探し物
報告いらないです。
男
女
男「今日も雪が降るなんて……おかげで雪まみれだ。駅に着いたら止むと思ったんだがな」
女「はぁ……傘忘れた」
男「え?」
女「あ…」
男「どうも…」
女「どうも…貴方も傘を忘れたんですか?」
男「ええ。雪まみれで帰るのかと憂鬱になってまして。いやぁ…降りますな」
女「ふふふ、雪まみれですか。確かに!」
男「あはは。貴方もこの道ですか?」
女「あぁ、いいえ。実はすぐ曲がるんですよ」
男「そうですか、雪まみれの道連れにと思ったんですが。残念です」
女「相合傘ではなかったんですね、少し考えちゃった」
男「ま、まさか!!そんな…
貴方みたいなお嬢さんと肩を組んで歩いたら誤解されます!」
女「誤解?まさか、ご結婚を?」
男「あ…、えっと。まだです」
女「あら、まだってことは恋人がいらっしゃるの?」
男「い、いじわるですね!独り身です!」
女「少し意地悪してみました。可愛いですね」
男「貴方こそ、恋人に迎えに来てもらったらいいじゃないですか!」
女「私、独り身なんです」
男「え!?綺麗なのに…」
女「綺麗だと彼女にしたくなります?」
男「あー、場合によりますね。確かに」
女「でしょう?でも、よく言われます。恋人いるんでしょって」
男「私もです。そのお年でしたらお子さんいらっしゃるんですかって。
それ以前なんですけどね」
女「なんだか、私たち似てますね!」
男「確かに、似ていますね」
女「そうだ、雪が止むまでお話しましょう。どうです?近くのカフェで」
男「そうですね、ここは寒いですからね」
女「では、行きましょう」
●カフェ●
男「綺麗ですね。内装が凄くタイプだ」
女「良かった!」
男「ホットコーヒーひとつ、ええっと…」
女「私も同じのをひとつお願いします。
私が誘いましたからお会計任せてくださっても構いませんよ?」
男「いいや、そういうわけには…」
女「そんな、私たちお付き合いしているわけじゃなんですから」
男「そうですが、男としてやはりお会計持ちます。それに道連れです」
女「まぁ…!ふふふ」
男「あ、ありがとう」
女「ありがとうございます。何から話しましょうか」
男「定番のお仕事から聞いても?」
女「はい。私は駅の二つ先で事務をしています。貴方は?」
男「私は営業です。駅の四つ先です。お近いのですね」
女「冬の間だけ駅を使ってるんです。急に雪で通れない道に入ったら大変なので」
男「確かにそうですね、除雪の入っていない道もありますからね」
女「貴方は遠いですね」
男「自宅から離れているとリフレッシュしてから家に帰れるので。
まぁ、たまたま受かった会社が遠かったんですけどね」
女「リフレッシュしてからか。ストレス溜まりますよね」
男「そうですね、事務なんか特に大変でしょう?」
女「理不尽な電話とか来ると、結構頭が痛くなる時ありますね。
相手が激高してかけてくるときもありますから」
男「私も営業先で怒鳴られるのでわかります」
女「お互い対人の時もありますから大変ですよね。
お住まいは近くですか?」
男「いいえ、実は駅から徒歩三十分です」
女「まぁ、本当に似てますね。私もです。遠いと大変ですよね」
男「寝坊したときは致命的ですね」
女「寝坊なさるんですか?」
男「たまに…独り身の宿命ですね。起こしてくれる人がいない」
女「宿命だなんて、面白い方!」
男「そうですか?あはは」
女「でも、そうですね。起こしてくれる人が居ると朝も快適ですよね」
男「起こしてくれる彼女探したいですね」
女「私も欲しいです」
男「独り身でしたもんね。元々住んでいらっしゃったんですか?」
女「いえ、地方から。昔は恋人もいたんですけど、ここに来る前に別れてしまって」
男「そうでしたか、私は地元なんで元カノにバッタリ会うこともあるんです」
女「気まずいですか?」
男「いいえ。結婚したのよと報告してくる子もいて虚しくはなります」
女「確かにしちゃいそう!」
男「でも、幸せそうで嬉しいですね」
女「幸せそうなのが嬉しいですよね」
男「私も幸せを探したい」
女「幸せを探すのって難しいですよね。何が幸せなのか漠然としていてわからないというか」
男「幸せが何か、か。確かに言われないと考えないですね」
女「仕事してる時が幸せというわけではないから考えるんですけど」
男「仕事している時は苦痛でしかないですね」
女「苦痛ですか?」
男「はい。恋人と笑っている方が遥かに幸せです」
女「私は仕事中にとてもいい話が聞ける時もあるので苦痛ではないですが
二人きりの空間って不思議と笑顔になりますよね」
男「幸せ…か」
女「やっぱり、デートは凝りますか?」
男「計画立てちゃいます!」
女「いいなぁ、そういうデート一回もしたことない」
男「やっぱり無計画だと彼女も不安になりますよね?」
女「不安しかないですね!」
男「無計画もいいって人はいるんだろうけど、デートって恋人じゃないと出来ないから」
女「そうそう!!」
男「あぁ、つくづく貴方と話していると気が合う」
女「そうですね。私も思ってました。
お互い探しているものが見つかればいいですね」
男「幸せ探しですか」
女「はい」
男「見つかるかな…」
女「最初は何でも不安ですよ。私も地元離れるとき不安しかなくて泣いてました」
男「……そうですよね。一歩踏み出さないと」
女「私も、今度は貴方に恋人を紹介します」
男「お互い頑張りましょうか!」
女「はい!」
男「あ、雪が止みましたね」
女「本当だ。そろそろ出ましょうか。コーヒー美味しかったなぁ」
男「紹介するとき、ここにしましょう」
女「そうですね」
●駅●
男「じゃあ、またどこかで」
女「見つけましょうね、幸せ」
男「そうですね!では」
女「さようなら」
男「……あの!」
女「…はい。何でしょう?」
男「…また、会ってください。これ、名刺」
女「……はい…!」
男「探し物、見つかりましたね」
女「そうですね。見つかっちゃいました」
男「寒いので、手を」
女「でも、こっちじゃ」
男「送ります」
女「…はい…!」