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十三年の空白。

作者: 小池竜太
掲載日:2026/01/25

僕には過去が無い。いやもっと正確に言えばあったのだが、失くしたのだ・・・・・



 満月の好きな女の子が居た。その子と僕は恋愛していたのだが、全てを失くした・・・




 もともと僕は調子に乗りやすい性分だった。それの矯正きょうせいにかなり時間がかかった。全てはめなおされ満たされ、魔女は夜に微笑み、時計は、無残に時を切り刻む。





 美しい満月の晩、彼女はこう言った。



「あなたとはもうこれきりで・・・・」



 それでおかしくなった僕は記憶を失なった。今から十三年前のことだ・・・・・





 


 人が生きていくのには、色々な理由が必要だ。理由も無しに、ただ生きている人などいない。皆、切実な理由を求めて生きている。切実な愛を求めて生きている人はたくさんいる。


 街でたくさんの人たちが右に左に歩いている。その中に愛を求めている人はどれほどいるのだろう・・・・・








 あれから十三年が経った。







 僕は、相変わらず彼女を失っている。




「それでその話のつづきは?」

そうバーテンダーが問うた。





「いや、記憶を失くした僕は、自分を取り戻すのに、十三年かかった・・・・そうしてその女の子は九州の方へ行ってしまった。僕は相変わらず連絡できない。」



「取り戻す気はあるの?」

「いや・・・・・・」

「君は、もう違うルートに入ってるんじゃない?」そう香織ちゃんが言う。


「・・・・・・・・」

「十三年の月日は、二人を遠ざけてしまった。二人が出会うまでには、あと百年はかかるよね・・・・」

「・・・・・・・・」

「まあ、君のことだから、忘れていると思うけれど・・・」そうバーテンダーが言う。






「チェックで」そう僕は言って店を出る。






街は不穏な空気だ。囚われ人も、まだ少しいる。




この先どうなることか・・・・・僕にも分からない。




『一番大切な物はなに?』

僕はその問いに答えなかった。







彼女に、一目会いたいが、とても遠いところに居る人だ。そうして僕のことなども忘れているのだろう・・・・・・






歯車は回る。僕もどう立ち回っていくことか・・・・・・・ 

はあ・・・どうなることやら・・・・

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