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東方想系譜 ~異人襲来の章~

「紫様。ただいま戻りました」


「おかえり。橙をありがとね」


「いえ、僕も楽しかったです。最後に地底に行ったので、怯えさせてしまいましたが」


 八雲家に到着した菫は眠っている橙を、敷かれていた布団へそっと寝かせた。


「橙くらいの力なら、怨霊はまだ手強いわね。藍ももうちょっと精進が必要ね」


「藍様は橙を可愛がっているので、鍛えるのはまだまだ先になりそうですね」


 菫は紫の机へ近づき、紅茶をつくり始める。


「それよりも、皆さんはもうすぐ着きますか?」


「……バレてた?」


「幽々子様が余所行きの恰好でしたし、さとりも何か様子が変だったので」


「よく見てるわね。今回はみんな呼んでるわ。そろそろ始まるしね」


 菫が紅茶を注ぎ、紫の前にそっと置く。


「来ますか」


「えぇ来るわ。思っていたよりも遅かったわね。そのおかげで貴方が完成したのだから、逆にちょうどよかったかもね」


「そこまでの脅威になると思いますか?」


「貴方の肉体にはもともと能力があったことが分かった。それに魂は私の境界と霊夢の結界に触れているわ。何らかの変化が起こっていると考えられるし、肉体と魂が別個になっているのなら魂も能力を持っている可能性が高い」


「よくわかりませんが、それだけでは萃香たちを納得させるだけの相手にはならないのでは?」


「えぇ、これだけならね。藍に調査してもらってるけど、魂が通った痕跡と貴方がこちらへ来た道筋がほぼ一致していたわ。留まらずに戻ったということは、何かがあるということよ。未知っていうのは何とでも説明できるわ」


「そういうものですか。あ、来ましたよ」


 菫が玄関の方を振り向き、扉を開けに向かう。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「集まってくれて感謝するわ」


