中部地方にある旧名古屋に当たる場所。

 その中でも大きく分けて2つの顔を持っていて、私の家があるのは【民間都市ナゴヤ】|(別名:民間エリア)。

 一言で言って戦闘とはあまり縁のない仮初の平和が保たれてるエリアね。

 そしてもう一つが私たちの通う【AWP兵士育成学校】など、【マキナ】に対抗するために設置された機関や兵器の保管・開発・使い手の育成などをするための【迎撃都市エリア】|(別名:対抗エリア)の二つがあり、前者は比較的内陸に、後者は比較的海岸沿いに置かれている。


 なぜそういう配置になっているかって?

 それは簡単なことよ。

 マキナは例外なく海から攻めてくるから、現れるのは決まって太平洋側の海。

 そしてその出現位置はここ11年で一度も変わったことはない。

 要は攻めてくるルートは限られていて、その方向だけを警戒していれば基本的に大丈夫。

 だから【迎撃都市ナゴヤ】は太平洋沿岸、そのうちの旧愛知県の下部全域に及ぶ広大な陸地に展開されている。


 そんな日本を【マキナ】から守るための最終防衛ラインにして最前線にあるこっちのナゴヤ。 

 そこの中にあるこの【AWP兵士育成学校】の正門から近代的デザインの本館の中に入り、白を基調色とした壁の廊下と隣接する校舎との渡り廊下を通って北館に移動。

 そこから階段を上って3階に移動して、私達は各々のクラスに入っていった。



 白い自動ドアを潜って教室に入ると、私の存在に気が付いた一人の男子生徒が歩いて来た。


 彼の名前は大宮 レグ。年齢は17歳。

 身長は177㎝とやや高め。

 髪は茶色でやや長め、目の虹彩は黒に近い茶色の日本人で、なぜかいつも工具一式を腰のポーチに入れてる男子生徒。

 そんなレグは笑いながら軽く手をあげるとおもむろに口を開き。


 「おはようラーチさん。調子はどうだい?」と軽い口調で言ってきた。

 「昨日試したけど少し射程が短いと思うけど威力に関しては申し分ないわ。これがショットガンタイプならまだしも、ハンドガンタイプであの射程の短さじゃ対抗できないね。少なくともいまの1.5倍は欲しいと思うわ。それとこれは返すわ」

 

 私はそういって腰のホルスターから一丁の少し変わったデザインのハンドガンを取り出すとそれをレグに差し出した。

 「それはラーチさんが持ってなよ。お守り代わりに。それと俺が聞いたのはラーチさん自身の体調ね」

 別に欲しいわけでもないのだが、私は「別にいいけど」と言つつその銃を再びホルスターに納めると。


 「じゃあ一応持っておくわ。それと前も言ったけど、やっぱあなたあっちの機関で作ってた方がいいんじゃない?」


 実際、彼の兵器開発技術は実戦特化の【AWP】に置いておくのはもったいないレベルに達している。

 この銃も彼の作品で、射程をのぞくスペックは現時点で量産されているレールガンと比べても劣らない性能を持ってる。


 「いや、だからこっちがいいんだって」

 「なんで?」

 「ここの育成プログラムに含まれてる超遠距離射撃の訓練を受けたいんだよ。ほら、俺ってあんまり運動神経よくないからそういう方が向いてるし」

 「でも運動神経が悪いならなおさらあっちに行った方がいいんじゃないの?」

 「ま、それを言われるとヒジョーに頭が痛い。ぐうの音も出ないってやつだね」

 「そう。まぁ銃の開発と訓練は頑張って。応援してる」

 「おう!絶対驚くものを作って、ラーチさんに見せてやるぜ!」


 そういって彼は私の横を通って教室から出ていった。

 いつからだったかな。彼が私に関わってくるようになったのは……。

 ――それと彼は授業をさぼって何をしようとしてるのかしら。

 そろそろ始まるんだけど?



