東方想系譜 ~郷土巡礼の章~
「わぁぁぁ! はやぁぁい!!」
飛んでいきそうになる帽子を押さえながら、少女は大はしゃぎしている。
「あんまり暴れると、僕の護りから外れちゃうよ?」
少女と手をつなぎながら飛んでいる少年は、彼女を落ち着かせようと声をかける。
「あ。橙、見えてきたよ」
「ほんとだ! 博麗神社!」
「降りるよ」
高速で飛んでいる状態から、徐々に減速を始める。少しずつブレーキをかけて、そっと神社の境内へ着地する。
「菫の飛び方、優しいね」
「練習したからね」
二人は手をつないで、仲良く鳥居を超える。
「懐かしいなぁ。霊夢たちとはたまに会ってたけど、向こうから来てくれてたからなぁ」
「わたしも久しぶり。滅多に来ない」
参道を歩きながら、かつての日常を想い出す。霊夢に殴りかかり、魔理沙に殴られまくる日々。神社の雑務を手伝いながら、たまに来る霖之助と雑談を楽しんだ。
「霊夢ー! 僕だよー!」
玄関をノックして霊夢を呼ぶ。しかし、反応は無い。
「あれ? いつもならこの時間はいるはずなんだけどな」
「寝てるんじゃない? 博麗の巫女はだらしないって藍様がよく言ってるし」
「そんなことは……ありそうだね」
霊夢の肩を持ちたいけど、否定できない。ごめん霊夢!
「どうしよっかな。先に他の所を周るかな」
霊夢不在のため、菫が他のところへ移動しようか悩んでいたところへ訪問者がやってきた。
「ありゃりゃ? 菫さんじゃないですか」
声の主を見ると、鳥居の方から黒い翼を生やした少女が飛んできた。
「文! 久しぶりだね!」
「はい! 訓練の時以来ですねぇ」
―射命丸文―
捏造新聞鴉。『文々。新聞』を発行している自称ジャーナリスト。
「あなたはどのようなご用件でこちらに?」
「僕は今、修行でお世話になった場所を周ろうとしてるところなんだ。橙と一緒にね」
菫は橙の頭を撫でた。橙は嬉しそうに尻尾を振る。
「ありゃりゃ、大妖怪様のとこの。何かネタはありませんか? 些細なことでも!」
「わぁ! なんもないー!」
顔と顔がぶつかりそうな勢いで詰め寄る文。それに驚いた橙は菫の後ろに隠れる。
「橙がおっかながってるだろ? もうやめたげて」
「いやぁ失礼しましたぁ。ジャーナリスト魂が疼いちゃいまして」
菫が仲裁し、文は頭をぼりぼり掻きながら引き下がる。
「で、文はどうしてここに? 霊夢に用事?」
菫が尋ねると、文は突然慌てだす。
「そうでした! 忘れてました! 助けを求めに来たんですよ!」
「助け? 異変でも起こったの?」
異変。幻想郷の中で起こる問題ごとを指す言葉。
「そう!…いや、正確には違いますが、私の中ではとんでもない異変です!」
「そ、そっか。それで、何が起きたの?」
菫と橙が文の気迫に押されながら尋ねる。
「鬼が! 私を狙っています!」
「…おに? おにって…あの鬼?」
橙が文の遥か後方を指さしながら聞く。
「へ? ひ!!」
振り向こうとするが、その前に後ろから迫る圧を受けて文がビビる。
「さぁさぁ。そのデタラメ新聞記者を明け渡してもらおうか!」
大股で歩きながらやってくる圧倒的強者。片手で大きな赤い杯を持っている。
