2 邂逅
「美少女王国へようこそー!」
確かにそう聞こえた気がした。
果たして一生で『美少女王国』なる頭が悪そうな単語を聞くことなんてそうそうあるのかなんて思ったのは一瞬で、透子はまずその景色に圧倒された。
空だった。
見渡すかぎりの空が視界に広がっていた。
しかし、コンマ数秒後、両足が地についていることに気がつく。足元を見ると、ついさっきまで学校の裏庭にいたまま、皮のローファーに学校指定の制服、とくに変わったところは見当たらなかった。
自分の姿は、だ。
景色は、変わったところだらけだった。
いやむしろ、変わっていないところを見つけるほうが大変だったとさえいえた。
ぱっと見渡す限りでは、ここはどこかの屋上のようだが、どうもヘリポートとかそういった雰囲気ではない。そう、いってしまえば、何か『儀式』をするような雰囲気があった。
ギリシャ神殿とかにありそうな天井だし、柱もたくさんあって。極めつけは、足元にある大きな魔方陣だ。
そして。
目の前には、すさまじくピンク色の髪をした女の子。
なんかこう、アニメアニメした、いってしまえばスマホアプリのゲームとかの衣装みたいな、オシャレだけどちょっと中世っぽい服を着ていて。
彼女の後ろを、扇状に、少し囲むようにローブの女性たちが待機していた。
……。
これはいったいなんだろう。
「はい、もう一度。美少女王国へようこそー!」
目の前のピンクの女の子が拍手をすると、やんややんやとそれにのっかってローブの女たちも拍手をしはじめた。
「あの、ちょっといい?」
透子は真顔のまま手をあげた。
「はい? どうされましたか、特待生さま」
「特待生……? そのまえに、あなた、誰ですか?」
「おお! それ聞いちゃいますか! なかなか見どころありますよ、見鏡透子さん!」
「……なんか本名知られてるし」
「私はサリナ。ラグジュール騎士団施設特交業務人です」
「何それ、早口言葉?」
「わーお、透子さん、しんらつぅ」
サリナがこっちを見て指をさし、すぐさまオーバーリアクションで肩をすくめた。
「はい?」
透子は無表情のまま言った。
「端的に申しますと、私たちは透子さんのお力を借りたいのです」
……えーと。
まったく意味がわからなかった。
それから5分ほど、サリナの話は続いた。
彼女の長々とした講釈をまとめると、以下のようになる。
ここは魔法が発達した世界で皆美少女ばかりであり、美しければ美しいほど戦闘力があり、現在、いざこざが起きており、とくに能力が高いとされる異世界人を召喚した。
だから、私たちラグジュール騎士団の手伝いをしてほしい。
まあ、わかりやすくいえばそんな感じの話だった。
それらが一段落ついて。
「どうでしょう、透子さん、引き受けていだけません?」
サリナが、すっごい笑顔でちょこんと首をかしげて言った。
対する透子は真顔のまま、こう返した。
ほぼ即答で。
「うさんくさすぎて、やだ」
そりゃそうだろうって話だよ――と彼女は思った。