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隣国の侵略軍、エルンストの「結界の快適さ」に戦意を喪失する


 王国の報酬を独占し、神のごとき魔道具を次々と生み出すエルンスト。

 その存在を、隣国の好戦的な軍事国家が放っておくはずもなかった。


「伝説の魔導師を我が国へ強奪し、その技術で世界を征服するのだ!」

 そう息巻いた帝国は、数万の精鋭軍と、精神汚染に耐性を持つ最強の呪術師部隊を隠れ家へと送り込んできた。


 隠れ家の周囲は、瞬く間に鉄の包囲網で埋め尽くされる。

「エルンスト・ラズロ! 貴様の結界を破り、引きずり出してやる!」

 帝国軍の司令官が叫び、数百人の魔導師が一斉に結界を破壊するための攻撃魔法を放つ。


 その頃、家の中では。

「……あー、外が騒がしい。……メルティ、窓閉めて。……なんか、鉄の焼ける匂いがして、安眠が妨げられる」

「……閉めましたけど、兵士たちの怒鳴り声が結界の共鳴を誘って、コタツの温度が0.5度上がっちゃいました」

「……それは由々しき事態だね。……よし、結界の出力を『最大(極楽モード)』に上げて。……ついでに、負の感情を『幸福感』に変換するフィルターも通して」


 エルンストが枕元で魔法式をピッと書き換えた瞬間、隠れ家を取り囲む結界から、淡いピンク色の光が溢れ出した。

 それは、周囲数キロを「超高密度マイナスイオンと、最高に心地よい春の風が吹く癒やし空間」へと変貌させる、広域精神緩和魔法だった。


 数分後。

「……お頭、俺たち、なんでこんなに重い鎧着てるんでしたっけ?」

「……知らん。……なんか、この森の空気吸ってたら、天下統一とかどうでも良くなってきた……」

「……見てください、あのエルンスト様の家から漏れる魔力……。あそこにいれば、一生お腹が空かない気がします。……もうここで、みんなで昼寝しません?」


 数万の侵略軍は、その場で武器を投げ捨て、各々が理想の場所でゴロゴロと寝転び始めた。

 最強の呪術師たちも、「呪いなんて非効率なこと、よくやってたな自分……」と涙を流し、互いに肩を揉み合っている。


 翌日、侵略軍はそのまま「エルンスト様の安眠を守る会」を結成。隠れ家を自発的に守る最強の警備員へとジョブチェンジしていた。

「……あ、なんか静かになったと思ったら、警備員が増えてる。……メルティ、これでさらに安心して二度寝できるね」

「……はい。……侵略さえも『休暇』に変えてしまうなんて。……エルンスト様、あなたは本当に恐ろしい方です」


 こうして、世界を揺るがす大戦争の危機は、「ちょっとした設定変更」によって、平和な昼寝大会へと姿を変えたのである。


 

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