01話 通学路
失敗した……。俺は空を見上げてそう思った。
今日この日この朝この町この通学路そして一枚のお札。
それが俺の人生を大きく変えることになったのだから。
17歳、高校生の俺は当然学校に通わなければならない。
しかしそのためには学校まで歩いていかなければならない。俺は自転車を持っていないから徒歩だ。徒歩……。
「あー、めんどい」
俺はため息を吐く。
そもそも学校に着くまでの道が田舎すぎて退屈なんだよな…。
周りには田んぼばかりで同じ道をずっと歩かされている気分になる。
なんかいい事でもないか……。
おっ…。ポケットの中でグシャッ。
これは…。
千円! せんえーんだ!
「マジかよ! ズボンに入れ忘れてたのか。超ラッキーじゃん」
まー、元から俺の金ですけど。
俺は千円札を手に掴み興奮した。
その時だった。突然強風が俺のお札を盗んでいった。
「おいっ!」
だが犯人は金が目的ではなかったようだ。
「どんな嫌がらせだよ」
俺のお札様が田んぼの中に……。
「マジありえねーよ!」
ありえないのは制服のズボンの裾をめくり靴と靴下を脱いで素足で田んぼに入り、足を泥だらけにしてお札の救助に行ったことではない。
足が田んぼにはまってーさあ大変、な状況に陥ったことだ。
ちくしょー! びくともしねーよ! 田んぼの中で仁王立ちとかマジ恥ずかしいんだけど。目の前の道路では通学生も歩いているし。
周りの通行人に視線を当てられるのがいたいぜ。もう若干涙目になってるか
らな。
是非放っておいて下さい。刺激を与えないようケータイによる撮影もご遠慮下さい。ってか。
てかこれ、もう学校行くの無理じゃね? いやマジで。
学校を休む大義名分…というか不慮の事故が起きたことだし。手を使えばだ出も可能だろう。もう制服が汚れる心配は必要ないと思うのだし…。
だが俺のプライドがそれを許さなかった。
一瞬でも田んぼに手をつき生まれたての子鹿のような体制で足を救出するのは俺のプライドが誇りが許さないのだ。
……まあ、大げさに言いすぎたか。
だがしかし! 俺はギリギリまで別の脱出方法を考える。
誰か助けてくれないかな…でも俺友達もいないし。無理だよね。
俺はまぶたを閉じて空のまぶしさを感じる。
「あー、切ない」
今俺の半分は切なさで出来ている。
……そして俺は異世界へ行った。
いや、話の途中を省いたとかそういうことはなく。本当に俺は…。
異世界に行った。