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王妃の手紙

 浴室でバスタブの中に浸かってリラックスしていると、メアリー=アンが入ってきた。何やら慌てた様子で、栗色のくるんとカールした前髪を乱している。


「旦那さまがお呼びです。至急夫婦の寝室に来るようにとのことでございます」

 メアリー=アンが言った。


 ポールは手に封蝋ふうろうのついた羊皮紙を握ってメランコリックな顔をしている。


「王が死んだそうだ。クラリッサが手紙をよこした」


「まあ、痛ましい……」


 けれど、私の声はあまり悲しそうには響かなかった。結局王など、私にとっては赤の他人でしかない。一度も会ったことがないのだし。


 風邪をひいて寝込んだかと思ったら、あっという間に死んでしまったというのだ。王がまだ若く、健康だっただけに宮廷での衝撃も大きかったとか。


「宮廷に行ってやらなければならないよ。姉は幼い子どもを抱えて一人きりなんだ……」

 ポールは憂鬱そうにそんなことを言う。


 私は手紙を読んだ。


……ポール、急いで宮廷に来てちょうだい。ロバートを守ってやらなければならないわ。まだ幼いのに王冠を継ぐなんて。あなたの助けが必要だわ。それから、優しくて賢いキャシーの友情も必要なの。領地はフィーリアに任せて一家で来てください(アンとレオも連れて)。宮殿に部屋を用意しておきます……



 王は死んだ。クラリッサがこの領地を去り、宮廷に帰った後に。ダリアはポールから離れ、王の愛人になった。そして私はポールの妻に……


 キャシーの友情も必要なの……


 クラリッサの手紙の文句が、頭の中で繰り返し響いた。以前王妃は私の前で友情という言葉を使ったのだ……

 

 私は雪そりに乗り込みながら考えていた。隣には侍女のメアリー=アンが座っている。栗色の髪の可愛らしい女の子だ。双子たちは寒い中、隣同士に座らされて不機嫌な顔をしている。アンは白のファーのついた、真っ赤なマントを肩にかけていた。ポールは一人背筋を正して、先頭で馬にまたがっている……


 やがてそりが動き出した。なだからな白い丘がどこまでも続いている。粉雪がまっていた。


 いや、考え過ぎだろう。クラリッサが何か王の死に関与したのではないかと思うなど……

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