あなたがいないと生きていけない。
あなたがいないと生きていけない。
これまでの人生で、一体何度この言葉を耳にしたことでしょう。消えてしまいたいと泣き縋るあなたたちに、わたしはただ、静かに寄り添うことしかできませんでした。わたしの手のひらに心の疵口を癒す力があればと、何度己の無力を呪ったことでしょう。青白く冷えていくか細い手を握り締めながら、何度祈ったことでしょう。
祈りも呪いも意味を成さない。
あなたの生を繋ぎ止めていた硝子のコップから、鈍色が溢れ出した時、わたしはどうすればよかったのでしょう。
一緒に生きよう。この夜をやり過ごそう。いつか笑い飛ばせるよ。安易な慰めは、却って傷を深く抉ってしまうだけだと肌で知っていました。だからわたしは何も言わずに、小さく震える背をさすり続けました。わたしの願うことは、ずっと一つだけでした。あなたがもう一度、心から笑える日が来ますように。
わたしの願いは叶いませんでした。わたしがどれほど手を尽くしても、あなたたちは壊れていくのです。あなたがいないと生きていけない、と零していた唇。透明な涙の膜が張っていた目元。必死にわたしを掻き抱いていた腕。そのすべてが、最後には白みがかった灰になりました。
結局、誰のことも救えませんでした。自身も精神を患った今では、あなたたちを助けたいなどと願ったこと自体、身の程知らずだったように思います。
あなたがいないと生きていけない。
いつか、わたしが誰かにそう思ってしまう日が来たら。その思いを自分の胸に留めたまま、ひとりきりこの世に見切りをつけると決めていました。誰一人救えなかった人間の最期、どうか誰にも見つかりませんように。