「久しぶりに全員が揃ったねぇ。前回は少し足りなかったからねぇ」


「萃香。それちょっと私にも頂戴」


「お、飲むかい? 分かってるねぇ。菫。器を持ってきな」


「もう持ってきました。輝夜様、こちらをどうぞ」


「あら、ありがとう」


 ―蓬莱山輝夜―

 竹林に隠れ住む月の姫。月から逃れてきた罪人兼永遠亭の主。


「菫。お茶菓子はないの~」


「おい菫。ついでにつまみを持ってきな」


「すぐに持ってきます」


 用件を言いつけられた菫は、奥の方へと消えていった。


「ちょっと、菫は召使じゃないのよ?」


「じゃあお前が動けばいい。一人で来るように言っているのだから、従者がいないのは当然。ここにいるのは誰かの上に立つ者ばかり。必然的に菫が動くことになる」


「そういうあなたは何も飲まないの?」


「私はそこにある紅茶でいい」


 少女は紫の元にあった紅茶を引き寄せた。


「ちょっとレミリア。それは私のよ?」


「私が紅茶を入れろと菫に指示するのと、お前が指示するのとではどちらがいい?」


 ―レミリア・スカーレット―

 永遠に紅く幼い月。紅魔館の主で最強の吸血鬼姉妹の姉。


「お待たせしました。幽々子様にはこちらを。萃香にはこれね」


「ありがとう、菫」


「待ってたよ。お前も飲むかい?」


「いや、遠慮しておくよ」


 菫が引き下がると、『バン!!』という扉が強く開く音が会場に鳴り響いた。


「騒がしいな。今日は重大な話だと聞いていたが?」


「視たところ、萃香様と輝夜さんのせいで菫が振り回されて、レミリア様のせいで紫様が葛藤しているようですね」


 隠岐奈とさとりの登場で静まった瞬間を狙って、紫が話し合いを始める。


「輝夜、レミリア、幽々子、萃香、さとり、隠岐奈。うん、全員いるわね。じゃあ始めるわ」


「菫。すまないが幽々子と同じ緑茶を頼む」


「かしこまりました」


 隠岐奈のお願いを聞き、菫は奥へと再び戻る。隠岐奈の行動に嫌な顔をしながらも、紫は会議を進めた。


「前にも言ったように、幻想郷に菫の魂がやってくるわ。藍の調査でそれが確実なものとなった」


「それで、その魂がどんな脅威になる? 我々が出向く必要性はあるのかしら?」


「吸血鬼の言うとおりだねぇ。楽しめるほどの相手じゃないなら、アタシらは行かないよ」


「最後まで聞きなさい? 菫がここに来る前から能力を持っていたように、その魂も能力を保持している可能性があるわ。そして菫が以前住んでいた場所へ向かい何かをした。その何かが分からないけれど、おそらく受肉ね」