 一人その場に残された私はひとまず荷物を置くために自席に移動すると、前の席に座っている黒髪の女子生徒が話しかけてきた。

 彼女は御剣みつるぎ 風香ふうか

 年齢は17歳。身長はたしか160㎝ぐらい。

 後ろで一つにまとめられた長い黒髪の持ち主で、ややつり目で虹彩は黒。

 胸はそこまで大きくはないのが悩みらしいけど、それとは別に柔軟な身体と抜群の運動神経を持っていて、将来は【ブバルディア】のエースになるだろうと期待されている。

 そんな彼女とはこの学校の入学式の時に仲良くなり現在に至る。

 それと普段はあまりしゃべらないらしいけど、私の前だとよくしゃべるらしい。 

 

 「おはよう」

 「おはよう。風香。――何か用でも?」

 「いや、まだレグの銃のテスターやってるんだなって思ったから」と彼女は眉一つ動かさないで言った。

 「彼の武器は欠点さえ補えればかなり革新的なものだから。ハンドガンの弾を実弾から光子に変えるなんて誰もやったことないし」

 「それは内部構造の問題でしょ。光子弾を打ち出す機構なんて大型の砲台でしか取り付けれないし。そもそも【マキナ】を光子弾で倒せるレベルまで開発が進んでないでしょ……。――ああ、だからか」

 「そういうこと。そういえば風香。来たんだって?」

 風香は「ん」と言ってうなづいた。

 「3班から。もう正式契約もしたから次来た時が初陣だよ」

 「おめでとう。頑張って」

 「ありがと。でもアインも次は出るんでしょ?何班から来たの?」

 「仮で2班から。だから風香と一緒に出ると思う」

 

 ――とここでは割と日常的な会話をしてホームルームの始まりのチャイムを待っていると、それよりも早く、多くの人にとって鳴って欲しくないアラームが校内に鳴り響着始めた。

 少し高めのけたたましい電子音が連続して鳴り、教室の前に設置されている大きなモニターに【マキナ出現】と赤字で表示された。

 続いて、モニターに内蔵されているスピーカーから落ち着いた女性の声が出始めた。


 『マキナが出現しました。エリアGにタイプは【ヒューマン】及び【アニマル】。予想襲来数は200。1班~4班の契約者はマニュアル通りに出撃をしてください。また、仮契約者にも今回は出撃を要請します。繰り返します。――』


 「噂をすればってやつね」

 「同感。頑張ろう」

 風香はそう言って立ち上がり、それに続いて私も立ち上がると、私たちは行くべき場所に向かって走り出した。


 廊下に出ると放送を聞いた生徒が緊張した顔で走っていた。

 彼らは先ほどの放送にも、私達の会話にも出てきた【契約者】又は【仮契約者】。

 これから襲来した【マキナ】を破壊または撃退しに最前線へ向かう仲間だ。

 そしてこの二つはもう一つの機関にある組織と契約をした生徒が、特定の【マキナ】の個体に出現に応じて迎撃に向かう。

 もちろんこっちの【ナゴヤ】にある【ブバルディア】の正規兵も出撃するけど根本的に数が足りない。

 よって実戦経験を積むためという名目で私達も前線に借り出されるの。


 そういうわけで私たちはこれからその準備をしてエリアG、旧蒲郡がまごおりに向かうことになる。

 そのために私たちは、移動手段である列車のある駅に向かっているところだ。



 ――◇――

 ラーチさんたちが出撃をした少し後。

 俺、大宮レグは人気のない廊下の片隅で一人、周りからは少し変わってると言われてるデバイスを耳に当ててある人と通話をしていた。

 そのデバイスは通常のスマートフォンの下部に無色透明のクリスタルのプレートをつけているもので、クリスタルの大きさは大体スマートフォンの半分程度の大きさだ。そしてそれには、直線で描かれた模様が掘られている。