「で、でたぁぁ!!」
文も菫の後ろに隠れる。
「鬼って、勇儀のことだったのか」
―星熊勇儀―
語り継がれる怪力乱神。妖怪の山を統べる鬼の四天王が一人。
「勇儀。一体何があったのさ」
「おぉ! いつぞやの坊やじゃないか。一杯やるか?」
菫を手招きしながら、巨大な杯からグイっと呑む。
「いや、やめとくよ。それより、なんで文を追っかけてるの?」
「くはぁ! あぁん? そこの鴉は前に私が萃香と飲み比べをしてぶっ倒れていたところを、戦闘で負けたと新聞に書きやがったのさ。だから絞めてやろうと思ってねぇ。飲みならまだしも、私はまだ戦いで萃香と決着をつけたことは無い!」
勇儀が獣を狩る猛獣のような目で文を見る。菫の後ろにいる二人が、ビビッて震え上がった。
「なるほどね。また文が捏造したんだ…」
「しょーがないじゃないですかぁ。じゃないとウケないんですよぅ」
菫が後ろを見ると、文が涙目で訴えかけてくる。
擁護はできないけど、このままだと文がやられちゃうな。
「今回は文が悪いけど、文じゃ相手不足だろ? 代わりに僕が相手をするよ」
「ほほぅ。私らに教えを乞うてた小僧が言うようになったじゃないか」
杯の中身を飲み干し、新たに注ぎながら勇儀はルールを宣言する。
「そうさなぁ…ルールを決めようか。ステゴロのみにしよう。簡単だろう? そして私は杯の中身を溢さないように戦ってやろう」
「肉弾戦ね。わかったよ。なら僕は、文を抱えながら戦うよ」
「えぇー! なんで私が!?」
逃げようとする文を捕まえて担ぎ上げる。
「悪いのは文だからね、罰は受けてもらうよ」
「いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
「お前さんは別に背負わなくてもいいんだがねぇ」
「それじゃあ文が反省しないからね」
勇儀と菫は互いにハンデを背負いながら構える。
「菫、がんばれー!」
橙が応援のためにジャンプした。そして着地の瞬間に、鬼と人妖は戦闘を開始した。
「せい!!」
「うきゃぁぁぁぁぁ!」
勇儀の正拳突きを文の顔面ギリギリで避ける。
勇儀の杯を狙って、下から蹴りを入れるが躱された。
「ちょっとは成長したねぇ」
勇儀が足技の連続攻撃をしてくる。その全てをギリギリで避ける。
「いぃぃぃひぃぃぃ!」
「衝旋攻舞」
菫が初のスペルを唱える。発動と共に、妖力が菫の体内と体外を循環し始める。
「状態変化かい」
勇儀が右足で蹴り技を入れる。菫はそれを左腕で受け止め、その勢いを利用して回転する。そして、右足で後ろ回し蹴りを放つ。
「は!!」
「ふん!!」
蹴りを右腕で受けるが、そのまま押されてしまう。有効打を受けた勇儀は、笑みをこぼす。
「やるねぇ。やるじゃないか!」
勇儀は拳を前に突き出し、スペルを唱えた。
「怪力乱神」
明らかに様子が変わる。先ほどまでの勇儀とは比較にならないほどのオーラ。
「やばいやばいやばいやばい! やばいですってぇぇぇぇ!」
文が暴れるのを意に介さず、菫は勇儀へと突っ込む。妖怪の山で鍛えた、圧倒的な力への適応訓練。その成果を見せるのは、今!
