7 ミレイ
まるで大名行列だなと思った。
異国(というか異世界)の地、見知らぬ学校の中だから当然迷うだろうと透子は思っていたが、案内図がしっかりしていたので教室まではすぐ到着することができた。
だが、とにかく校内にいる生徒の制服がどれも派手で、なおかつカラフルで、しかも赤色があったり青色がったり金ピカになっていたりと、固定概念というのはこうも簡単に覆されるのだなと妙な感慨にひたった彼女であった。
へー。
教室の中は一般的な高校ではなく、どちらかというと大学、アメリカンスクールのような、扇状に配置されている長テーブル、そして緩い坂になっている通路、そのいちばん下にボードと教壇があるスタイルだった。
これが魔法騎士学園ねえ。
なんともまあ、リアクションしづらいというか。同じっちゃ同じだが、日本と違うといえばかなり違う。
「ハロー! お一人さん?」
頬づえをついてホームルームを待っていた透子だったが、隣から場違いなくらい明るい声が聞こえてきた。当然、そっちに振り返る。
「よっすよっすー」
なんかすごいまつげの長い少女が、そこに座っていた。
そして、美少女しかいない国だから当然といえば当然なのだが、やはり容姿は整っていた。
……ていうかその髪、何。
透子は少女に返答するよりも、彼女の髪型が気になってしまった。ポニーテールだったのだが、イナズマのようにギザギザだったのだ。どうやってセットしたらこうなるのだろう、と本気で思えるほどだった。
「何ー? ミレイちゃんが、そんなに気になっちゃってるわけー?
ミレイと名乗った少女は、両手で銃を撃つポーズをすると、片目をつぶって「ばぁん」と言ってそれを撃つまねをしてきたのであった。
「……」
なんで私の周りはこうにぎやかな人が集まるのだろうか、と透子は思った。自分が静かな性格でN極として、うるさ……にぎやかな人がS極のように集まってくるのだろうか。
「気になってはないよ」
透子は頬づえをやめ、自分の膝の上に両手をおいた。
「かなしー! ミレイちゃん泣いちゃう!」
ミレイは顔を両手で覆い、えんえんと泣きまねを始めた。
「はいはい、気になってる気になってる」
「やっぱ? だっよねー、そう思ったんだよねー!」
ミレイはコンマ5秒もなく両手をどけると、ものすごい目を見開いて元気な顔を見せ、そしてにひーと白い歯を見せて笑った。
なんだろう、顔を柔らかくする体操でもしているのだろうか。
「ミレイも、新入生でしょ?」
「そーでーっす」
「ミレイはキャバクラにでも勤めてるの?」
「キャバクラが何かはわからないけどディスられてることだけはわかる!」
「ふうん」
「あなたのなま……違った、ユーの名前は?」
ミレイがウィンクしながら片手を広げる。
「なぜ言い直した。トウコよ、トウコ」
「トウコちゃん、インターワールドの人間でしょ?」
唐突に彼女はそう言った。