 「ようリーダー。元気にしてたか?」

 『ああ。それで用件は』と、ややノイズが混じった声で俺たちのリーダーは言った。

 「出現モデルについてだよ。わかってるだろ?――それよりもこのノイズ、もしかしていま上にいるのか?」 

 『あれの最終調整をしていた。それよりも今回あいつらが来るぞ』

 「わぉ。なら俺もそっちに行った方がいい感じか?」 

 『いや、それは不要だ。あいつを降ろす』

 「二度目のわお。でもパイロットはどうするんだ?確かまだ見つかってないんだろ?」

 『問題ない。見つかるまでは俺が乗る』

 「了解。じゃあ俺はメテオストライクでぶっ壊れないことを祈りながら寝てるわ」

 『相変わらずのんきな奴だな』

 「仕事はしてる。リストも定期的に送ってるだろ?」

 『そうだったな。近いうちにもう一つも下す。その時は頼むぞ』

 「了解。じゃあまたな」


 そういって俺はデバイスを耳から離して通話終了ボタンを押す。

 それからそれをポケットにしまって教室にのんびりと戻った。


 「さーてと、眠たい講義でも聞きますか」



――◇――

 【AWP】本部から伸びる移送用モノレールに乗り、私は車両に設けられた着替えスペースで専用の密着型の戦闘スーツに着替えた。

 そのスーツは黒を基調色としていて、肩、腕、腰まわり、脛にそれぞれメタリックイエローで塗装されたプロテクター兼収納スペースが取り付けられている。

 続いて頭には青色のバイザーのついたイヤープロテクターを装着し、自分の情報と動機、動作確認をした。

 そして最後に隣の車両に移動して自分の使うアサルトライフル型のレールガンを持ち、弾とエネルギーの入っているカートリッジを腰のプロテクターの内側の専用ホルダーに8つ入れた。

 そして今はさらにその次の車両の待機室でエリアGに到着するのをじっと待っていた。


 これが初の実戦。さっきは軽い感じで話していたけど一つのミスでナゴヤに帰ってこれなくなる。

 絶対に生き残って帰還してみせる。

 


 「やっほー。アイン。とうとう初陣だね」と、プロテクターがメタリックブルーに塗装された戦闘スーツを着た彩芽がやってきた。


 「でも私は仮契約だから次同じ武器でここに来るかはわからないわ。彩芽は色的に3班?」

 「うん。いままでかなり訓練してきたからね。【インパクト】は乗りこなせてると思う」

 「そう。でも無理は……」

 「わかってるって。じゃあ私、この先で装着するから」

 

 そういって彩芽は自分の使う兵器のある先の車両に移っていった。

 

 それから数分が経ち、私を含めたほとんどの生徒が準備を完了して緊張しながら待機していると、突如低い男性の声が通信機から聞こえ始めた。


 『あー。今戦闘に関する全権を任された大森だ。まずは今迎撃に参加してくれたことに感謝する。そして警告する。これは遊びではないと、授業でも模擬戦でもないと。捕まったら恐らくもうこの地に足をつけることはできない。その先のことはわからない。だから、君たちは絶対に我々が守る。そして君たちは最優先は自身の安全の確保、次にマキナの迎撃だ。決して順番を間違えるな。いいな。――まもなくエリアG最寄りの駅に到着する。準備はできているな?ではハッチが開き次第各々出撃してくれ。繰り返す。――』


 「いよいよ……か」

 

 そうつぶやいて右手に持つアサルトライフル型のレールガンを見た。

 これまでの訓練尽くしの11年。

 その成果を発揮するときがとうとう来た。

 家族を失った私を保護してくれた人たち、そしてその後ろにいる人々のために私は武器を取る。

 17歳という年齢なんて関係ない。

 女だからって関係ない。

 私は戦う。たとえ私だけが前線に放りだされたとしても。武器が、戦う意思が私の手にある限り戦い続ける。


 

 そう、昔決めたことを思い出しながら私はホームに到着したモノレールから降り、同じ2班の仮契約者と契約者、そして正規兵とともにエリアGの戦場へと向かった。


 

 

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