「いぃぃぃやぁぁぁ!」
勇儀は左手に持っていた杯を上に放り、先ほどまで突き出していた右拳を引き始める。
対して菫は、右に抱えていた文を左に持ち替えて右腕を伸ばす。
「はぁぁ!!!」
勇儀は気合を込めて左の正拳を打つ。その威力は『ごっこ』の範疇を超えている。しかし、それは菫への信頼の裏返しでもある。
その信頼を理解している菫は、迫りくる左の正拳に右の指先を合わせ、威力を受け取る。そのまま右へ回転し、勇儀の拳を背中ギリギリで躱す。
「あぁ??」
「ごぼごぼごぼ…」
勇儀は菫の動きに疑問を抱く。文はビビり過ぎて気絶。
菫は文を再び右へ持ち替え、左腕を空ける。先ほど勇儀から受け取った威力を、左腕へと流してスペルを唱える。
「鬼殺し正拳」
直撃の瞬間、勇儀は獲物を見つけた狩人のように笑っていた。
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「ありがとうございます。巫女様」
「いいのよこれくらい。また何かあったら言ってちょうだい」
霊夢は幻想郷にある人里に下りてきていた。
「巫女様。この御札ですが、どれくらい持ちますか?」
「あんたが死ぬまで効果は続くわ。安心なさい」
博麗の巫女として、霊夢は人間の里にも顔を出す。ここ最近は紫のちょっかいが無くなっても、こうして人間からの依頼が来るようになった。
「いやぁ助かりました。この年になってもまだまだ畑を管理せねばなりませんのでねぇ」
「もういい年したおじいちゃんなんだから、世代交代すればいいのよ」
「そうしたいところですが、何しろ畑も広く、せがれもまだまだなのでね」
畑仕事をしたいが腰がダメになってしまった老人のために、霊夢は霊力を込めた御札を持ってきていた。こういうのも巫女の仕事の一つなのである。
「まぁいいわ。それがあれば心配せずに働けるから。頑張ってね、無理しちゃだめよ」
「えぇ。ありがとうございました」
老人と挨拶を交わし、霊夢は飛翔する。
「一通り終わったわね。そろそろ帰ろうかしら」
お金が入るのはうれしいが、働き詰めなのは歓迎できない。
人里を一度見渡して問題ないか確認してから、霊夢は神社に向かって飛んでいった。
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相手の力をそのまま相手に殴り返す技『鬼殺し正拳』。妖怪の山での修行で、鬼と戦うことを通して身に付けた菫のスペル。
「いやぁ。こいつは効いたねぇ」
吹き飛んだ距離を大股で歩きながら、勇儀は技の感想を述べた。
「それは嬉しいね。杯は落ちて酒は零れたけど、どうする?」
正拳を打つ際に宙へ投げた杯を受け取る間もなく飛ばされたため、菫の足元へ落としてしまっていた。
「そういう枷だったからねぇ。勝敗はついたさ。私の負けでいいよ」
「ふぅ。文、終わったよ。文?」
「・・・・・・・・・・」
全然起きる気配なし。よほどビビっていたのか。
「だらしないやつだ。天狗もそろそろ鍛え直さないとね」
「しょーがないよ。僕がわざとスレスレで避けるような戦い方をしたからね。ちょっとやり過ぎちゃった」
「ふん。今度は互いに枷なしでやり合おう。そして一杯やろうじゃないか」
「いいね。その時は萃香たちも交えてやろう」
勇儀は『かっかっ』と笑いながら杯を拾い上げる。
「じゃあ私は帰るとするよ。もう用は済んだしね」
「わかった。またね勇儀」
ごくごくと音を立てて酒を飲みながら、勇儀は鳥居の方へ大股で歩いて行った。
「菫、おつかれ!」
「ありがと、橙。」
橙が駆け寄ってくる。これからどうしようかと文を見下ろしながら、菫が悩んでいた時。
「菫? 菫じゃない! どうしたのよ」
「おぉ! 霊夢! おかえり!」
霊夢は鳥居の方を一瞬見た後、菫の傍へ降り立った。
「あっちに勇儀がいたけど、何かあったの?」
「えっと、文と勇儀が揉めててね。僕が仲裁して何とか収めたよ。文は気絶しちゃったけど」
菫が文の方を見る。参道の脇で橙にツンツンされながら、文は仰向けに寝かされていた。
