地底の生活
「地上と地底、この二つの世界が形成されたのは、はるか古の時代。核の冬という大事件が起きて以来です」
先生が俺たち生徒に話しかける。
歴史の授業は、退屈極まりない。
だが、必修だから受けなければならない。
といっても、中身については、小学校レベルだ。
はるか古の時代、地上に住んでいた人類は、核の冬という大事件を受け、地底に逃げ込んだ。
地上は全ての生命が死滅しており、住むことはできない。
この地底こそが、全ての生命の安住の地である。
他に言うことが無いのかと言いたくなるような、繰り返しの文言。
何かが起きて、俺たちをこの退屈な授業から救ってくれと言いたくなるような、そんな現実。
ただ、核の冬については何も触れることはない。
なにせ、先生たちにすら分からない出来事だからだ。
その出来事があったと言われているのは、今からざっと1万年前。
その当時の人は、全員死んでいる。
だから、核がなんなのかすら分からないのだ。
当時の文献は、厳重に封印されていて、みることすらできない。
ごく一部の超がつくような上級者しか、閲覧申請はできないし、申請したとしても、見れるかは別問題だ。
それが、俺たちの当たり前の生活。
それが、この世界の当たり前。
だから、俺たちは、退屈ながらも当たり前のこの世界を生き続けている。
これから、世界が終わるまで。
ずっと、ずっと。