勇者から賢者へ
あれ? なんで意識が? 俺は確か死んだんじゃ……。
意識がなくなる直前、確か車に轢かれて……あっ、やっぱり死んだのか。後光が差してるしあれは神様だな。
「おぉ、勇者様!」
後光かと思ったら禿げた頭が光っているだけだかい!
そして、王冠がさらにその光を強調させていて、見た目はまさしく河童!
「えーっと、これは勇者召喚ですか?」
「さすが勇者様! 飲み込みが早い!」
テンプレかい!
「勇者様、魔王を倒して頂きたいのですが……」
「えっ、でも、俺チートな能力もらってませんけど?」
「いえ、勇者召喚の際に自動的に身体能力、魔力、その他もろもろ備わっています!」
「マジっすか!?」
さすがテンプレ!
異世界召喚で無双って奴ですか!
「じゃあ魔王を倒してくればいいのですね?」
「倒す? まぁ勝負に勝って来てほしいのですが……」
「わかりました。仕方ないですね」
「無理言ってすいません。お礼に魔王に勝てれば我が娘を嫁に……ほれ、ジュリア」
「はい……」
そして、出てきたのはど ビッグマダムと言えるような人物だった。
まさしく某妖怪物で言うドンヨ◯ーヌ!
空気まで重いぜ。
「魔王に勝ったらどうぞこの子をーー」
「結構です」
俺は早々に城を後にした。
ーーーーー
「さて、魔王の城はどっちだろう?」
俺は城を振り返る事なく、城から逃げるように歩き道を探す。
『魔王城この先徒歩10分』
観光地かい!!
俺は考えるのが馬鹿馬鹿しくなってとりあえずそのまま看板の指示通りに歩いた。
ーーーーー
「ようこそ魔王城へ! 本日はお一人様ですか?」
俺を出迎えたのは角の生えたいかにも魔族っぽい奴だったけど営業スマイルで迎えてくれた。
「はい、そうですけど」
「かしこまりました。ただいまのお時間はフリータイムはございませんがよろしいでか?」
ここはカラオケかい!!
「えっ、いや、大丈夫ですけど……」
「かしこまりました。では魔王様の元へご案内致します。……ご新規様一名御来店でーーす!」
「「「いらっしゃいませ!!」」」
……俺はいろいろつっこむのをやめ、黙って魔族について歩いた。
ーーーーー
「ふははは! よく来たな勇者! 我輩と勝負だ! かかってこい」
俺が通された謁見の間にいる魔王は見た目とても強そうだった。
くそ、これは武器くらい買ってくれば良かったか。ふざけた世界だし魔法だけでいけるかと思ったけど……。
「……来ないのか? では我輩から行かせてもらうぞ!」
くそ! ここは躱すか耐えて反撃しかない!!
「8+6は?」
……はっ?
「ははは! 分からないだろう。なんせ両手では数えられないからな!」
「……14」
「何!? まさか……じゃあ次だ! 3✖️4は? ふははは! これはさすがに分からないだろう!」
「……12」
「何を!? で、では40➗5は!?」
「……8」
「ま、魔王様気を確かに!?」
俺はこの戦いの後、賢い者と称され賢者と呼ばれるようになった。
……チート能力意味ないじゃーーん!!