「厄介ごとを持ってきてくれたわね…。まぁいいわ。それよりも久しぶりじゃない! 修業は終わったのかしら?」
「うん。無事に終わったよ。今はみんなの所を周ろうと思っててね。先にここに来たんだけど、霊夢がいなくてさ。困ってたところに文が逃げ込んできたんだよ」
「そういうことね。どうせまた話を捻じ曲げて新聞を書いたんでしょ?」
「お~よくわかったね」
真相を言い当てて、霊夢は文の方へ歩み寄る。
「ここで寝られると迷惑なのよ。さっさと起きなさい」
霊夢が掌を文の額に当てると、すぐに文は目を覚ました。
「やめてー!……ありゃ? ここは? ありゃ?」
騒がしく起き上がった文は、状況が呑み込めずに混乱していた。
「勝負は終わったよ。勇儀はもう帰ったし、新聞のことももう許してくれたみたい」
「はぁふぅ。安心しました。ほんとに死んだかと思いましたよ。もう二度とごめんです」
「なら、新聞の書き方には気を付けることね。デタラメを書いてたら、また変なのに突っつかれるわよ」
「それとこれとは話が別です」
警告をする霊夢とめげない文。二人の言い合いを止めて、菫は霊夢に尋ねる。
「そういえばどこに行ってたの? この時間に神社にいないなんて珍しいね」
「あ~人里に下りてたのよ。あんたがいた間に、紫がお賽銭が増えるように図ってくれたでしょ? そのおかげで、今も人間から依頼が来るようになったのよ」
「よかったね。これで神社も賑やかになってくるね」
「喜んでもいられないわ。依頼が増えれば休みが減っちゃうじゃない。 働くのは嫌いなの」
「はは…霊夢らしいね」
「それに、菫が問題とか異変を解決してくれれば、わざわざ私が出向く必要も無くなるしね。もっと頑張んなさい」
「ちょっと、丸投げじゃんか…まぁでも、それが僕の役割だしね。もっと頑張るよ」
仕事放棄宣言を堂々と行う巫女と、その仕事を笑顔で引き受ける人妖。
「じゃあそろそろ行くよ。いろんなとこで世話になったからね。魔理沙と霖之助によろしく言っておいて」
「えぇわかったわ」
「橙。行くよ」
「はぁい」
橙と手をつなぎ、菫は宙へ浮かぶ。『またね』と霊夢に別れを告げ、次なる場所へと飛翔した。
「たくましくなったわね」
かつての菫を想い返しながら、霊夢は呟く。久しぶりに会った菫は、見違えるほど強く優しく成長していた。
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妖怪の山。温泉。湯煙の奥で、二つの影が揺らめいていた。
「だいぶ掛かったな。河童の技術をもってしても難しい一品だったのか?」
「そうだね~。要求がとにかく難しかったね~。やったことなかったしね~」
「にとり。お前ちょっと飲み過ぎだぞ。あとのぼせてきてるんじゃないのか?」
「大丈夫だって~。一仕事やり遂げたから気が抜けてるだけだよ~」
「だからって昼間から飲むのはやはりおかしいだろ。そろそろ上がるぞ」
「え~~。まだ浸かろうよ椛ぃ~」
―河城にとり―
河に住む天才エンジニア。妖怪の山の河童のリーダー的存在。
―犬走椛―
使いっぱしりの下っ端天狗。妖怪の山の警備部隊の前線担当。
「せっかくの休日が……だめだ。うちものぼせてきたし、あんたももう潮時だ」
椛がにとりを温泉から引っ張り出そうとしたとき、誰かが訪れる。
「おいお前。早く服を着ろー」
「ん? なんだ橙じゃないか。どうしたんだ?」
温泉の縁の岩に、橙が猫のように座っていた。
「菫が来てるんだよ。裸だと話せないから、服着てくれって」
「あ~そうなのか? 服な。ちょっと待ってろ」
椛はにとりを抱えて温泉から出ると、素早く自分とにとりの体を拭いて服を着た。
「もういいぞ」
「菫~。もういいって」
橙が呼ぶと、湯煙の奥から申し訳なさそうな顔をした菫が出てきた。
「や、やぁ久しぶり。二人とも元気だった?」
「あぁ。うちもにとりも元気だ。それよりも菫、早く慣れたらどうだ? 裸ぐらいで何をそんなに気にするんだ?」
「う~ん。記憶にはないんだけど、体がなんか拒否するような反応をするんだよね」
