第三頁
幽霊の出る空き教室
「・・・・君は・・・・」
ゴクリと生唾を飲む明日夏、目の前には半透明の少女が居る。
少女が気が付いて明日夏の方を見た、その目は絶望に満ちていた。
「・・・・誰?あんた」
「ぼくは卯月明日夏、君は?」
「・・・宮坂夏香」
「君は・・・・幽霊なのかい」
「そう、あたしを必要としてくれる人なんていない。だからあたしは死んだの、じゃあね」
「あ」
夏香は消えてしまった。その場に佇む明日夏が残った。
そこで一人明日夏が呟いた
「・・・・そんなのは、悲しすぎるだろ」
▽
文芸部室
そこにはカリカリという音が響いていた。
「あれ?早速書いているの?」
「ああ、彼女を見たとき一瞬ひらめいたものがあってね」
覗きこむ健崎の顔も見ずに一心不乱に書き続ける井上、何が彼女を突き動かしているのかは誰も知らない。
健崎が何かを思いついた顔をして部室の外へ出かけて行った。
―――――― 一時間後
「書けた」
汗をだらだらかいた井上がやりきった、という表情で椅子にもたれ掛った。
健二が水筒らしきものを持って帰って来る。
「はぁー」
「お疲れ様、スポーツドリンクはいかが?」
「貰う、つかどこから持ってきたんだよこれ」
スポーツドリンクをがぶ飲みする。まるで目一杯運動を終えた後のようだ。
ただ、スポーツドリンクの粉末など文芸部の部室にはありえない。
では、どこから持ってきたのか。
「体育会系の部活の部室からちょっと拝借したんだよ」
『怒られねぇのかよ』
「大丈夫、大丈夫♪」
とりあえずスポーツドリンクを飲んで井上は落ち着いたらしい。
机中の紙を一か所に纏めて机の上に突っ伏した。
「それにしても大丈夫かな?彼女」
健崎の呟きに顔をあげる井上、体を起こすことすら辛いようだ。
「さぁな?だとしてもおれにできることは無い」
悟りきったように目を閉じる、その表情は本気で諦めている顔だった。
「そう?ペンは剣より強いっていうけど」
「だからこそ、だな。おれは一本のペンで何でもできる。でもよ、現実を塗り替えるのは出来ない。せーぜーあがいて物語をハッピーエンドで終わらせるだけだ」
「・・・・そっか」
井上の表情を見て何を思ったか頭を撫でだす健崎
「ちょ、何すんだよ」
「頑張っている子にはこれでしょ」
「頭撫でんなぁぁっ!」
ちょっとほのぼのな雰囲気が漂う部室内だった。
ちなみにこの声は部室の外にも響いていて、怪談をさらに加速させていた。
▽
探偵部部室
「・・・・必要としてくれる人はいない、ね」
部室に帰って来た 明日夏が一人ぼんやりと空を眺めていた。