第六頁
探偵部部室
「えっと・・・・生きてるって?」
「はい、宮坂夏香さん 五年前に飛び降り自殺をしようとなさって、それ以来五年間眠ったままです」
「ちょっと待ってくれ、幽霊騒ぎが起こったのは最近だろう?」
「ですよね。先輩、彼女が眠ってる病院の住所調べます?」
「じゃあ頼むよ。ぼくはもう一度あの黒猫に聞いてみる、絶対に何か知ってるはずだ」
そう言って一目散に出かけていく明日夏、それを他の部員は唖然とした。
「えー そこまで気になるんですか?」
「驚きだ。あそこまで執着するとは」
「だよね・・・・」
普段は人など気にしないし、どうでもいいと公言する明日夏がここまで気にする井上とは何者なのか。若干物議をかもした。
▽
文芸部部室、またもや話し声が続いていた。
「失礼するよ」
中に入るとまた黒猫少女が本を開いていた。
「おや、また来たんだ」
黒猫少女がこちらを向いた。ただしその目の色が白いことには明日夏は気が付いていない。
「宮坂夏香について教えてくれ」
「・・・ま、いいか。アイツはひねてるから教えないだろうが、ここにいたのがおれでよかったな」
「? まあいい、教えてくれるのかい?」
「いいよ、座りな 長い話にはならんだろうが立ったままだときついぜ」
「わかった」
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では、何処から話をしよう。
そうだな、まずは宮坂夏香が飛び降りた原因からにするか。
―――――あれは五年前の夏の日、一人の人物が行方不明になった。名前は「健崎隼人」当時音楽科の特別講師をしていたそうだ。楽器はバイオリン・・・ただし下手だったそうだ。それ以外は上手だったらしいんだがな。そして学校の肝試しが不運にも当たって奴は試したんだよ。「大鏡の裏」をな。
で、そいつは行方不明になった。
そいつと宮坂夏香の関係を話しておくぜ。まあ、奴は宮坂の理解者だったらしい、音楽のセンスはあったんだけど随分な悲観体質でな、そういったところも理解しながらきちっと付き合ってくれていた唯一の理解者ってわけだ。そんなやつが居なくなったんだから悲観体質の宮坂にはたまらない、それで飛び降りた。
それが始まりだったんだ。
結局飛び降りたところで死ねなかった宮坂夏香の意識は奴を探して鏡の裏に行ってしまった。
で、見つけたんだよ。鏡の裏で扱かれている彼をな。
それから五年後のある春の日、ついに奴は解放されて元の世界の音楽準備室に帰って来た。ただしこの学園での記憶をほぼ忘れてな。そんな時一人のガキと出会った。淡くでも記憶にあった宮坂に似た雰囲気を感じた奴はガキを随分と可愛がってな、それを憑いていた宮坂はその光景を見ていたわけだ。記憶がなくなったなんて知らない悲観体質の彼女がどう考えるかぐらいわかるだろ?探偵さん
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「・・・・・だから、誰にも必要とされていないなんて」
「そういうことだ。さて、話すべきことは話した」
「君は彼女が視えているんだ。君が彼女を説得することはできなかったのかい?」
「いやだなぁ、おれはただの物書きだよ。他人を幸せに出来る探偵とは違うんだ」
「?」
黒猫少女の言っていることの訳が分からないと首を捻る明日夏、そんな様子にも気を取られず黒猫少女の独白のような呟きは続く
「物書きは真実しか映さない、ハッピーエンドを描けるのは探偵さ。さぁ帰りな。あんたのツレが待ってるぜ」
明日夏は追い出された。
彼女の出て行ったドアを眺めながら黒猫少女が呟く。
「・・・・全く、運がいい奴だなぁ。まさか真相を知っているおれの方がここに居る時に尋ねて来るなんてよ」
ちりんと音がして椅子の座席には目の色がよくわからない黒色の猫が乗っていた。
そう言えばなのですが怪談・・・・真面目に考えてなかったんですよね。現時点で考えているのが「文芸部室」と「音楽準備室」それから「校庭」の三つなんですよ。
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