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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
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あなたがいないと生きていけない。

作者: 倉木紫
掲載日:2026/09/27

 あなたがいないと生きていけない。

 これまでの人生で、一体何度この言葉を耳にしたことでしょう。消えてしまいたいと泣き縋るあなたたちに、わたしはただ、静かに寄り添うことしかできませんでした。わたしの手のひらに心の疵口を癒す力があればと、何度己の無力を呪ったことでしょう。青白く冷えていくか細い手を握り締めながら、何度祈ったことでしょう。


 祈りも呪いも意味を成さない。

 あなたの生を繋ぎ止めていた硝子のコップから、鈍色が溢れ出した時、わたしはどうすればよかったのでしょう。

 一緒に生きよう。この夜をやり過ごそう。いつか笑い飛ばせるよ。安易な慰めは、却って傷を深く抉ってしまうだけだと肌で知っていました。だからわたしは何も言わずに、小さく震える背をさすり続けました。わたしの願うことは、ずっと一つだけでした。あなたがもう一度、心から笑える日が来ますように。


 わたしの願いは叶いませんでした。わたしがどれほど手を尽くしても、あなたたちは壊れていくのです。あなたがいないと生きていけない、と零していた唇。透明な涙の膜が張っていた目元。必死にわたしを掻き抱いていた腕。そのすべてが、最後には白みがかった灰になりました。


 結局、誰のことも救えませんでした。自身も精神を患った今では、あなたたちを助けたいなどと願ったこと自体、身の程知らずだったように思います。


 あなたがいないと生きていけない。

 いつか、わたしが誰かにそう思ってしまう日が来たら。その思いを自分の胸に留めたまま、ひとりきりこの世に見切りをつけると決めていました。誰一人救えなかった人間の最期、どうか誰にも見つかりませんように。

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