経緯
私がそこへ着いた時、もう手遅れだった。
私は、じっと彼を見つめることしか出来なかった…。
旅、と、呟いてみる。
目の前には、中庭に沿って作られた、豪華な廊下が続いていた。
最近は、何もかもつまらない。勉強も、剣術も、弓術も…。
そんな気持ちから、ふと出た呟きだった。
俺は、ある貴族の三男だ。1番上の兄上が成人して、父上の跡を継いだら、きっと軍にでも入れられるのだろう。
「銃」という革新的な武器が開発されてから、はや50年。
初めは一発撃つのに30秒もかかった銃だったが、今では2秒もかからない。
そんな銃は、俺は嫌いではない。
何となくロマンがあったし、俺が唯一夢中になっていたものだったからだ。
しかしそれでも、軍には行きたくなかった。
しょうもない死に方をしたくなかった。
「………」
努めて無表情で、廊下を歩く。
途中、何人かの従者とすれ違った。
しかし、誰も俺と目を合わせない。
あいつらは皆、父上か兄上の従者だ。
残念ながら、俺に従者は付いていない。
そう考えると、なんだか虚しくなって、表情が崩れそうになった。
いけない、こんなことは……
「…旅」
もう一度、呟いてみる。
旅。
旅か。
………
…別に、誰も気にしないよな。
数日後、深夜
「よし、こんなもんか。」
俺は簡単に支度を整え、最後に愛銃であるカザリア99を担ぐと、満月が照らす中、館を抜け出した。
これで、自由だ。
ーーーーーーーーーーーーーーーーー
最初はどこへゆこうか。近場の村?それとも汽車に乗ってできるだけ遠くまで?
全部、自由なんだ!
「ひゃっほーー!」
美しい夜空に、俺の叫び声が響いた。