人間を愛したのなんて
「なんで、俺を受け入れたんだ?」
海の藻屑と化した人間は少なくない。赤子だとしても同じだ。だが、彼だけは助けられた。人間はそれを問うた。女神は少し考えたのち答える。
「ただの気まぐれ……かもしれない」
「かもしれない?」
人間は聞き返すが、女神は誤魔化すように笑うだけだった。
「私の神話の本を見て、貴方と同じ名前の赤ちゃんを助ける話があったの……だから、助けてみようかな、って」
女神は人間の方を見ずに言った。
「でも、途中からは違ったわ。私のために人魚狩りを辞めてくれたのだもの」
「助けてもらった借りを返しただけだ」
人間はそう言ったものの、違うことを考えているようだった。そもそも、借りを返しただけならば、気を病むこともなかっただろう。人魚狩りを辞めたのは、女神を愛していたからに他ならない。
女神もそれが分かっているらしく、微笑んで言った。
「私、人間を愛したのなんて、初めて。貴方が私の近くにいるのなら、人魚に好かれなくちゃね」
そう言うと女神は、人魚の方へ泳いで行った。
残された人間は、一瞬途方に暮れたような顔をしたが、すぐに笑って、ゆっくりと泳いで女神を追いかけた。
親に特別に許可を貰って(企画でどうしても完成させなきゃいけない小説があるから!)パソコンを使わせてもらって、どうにか完成しました。
絵にキャラクターがいないから、『これを登場させなきゃ』って考えなくてある意味楽でした。ですが、キャラクターの容姿を一から考えるので……まあ普通のことですが。
二回目の企画参加ですが、今回も楽しんで書かせていただきました!
ありがとうございました!