「受肉? 魂が誰かの体に入ったってこと?」


「そうね。通常受肉が起こった時は何かしらの変化が起こるもの。どんなものかは分からないけれど、脅威だった場合に備えておく必要があるの」


「ふん。くだらないねぇ。そんな不確かなのかい? アタシらを都合よく使うんじゃないよ」


 萃香が紫の曖昧さに怒りを示した瞬間。


「!?!?!?!?!?」


 ―バン!!!!!!!!―


 萃香の発言に返そうとした紫が突然、驚いたように目を見開いた。それと同時に台所の扉が勢いよく開き、菫が飛び出してきた。


「待ちなさい!!」


「くっ! なぜ!?」


 紫はスペル『四重結界』を発動して、玄関へ向かおうとする菫を閉じ込めた。そしてスキマを開き、そこから傷だらけの藍を引っ張り出した。


「藍!! 大丈夫!?」


「ゆ…かり様……アレは…ま…ちがい…なく…脅威…です」


「どうなってるの? 藍は大丈夫なの?」


 幽々子が心配そうに見つめる中、紫は藍を菫と同じ結界の中に入れ、菫は藍を治療し始めた。


「幽々子様。我々は戻りましょう。幽霊と怨霊を管理する必要があります」


「え? でも、藍が」


「藍様なら大丈夫です。僕が治します」


 さとりは周囲の心を読み、今すべきことをいち早く理解した。幽々子の手を引き、紫の所へ向かう。


「紫様。スキマを」


 紫は黙ってスキマを開いた。そこへ幽々子と入る前に、さとりが一言。


「藍様がアレと遭遇したのは、妖怪の山方面のようです」


「…えぇ。行ってちょうだい」


 幽々子とさとりがスキマに入り、境界が閉じた。


「楽しめるかどうかは、自分の目で判断することになりそうよ」


 興奮を隠しきれない萃香とレミリアを見て、紫は溜息を吐いた後に別のスキマを開いた。


「頼んだわよ」


 紫の声も聞こえていない様子で、鬼と吸血鬼は妖怪の山へと繋がるスキマへ入った。


「輝夜はどうするの?」


「私はいいわ。あの子がここまでされるのなら、うちの兎じゃ無理だもの。もしこっちにまで来るのなら、その時は相手しておくわ」


 輝夜は、萃香が置いていった瓢箪から酒を注いでいた。


「そう。じゃあその時は任せたわ。菫は待機よ。事態が進むまではね」


「…はい」


 治療に専念する菫を見た後、紫は目を閉じる。


『龍。始まったわ。後は頼んだわよ』


『はい。近いものから順に飛ばしています。萃香様とレミリアさんもたった今向かわれました』


 妖怪の山の方角。龍に連絡をしておけば天狗たちがすぐに動く。スキマで萃香とレミリアを送ったから、戦力的に不足はないはず。


「輝夜、あなたは…」


 紫が輝夜に声を掛けようと振り向くと、もうすでにそこにはいなかった。


「行ったのね」


 永遠亭から妖怪の山はかなり距離がある。問題はないだろう。


「紫様。治癒が終わりました」


「藍は?」


「無事です。回復のために眠っています」


「そう…ありがとう。休んでいていいわよ」


 菫は内側から結界を殴って破る。


「僕を閉じ込める必要ありましたか?」


「簡単に破るわね……止めておかないと、そのまま行っちゃうでしょ?」


「でも! …藍様の式神である僕が感じた動揺よりも、藍様の主である紫様が感じた動揺の方が大きいはずです。そこまでして幻想郷を巻き込む必要がありますか?」


「…そうね。えぇあるわ。幻想郷には、今は刺激が必要なの。それに今回の未知数は、その数値が高ければ高いほど効果が出る。簡単に解決される方が困るのよ」


「なら、藍様のことは仕方がないということですか」


「いえ、それは私の責任よ……一人で任せてしまった」


 眠っている藍を見て、紫は悲しそうな目をする。


「そう思うのなら、他の皆だってそうです。今まさに傷ついているかもしれない。そういうときの僕のはずです」


「言ったでしょ? 刺激が必要なの」


 紫は両手を縦に振り、スキマを二つ開いた。そこから、二つの影が入ってきた。


「随分と早かったわね。現状はどうなってるの?」


「久しぶりにスキマを通りました! 幻想郷に来た時以来です」


「霊夢…それに早苗? どうして二人を?」


 ―東風谷早苗―

 奇跡と風の巫女。守矢神社の風祝で、現人神。


「幻想郷に刺激を与えるには、巫女という既存の防衛機構にも待機してもらう必要があるのよ」


「私なんかじゃ対応できそうもないですし、逆に助かりましたけどね!」


「あんた仮にも巫女でしょ? ちょっとは役に立ってくれないと私が楽になれないじゃない」


 巫女と巫女がバチバチにやり合いそうな雰囲気。


「まぁまぁ落ち着いて。それで紫様。これからどうする予定ですか?」


「菫は私と戦場を観察しに行くわ。二人はここで待機ね。被害が拡大しそうならば、人間の里の防衛をお願いするから、その時はよろしくね」


「なにもしなくていいならいいわ。休みを堪能させてもらうわよ」


 紫は再びスキマを開く。


「じゃあ二人とも、行ってくるよ」


「はい! 頑張ってください!」


「気合い入れなさい」


 二人の巫女からの声援を受け、菫は紫と共にスキマに入った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「椛! 止まらないで!」


