破産一家
あたしは破産者です。あたしの両親とあたしの姉も破産者です。
つまり破産一家です。
今の日本には破産者なんてその辺にウジャウジャといます。
ただそんなこと口にしないだけなんです。
あたしが裁判所に破産決定の審判を受けにいった日にも、周りは破産者でゴッタ返していました。
口には出さないだけなんです。
所詮、他人は他人。自分を知ってもらう必要なんてないんです。
ただ、あたしのことをよく知っている人はいます。あたしのことなら何でも知っている人がいます。
あたしには家族がいますから。
あたしを産んだ両親です。あたしの家族です。
それでもあたしの気持ちはあたしにしかわかりません。
いくら伝えたくても伝えられない気持ちが、人間にはあるんです。
所詮、人は目に見えるものしか信じません。
少なくてもあたしは、そういう人間です。
『信じてるよ』
見えない信用を人に伝えるために使うセリフです。
あたしは『信じている』人に『信じている』とは言いません。
目に見えるものは『信じてる』ではなく『信じる』ことしかできないものです。
目の前にお金があります。
あたしはそれを『信じる』
そう、心で『信じる』のではなくて、目で『信じる』ことができます。
現実は誰も裏切りません。
それ以上の期待はかけません。
あたしの家族は家族だと信じています。
戸籍を見ましたから。だから家族という現実を信じました。それは二度とあたしを裏切らない現実です。
人に『信じているよ』と言われると、切ない気持ちに襲われます。
期待をかけるその言葉があたしには重すぎるんです。
勝手に信じればいい。
『裏切らないで』そう言われほうが、どれだけ楽だろう。