1.プロット
○まずはテーマを決めること。
以前はプロットの事を理解しておらず、適当な事を書いていました。テーマなど無くても構わないだとか、読者に面白いと思ってもらうという希望そのものをテーマとしても良いと考えていました。プロットを作成する意味と言いますか、きちんと構成を考えて作る文章には必ずテーマが必要になる、その理屈を理解していなかったのです。
テーマが必要なのは、そのテーマを中心に据えて構成を練るからなのです。テーマが定まらない文章は論旨がフラフラして要領を得ません。何が言いたいのか解からないだとか、書いた内容が伝わらないだとか、そういった問題はここにあります。「構成がなっていない、」と言われた事はありませんか。設計図に従って書かれていない作品は、野放図に作られた都市のように多くの問題点を抱えてしまうのです。
資料を集めるにもテーマ関連ですし、ネタを思いつくにもテーマが中心に来ます。ストーリーがまるで形になっていない段階でも、テーマの方は決まっていなくてはいけないんです。計画活動の基盤となるからです。
そして、プロットの段階で作品はほぼ完成間際まで詰めておかねばなりません。後は文章にするだけ、という段階はすなわち漫画でいうところのペン入れ直前の原稿です。下絵の線をなぞるだけの状態です。
洞窟の描写があるなら、その資料として地図だけでなく形状や材質に状態までメモがあるという段取りになっていないといけません。理屈の穴を開けられないよう、構造は、内部の空気はどうなっているか、臭気や湿気はどうなのか、生物の存在は、と細かな設定が全て決められた状態になっているはずなのです。そこまで詰めて、初めて完成形のプロットなのです。プロットと言われて本当に理解しているアマチュアの物書き自体が少ないかも知れません。
○メモを取って、情報を集める。
テーマが決まったら、なんでもいいから思いついたものをノートなどに記していきます。これは順不同で構いませんし、箇条書きなど統一する必要もありません。落書きメモのノートということです。セリフでも設定でもちょっとしたイベントでも、何でもかんでも書き取っておきます。
これを整理していくのには、カード状になったメモ帳が便利です。後でトランプの七並べ状態で展開させるので、バラバラに出来るカードがいいのです。ノートに記された落書きメモ一つ一つをこれに書き写します。今の段階では舞台装置なども漠然としているので、この状態で大丈夫。
次にカードを三種類に分けてください。「絶対に書きたい事柄」「そうでもない事柄」「削ってもいい事柄」です。絶対のカードは必ず記述するモノになるので、せいぜい10枚に絞ってくださいね。絞ることで無駄をなくし、横道へ逸れることを避けるので、テーマに沿った一本道が出来上がるはずです。
ついでに「絶対に書きたい事柄」を分類分けしてストーリーの骨子を作っておいてください。一番書きたい、どうしても入れたい事柄を中心にストーリーが出来てくると、不足や接続のカードが足りないという状態になると思います。巧く思い付けば新たにカードにして付け足し、思いつかねば保留のカードを作って後に回します。要点は、保留のカードを出来るだけ作らないよう、手持ちのカードで済ませるようにすること。保留が山になるんじゃ、カードの意味がないですからね。綺麗に書きつける必要もありません、どうせ何度も書き直ししますから。
作業の合間にもアイデアはどんどん沸いてくるはずです。どんどんカードにメモしてストックしましょう。ストーリーの骨子も、場面展開ごとでカード化してそこに「絶対書くカード」を対応させるようにしてもいいんです。
カード自身もどんどん書き直したり、アイデアが浮かべばそれに従って作り直し、あるいは入れ替えて結構です。手間を惜しまないことです。アイデアも惜しまず要らないものは捨ててください。また別の機会に使えばいいことです。論文でも小説でもこの作業が八割を占め、実際に原稿に向かうのは仕上げの清書の時だけです。
○拡散と集中
カードが山になってきたら、ストーリーの方もほぼ固まってくると思います。今度は、要素ごとに思考展開をします。例えば洞窟に入るイベントを作ったとします。このイベントカードに対応するカードの作成という作業になるわけです。全体地図が必要になりますね。洞窟の外観のイラストを簡単に描いてみてもいい。そこにある罠や住んでいる生物の設定、洞窟そのものの設定も必要になります。先に書いた、臭いや空気やその他、出来るだけ細かく設定しておいた方がいいです。
作ったカードのすべてを文章中で利用することなどありません。しかし、頭の中できちんと把握していなければ、矛盾が生じます。その為に詳細設定が必要となるのです。
文章を書く時には、一つの事柄から疑問点や関連事項などへと拡散していく思考と、結末へ向けて全体から中心へと絞っていく思考との二つが必要になります。プロットを作らないということは、ストーリーの構築をしながらこの拡散と集中も同時に行おうとする行為なのです。自身がどれだけ難しいことをしようとしているか、私も最近まで解かっていませんでした。複雑な話を作る時だけに限らず、短編作品だろうがエッセイだろうが、まずは計画書を作ろうと思うようにしてください。