「分かってる! 文もよそ見するな!」


 空中を複数の鴉天狗と白狼天狗が旋回している。


「早いなぁ。人間はいないのかな?」


 天狗の風に取り囲まれているのは、一人の男。


「「は!!!」」


 天狗たちが一斉に風の刃を放つ。しかし、男は全く意に介さない。


「見えなかったけど、今攻撃されたよね? なんだと思う? 風?」


「攻撃が弾かれたぞ。うちらじゃ手に負えない」


「なら、仲間を回収する! 白狼たちを動かして! みんな!」


 文は他の鴉天狗たちとともに、時間を稼ぐために攻撃を仕掛ける。椛はすでに負傷している同胞たちを回収すべく、白狼天狗たちに指示を出そうとしていた。


「静かにして欲しいね」


 男は手を叩き、両手を広げた。途端、周囲に凄まじい衝撃波が広がった。


 ―バァアアアアアン―


「僕は別に戦いに来たんじゃないよ。会いに来ただけ」


「私たちはそのつもりなのよ。相手なさい」


 男の上空からゆっくりとレミリアが降りてくる。


「レミィ。気を付けて」


「心配ないわパチェ。私は単純じゃないしね」


―パチュリー・ノーレッジ―

 知識と日陰の魔法少女。紅魔館の図書館司書にして、屈指の魔法使い。


「ここの住人は人の話を聞かないのが特徴なのかな?」


「人間とは話をする必要が無いからねぇ」


「萃香。早かったじゃないか。私が先にいただこうと思ってたんだがねぇ」


 萃香と勇儀、レミリアとパチュリーが戦場に立つ。


「ロイヤルダイヤモンドリング」


 パチュリーがスペルを発動する。周囲に煌めく光の輪が複数展開された。


「お、魔法じゃん!」


「おしゃべりする余裕があるのね」


 魔法派のパチュリーと体術派のレミリア。バランスの取れた連携攻撃が、男の会話する余裕を奪おうとする。


「そりゃしゃべるよ。効かないからね!」


「くっ」


「させない」


 レミリアの攻撃をも弾く男の力。体勢を大きく崩したレミリアを、パチュリーがリングを操って守る。


「やるなぁ。僕も魔法が使えたらなぁ」


「こいつ…まさか」


「レミィ、どうする?」


 レミリアは何かに気付き、パチュリーは次の一手を考える。


「用が無いなら下がってな!」


「怪力乱神」


 幻想郷の妖怪の中でも上位に立つ鬼という種族。その二人が本気で命を奪おうと攻撃を仕掛けた。


「すごいんだろうけど、効かないし感じないからさ。ごめんね」


 萃香と勇儀の怒涛のラッシュを軽々といなしていく。


「お前、どんな力だい?」


「ん? 言うわけないじゃん」


「くそっ!」


 一瞬の隙を突いて、男が萃香に触れた。そして触れた瞬間に萃香は強大な力で弾かれ、直線上にいた勇儀ごと吹き飛ばされた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「分かるかしら?」


「推測ですけどね。天狗の風も、鬼の力も、魔法も全部弾かれてる。そういう能力の可能性が高いですね」


「私も同じ意見ね。触れた攻撃やものを弾いている。威力で突破か、搦め手で突破か。あなたならどうするの?」


 戦場の遥か上空で、菫と紫は相手の動きと能力を観察していた。


「やってみないと分かりませんが、後者になると思います。鬼の腕力が簡単に弾かれるなら、正面は望みが薄そうなので」


「見た感じ、一番効果が無いのは魔法による攻撃でしょうね。まったく意味を成していないわ。紅魔館の魔女もわかってるわね」


「確かに。パチュリーはもうレミリア様の補助に回ってる。だったらやはり接近戦で詰めていくしかないか」


 菫は眼下の相手の動きを見ながら、体をゆっくりと動かす。現状での最適な戦い方を思案する。


「触れただけで勇儀たちが大きく崩されてる…触れただけで遥か後方に吹き飛ばされる…攻撃は全部触れた瞬間に弾かれる…死角からの攻撃も弾いていた…体術は僕と似ている…魔法は使わないが衝撃波を飛ばせる…防御の強さに今のところ上限は見られない…」


 菫が長考する横で、紫は一つの結論を導き出していた。


「そういうことね。レミリアも気付いた頃かしら」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「パチェ。もういいわ。下がってなさい」


