第五頁
「先輩!宮坂夏香の調査完了しました!」
「こっちも調べたよ!」
部室に戻ると後輩たちが調べを進めていた。
井上の言った通りになったようだ。
「いつも思うが早いね」
「はい!」
「そういえば黒猫からは情報を得られたの?」
思い出したように明日夏に尋ねる。すると疲れたような顔をして明日夏が答えた。
「けんもほろろだよ」
「黒猫って・・・井上遠子先輩ですか?」
黒猫と言えば誰でも井上ならしい。
「そうだよ」
「井上先輩と言えば陰陽師とも付き合いがあるとの噂ですよね」
「陰陽師?そんなもの現実に存在するわけないだろ」
「そうでもないんですよ。筋が通ったものはちゃんとあるそうでして、本物ってあるそうですよ」
「・・・・確かに幽霊が存在していたしね」
先ほどの夏香との会話を思い出していた。
「あ・・・その宮坂なんだけどね」
「ん?」
「生きてますよ」
「え?」
世界がちょっと止まった気がした。
▽
ところ変わって音楽準備室にある大鏡の前
そこに菓子の袋づめを持った井上の姿があった。
「や」
『よー』
井上が鏡に向かって手を挙げると鏡の中から青地と白の目と赤の縁取りで構成された狐面を斜めに被った和服姿の狐耳男が出てきた。彼はこの学校の怪談の一つである「大鏡の裏」の正体である。
「大鏡の裏」とは深夜にこの準備室で演奏をしていると自分そっくりの姿をした人物が鏡の中で同じように演奏をしだすそうだ。それはそれはとても美しい演奏でその演奏を超えることができればその者は成功するらしい、音楽クラスの生徒たちの間では一種の腕試しの場として知られている。ただし、あまりにも演奏が下手だと鏡の世界に引きずり込まれみっちり扱かれるらしい。この前、5年ほど行方不明になっていた人物がようやく帰って来た・・・・当時の姿のままで。
その正体がこの道楽者のような恰好をした狐男なのだ。ちなみに名前は鑑
『で?どうだったんだよ、生霊ちゃんは?』
「あー 探偵に放り投げた」
若干悔しそうにする井上、その表情を見ながら狐がしっしっしと笑う
『いいんじゃねーか?お前じゃ役不足だろ?』
「そうだね、おれの文章は真実しか映せないんだ。そんなおれより・・・・」
そう言って黙り込む井上の顔は真剣そのものだった。
そんな井上の表情を見た鑑がニィっと笑って思いっきり抱きついた。
『景気付けにこの美味いクッキー食え』
「おわっ それおれが作ったんだけど?」
『味見ってことでよ』
「あのなぁ・・・・・」
ちょっとばかし学校の設定箇条書きします。
・女子高
・音楽や芸能クラスあり
・怪談好きが多い
・鑑のように正体が現れる。
・一般生とか巻き添えになるような怪談もある
・井上が何で知り合いなのかは後日
・一応七つ以上あるらしいよ?