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紅龍


私の一番古い記憶は、小奇麗で見目麗しい男の腕の中、声も出さずに泣き、途方に暮れているという、それだけなら少しばかり羨ましがられるものだ。

その頃の私は、その日一日をどうやって暮らしてきていたのか、覚えていないほど悲惨な生活を送っていたのだろう。

六歳で今の主『ロン・オーア』に拾われるまでの記憶が一切無く、ロン・オーアに仕える事で今まで生きてきた。


捨て子だったのか、それとも親が早死にしたのか、その頃の記憶は全くといっていい程無く、ただただ空腹と虚無感の中過ごしていたように思う。


その後、ロンはただ生きているだけでなく、何か好きな事を学ぶと良いと言って、私に家庭教師を付けた。

その辺りで、彼を取り巻く幾人かの人々は、私が彼のお気に入りらしいと気付いていたらしいのだが、生憎私も、私の家庭教師でありお目付け役であったショー・ペイルもその事実に気付く事は無かった。


何故なら、その時私と彼の年齢差は二十もあったのだから。

幼女趣味にも程があるというものだろう。


あの頃の事をショーは『主が幼女趣味だと思いたくありませんでしたので、真っ先にその事実を抹殺していたのですが、まさか本気だったとは。しかし、その事実に気付けなかったからこそ、今の貴方があるのです。終わりよければ全て良しという事です』と言っていた。


これは完璧な開き直りである。


とはいえ確かに、あの頃私がロンのお気に入りだと、婚約者だと分かっていたなら、きっと今の私はいない。あのままだったら、私は何れ死んでいただろうから。


しかし、それもこれも、全てロンの為、これからの為だったのだと、その後私は気付く事になるのである。


今、私の目の前には、大破した車と、人型をした肉の塊が三つ、転がっている。

所謂、事故現場という物だろうが、その車は今まで自分とロン、そしてショーが乗っていた物だ。

このままでは、この車を見つけた部下達が私達の死を報告する事になるだろう。


しかし、今現在、私達はこの車が良く見える木の上にいるので、明らかな偽装なのだが、ああまで焼け焦げてしまっては、判別する事も難しいはずだ。

何故、ロンやショーがこんな事をしているのか、普段の無表情に少し眉を顰める事で伺うと、そこには楽しそうなロンがいた。


ニヤリと口角を上げ、私の目を射抜くように、心ごと鷲掴むような声で命令を下す。


「フー・シーピア。お前は永久に、この俺ロン・オーアの所有物となる事をここに命じる。俺と一緒に来い、フー」


「主の望むままに」


いつだって、この心や体、捧げられる物は全てロンの為に磨いてきた。

私『フー・シーピア』という人間は、この男の為にだけあるのだから。


こうして私は、中国マフィア紅龍ホンロンのボス、ロン・オーアと共に事故死としてこの世界から姿を消す事になった。

そして、次に目覚めるとそこは、セルピエンテという地球とは全く異なる異世界だったのだ。




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