「……わかったわ」


 レミリアの援護しかできない。その援護も大したものじゃない。敵に有効な攻撃を入れられない。悔しいがそれが事実。しかし、自分の出番は今ではない。


「君一人? だいじょぶそ?」


「グングニル」


 男を無視し、レミリアは燃え盛る巨大な槍を召喚。歩み寄る相手に向かって突く。


「やっぱ槍なら直線だよね」


 直線の攻撃を、側面から弾かれる。その力があまりにも強く、レミリアは再び体勢を崩す。


「危ない!!」


「はいおしまい」


 パチュリーが魔法を出そうとするよりも早く、男の拳がレミリアに直撃。同時にとてつもない衝撃波がレミリアを吹き飛ばした。


「レミィ!!」


 飛ばされたレミリアをパチュリーが追いかける。


「一人退場。次は誰かな? もういないほうがいいんだけど」


 男は伸びをしながら、周囲を見渡す。


「なら、次は私が参戦してもいいですか?」


「ん?」


 空から、大きな翼を広げた天狗が降りて来た。


「さっきのと同じ? でもちょっと大きいね」


「大天狗ですので。私は飯綱丸龍と申します」


「あ~天狗なんだね。僕は人間で、名前は無いんだ。もう捨てたからね」


「そうですか。それは悲しいですね」


「そうでもないよ。もう慣れたしね。まぁおいでよ。兄さんが来るまでの退屈しのぎだ」


 両者ともに構え、龍はスペルを発動する。


「虹彩陸離の舞」


 龍の背後に複数の星が現れ、七色に輝き始める。


「そういうのって言わないと発動しないの?」


「癖みたいなものですよ」


 男との会話に乗りながら、龍が先制攻撃を仕掛ける。


「これも効かないや」


 龍のパンチを正面から受けるも、弾く力によって簡単に防いでしまう。


 しかし、龍は凄まじい速度で男の視界から消えた。


「早っ!? まじ? さっきの子たちの比じゃないね」


 天狗本来の速度に大天狗の素質、そしてスペルによって常に陸から浮いている龍は抵抗なく宙を舞うことができる。その凄まじい速度によって、龍が通った後には虹が描かれる。


「弾かれても下がるだけです」


「頭いいけど、それじゃ解決にならないよ」


 弾かれて体勢を崩されたレミリア戦から、龍は一撃一退の戦法で時間を稼ぐことを選択した。自分が勝つのではなく、彼が勝つために戦うことを決めていた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「龍様の戦い方が一番いいですね。情報を取りながらあらゆる手段を試すには」


「だけれど、あれでは決着がつかないわね」


「何かあと一手。何かがあれば」


 菫が頭を悩ませる。その様子を見て、紫が不適に微笑む。


「もうすぐ見られるかもよ」


「え?」


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「ずっとこれだね。そろそろ終わりにする?」


「そうもいきませんので、まだ付き合ってもらいますよ」


 カウンターを狙う男の死角へ回りながら、龍は一撃一退の戦術を続けている。


「まだ…まだ足りない。けどもう少し」


「ちょっと焦ってるね。ん? 違う? 待ってる? どういうこと?」


「独り言ですか!?」


 龍がよそ見した男の顔面を狙って輝く星を撃ち込んだ。


「話てるのに……やってみるよ」


「…っ!?」


 地面を大きく陥没させ、地面から弾かれる力を利用して男が高速で突っ込んできた。


「はいおし……ぐあっ!!!!」


 龍に攻撃を仕掛けようとした男の拳が、一瞬止まる。そして今度は男が遥か後方へ吹き飛んでいった。


「はぁ…危なかった。遅いですよ、レミリアさん」


「仕方ないじゃない。精神だけでは攻撃できないんだから。溜めに時間がかかったのよ」


 龍が何もないところに話しかけると、その空間に少しずつ輪郭が形成されていく。ぼんやりと色がついていき、しばらくした後に半透明のレミリアが現れた。


「それにしてもよくわかったじゃない」


「魔力の片鱗を感じたのと、星空占いで今日は視えざるものを信じろとあったので」


「占いね。私の運命とどっちが不確かかしらね」


「ぐ…はぁ…はぁ…何をした?」


 男は起き上がりながら、先ほど吹き飛ばしたはずのレミリアを睨みつける。


「愚図にわかるように言うならば、お前は魔力や妖力を感知できない。だから肉体をあえて飛ばさせて、精神は此処に残した。そして魔力を溜め、精神体でお前を攻撃した。精神は精神に作用するというだけよ。賭けだったけど上手くいったわ」


 ―運命を操る程度の能力―

 レミリアの持つ能力で、存在するありとあらゆる運命を視ることができる。

 今回の場合は、精神と肉体を切り離した後の自分の運命が続いていたため実行した。


 ―星空を操る程度の能力―

 龍の持つ能力で、文字通りの力であると同時に星占いを行うこともできる。

 今回の場合は『不可視を重んじ、己の感を極めよ。さすれば運命が動く』という占いがあったため、視えない存在となったレミリアを感じ取り、レミリアの能力を信じた。


「もう使えないけど、一発入れただけでも満足ね。あとは任せるとするわ」


「そうですね。あとは彼に託しましょう」


 二人は遥か上空にいる存在を見上げた。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


~続く~


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