09話 デモコ
デモコに案内させてから数時間が過ぎた。
「なー、まだ着かないのかよ」
「もうすぐよ」
「もー、何回目のもうすぐだよ。全然町も村も見えてこないぞ」
「勇者様せっかちに何度も聞いてくるからでしょ。黙って付いてきなさい」
「嘘だったらタダじゃ置かないからな」
「はいはい」
デモコは超音波が使えるみたいでバンパイア特有のエコロケーションで魔物と遭遇しないようルートを選んでいる。勿論これは俺が最初に言っておいたのだ。魔物に遭遇したときデモコにまで気を配っていられないからそれもどうにかしないと案内役には使えない。と言ったらエコロケーションの事を話してきたのだ。
デモコはエコロケーションにより周囲20メートルまでの物なら察知できるらしい。便利な能力だ。
デモコと歩くことさらに数時間。
「そういえばデモコは太陽の光とか大丈夫なのか?」
「平気よ。ただあまり好きじゃないけどね。バンパイアにとって太陽の光は刺激が強いのよ。だから大抵のバンパイアは暗闇に生息しているのよ」
「へー、それにしてもデモコはかなり人間の言葉が喋れるんだな」
「バンパイアは人間の血を飲み干すとその相手の知識を自分の物にできるのよ」
「つまりお喋りな奴の血を飲み干したのか」
「うるさいわね。もう人間なんて懲り懲りよ」
どうだか……。
魔物のことは信用できないがデモコの言うことは信用できそうだ。嘘をつくほど知能がなさそうだし。試しに、四つある石を二人で均等に分けたら一人いくつでしょう? と質問したら……、デモコの答え=いらない
俺もだよ。
「……やばいわ」
「どうした?」
デモコが急に立ち止まる。その表情は重く身震いさせていた。
「案内はここまでよ! 両腕を返して!」
デモコが必死の形相で俺に頼んできた。
「何言ってんだ。まだ案内は終わってないだろ」
俺はフルンを構えデモコに剣先を向ける。
「いいから腕を返して!!」
「ふざけんな。やっぱり俺を案内する気なんてなかったんだな!」
「ちが……!!」
デモコの体が急に倒れた。
「何だ!?」
俺はフルンを構えたまま倒れたデモコを見る。デモコの背中には矢が刺さっていた。
「ぐっ……奴らが来る……」
デモコはそう言って起き上がろうとするが腕がないために立ち上がれない。
その姿が両足をなくした時の俺とかぶって見えた。
ドドドドドド!
地鳴りとともに複数の足音が聞こえてくる。数秒後馬に乗った騎士達が俺たちの周囲を囲んでいた。その数はおよそ十人。
「くたばれ魔物共!」
騎士の一人が何の説明もなしに俺に向かって槍を突き出した。