妖怪の山には大きな温泉がある。ここで修行をしていた際にも、みんなと一緒に温泉に入ることに抵抗があった。
「お前は特殊な存在だからな。でも、紫は何ともないって言ってたんだろ?」
「うん。でもすんごい笑ってた」
菫は以前、この状態のことを紫に相談したことがあった。心配することは無いという言葉とは裏腹に、紫は爆笑していた。
「あれは何を考えてるか分からんからな。そんなことより、何をしに来たんだ? 温泉か?」
「それもいいかもね。でも今日は、修行のお礼をしに来たんだよ」
「そうか。だが、そんなことをしなくてもお前は毎回礼をしていたじゃないか」
「そうなんだけどね。一応全部の修行が終わったし、成果を見せるっていう意味もあるかな。後は…」
菫はふやけているにとりの方を見る。
「お願いしていたアレを受け取りに来たんだ」
「アレ? あ、刀のことか」
「刀!?」
単語を聞いた瞬間、にとりが突然跳ね起きた。
「おいにとり。もう大丈夫なのか?」
「寝てられないさ。あたいの最高傑作を受け取りに来たんだろ?」
にとりは興奮した状態で菫の方を見る。
「え、あぁ。そう。そうだよ。刀を受け取りに来たんだ」
「ちょっと待ってな。すぐに持ってくる」
「……橙。悪いけどついて行ってあげて」
「はぁい」
頭は起きてそうだが体がふらついていたため、念の為に橙を同行させる。
「お前はどんな刀を要求したんだ? 何度か聞いたんだが、よく理解できなくてな」
「ん? そうだね、簡単に言えば僕の妖力に共鳴する刀をお願いしたんだよ」
「共鳴?」
「僕の能力を刀にも適応できるようにしたっていう方がいいかな。折れても元に戻るみたいな」
「ほぅ。なるほどな。だからあんなに頭を悩ませていたのか」
椛が納得の表情を浮かべる。しばらくして、橙とにとりの話し声が聞こえてきた。
「おかえり。酔いは醒めた?」
「逆に燃えて来たね。ついに、ついにお披露目するときが来た!」
「興奮してるね。橙もおかえり、ありがとね」
「うん!」
橙は菫の横に立って服の袖を掴みながら尋ねる。
「あれがそう? 菫の刀?」
「そうだよ。前に話したやつね」
橙はにとりと共に持ってきた包みを、興味津々の様子で見つめていた。
「やぁやぁ皆さん! とくとご覧あれ!!」
にとりが結び目を解き、勢いよく包みを剥がす。そこには、何の変哲もない刀が一振り。
「これが…特に特徴的なところは無いな」
「椛~見る目が無いね~。この美しい反りと紋様が見えないの?」
「すごい…綺麗だ。持ってみてもいい?」
「いいともさ。もうあんたの物なんだから。好きにするといいさ」
にとりは刀を菫の方に差し出す。菫が刀を握った瞬間、菫の体内の妖力と刀の妖力が一つになったような感覚が起こった。
「まるで体の一部みたいだ」
「いい表現だね。これは妖刀だから、内部に妖力が宿ってる。それがあんたのと共鳴したね」
にとりは満足そうに頷き、持ってきたもう一つの包みを広げる。
「それは?」
「これは鞘だよ。こっちも特別製。性能は刀の方とおんなじで、妖力と共鳴するよ」
「…ありがとう」
菫は刀と鞘に見惚れながら礼を述べた。ゆっくりと、そして流れるような動作で刀身を鞘に納めた。
「様になっているな。よく鍛えられている」
「妖夢にしごかれたからね。当然さ」
「お前と反射訓練をやった時が懐かしいな。また一戦交えよう」
「あたいも! また実験台になって~」
「あぁ! またやろう」
「菫。鬼の所とかも行くの?」
橙が菫の服を引っ張りながら尋ねる。
「そうしたいけど、出来れば今日中に全部回りたいから、別のとこへ行こうかな」
「名残惜しいな。まぁまた来てくれ。次はどこへ?」
「次は冥界に行くよ。白玉楼でお世話になったからね」
菫は橙の手を握り、飛翔の準備をした。
「じゃあ二人ともまたね。他の皆にもよろしく伝えておいて」
「あぁ、伝えておこう」
「またね~。刀づくり楽しかったよ~」
橙と共に手を振り、菫は空へと翔け上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
~続く~




