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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

戦争と平和、そして

作者: initialK

自分なりには頑張って書いたので、最後まで読んでくれると幸いです!


20■■年、国は無法地帯と化した。町中は反政府軍で溢れ、平和も昔のものとなった。


そんな中、特殊部隊のスナイパーチームに一人、ジャベリンと呼ばれる男が編入された。


「入隊して早速だが、お前は彼女、ノアと組んでもらう。彼女は年齢こそ若いが腕は確かだ。安心しろ」


俺はノアを見る。白く短い髪の毛は輝いていて、センター分けの髪の毛の間から水色の瞳がのぞいていた。彼女はまだ小さく、昔は友達と仲良く町中を歩いていたのであろう。

彼女は俺をちらっと見ただけでふいっと目を逸らしてしまった。


〜数日後〜


俺はビルの屋上に移動する。すると、ノアが既に屋上の角に寝そべって偵察をしていた。俺も彼女の横に寝そべる。

彼女は俺を横目で見ると

「よろしく…」

それだけを言った。

「よろしく」

俺はそう返す。

彼女は小さく頷き、スコープを凝視する。

「私は狙撃に集中するから、お前は周りを見て」

彼女は冷たく言う。

「あぁわかった」


「距離1200メートル。風速東から12…少し難しいか…」

彼女が独り言のようにつぶやく。

「アンタならやれるさ」


「…そう」


彼女は俺の励ましに短く反応した。


彼女は引き金に静かに触れ、ゆっくり力を込めていく。

1発の銃声が響き渡り、弾丸は弧を描いて飛んでいく。遠くの窓が割れ、中で血しぶきが舞うのを双眼鏡越しに見た。


「任務完了」


彼女がつぶやく。俺と彼女は立ち上がり、素早くその場を離れる。


「よし、終わったな。早く離脱するぞ」


「了解。経路は確保してある。ついてこい」


「了解」

俺は彼女の後に続く。


「…ありがとう」


彼女が突然足を止めて言う。

「…どうしたんだ?」


「いや…なんでもない」


彼女は心臓の鼓動が速まるのを感じたが、無視した。



前哨基地に戻り、俺たちは少しの休憩をしている。俺は、少し疑問に思ったことを質問してみる。


「なぁ、アンタはずっと一人だったのか?」

彼女は顔を上げる。


「…私?私は…ずっと、一人だった」

彼女は少し悲しそうな顔をしたが、すぐ無表情に戻った。

「そうか…」



「そんなことより、明日のことだ。明日はどうやら難しい任務らしいから。気を引き締めていくぞ」


彼女はすぐ仕事の話題にもどした。彼女の目は鋭かった。


「了解」


俺も短く答える。



少し寝て起きると、もう日が昇っていた。周りを見るとノアが自身の銃の整備をしていた。彼女はМ200を大切そうに扱い、銃身を拭いていく。その時、目を疑うような光景があった。


「おいアンタ…」

俺は咄嗟に彼女を呼んだ。

彼女はぴくっと反応し振り向く。


「何…?」


彼女は答える。


「その傷…」

彼女は咄嗟にジャケットで赤くなった左手の包帯を隠す。


「見せてみろ」


「…」


彼女は無視しようとしたが俺の強い目線に渋々左手の包帯を外した。俺はその状態に驚愕した。傷は深く、肉が露出していた。俺は彼女の目を咄嗟に見やる。


「アンタ…馬鹿か?こんな怪我をしてるのに前線に出るなんて?」


「黙れ、お前には関係ない。まだ戦えてるからそれでいい、すぐ治る」


「自分を大切にしろ。今前哨基地に戻れ」


「嫌だ」


「戻れ」


「嫌だって言ってるんだ。これくらい…平気だ」


彼女は痛みに一瞬顔をしかめ、急いで真顔になった。明らかに無理をしていた。


「俺は無理をするやつが一番嫌いなんだ。もう一度言う。戻れ。この任務は俺単独でやる。いいか?」


「…。お前も十分馬鹿だよ。そんな任務を一人だなんて」


「アンタは少なくともやってきただろう?」


「…わかった。戻る。それでいい?」


彼女は不機嫌そうに立ち上がり、歩いていく。

彼女は立ち止まり

「気をつけろよ」

そうぼそっと言った。




俺は集合場所のビルに行ったが。不思議な感覚に襲われる。複数人が俺を殺そうとしている…。罠か。

俺は雰囲気で罠に気づいた。どうして作戦がバレたかは分からないが、早いうちに逃げたほうがいいようだ。


「分が悪いな。クソが」


俺はホルスターからG17を取り出す。デスクの影から出てきた人物と目が合う。それは銃を構えていて、明らかに俺を殺そうとしていた。俺は素早く銃を構え、それの腹を撃ち抜く。戦闘不能になるだけで十分だ。

その銃声が上がった瞬間後ろから気配を感じて急いで振り返った。その瞬間。窓ガラスを突き破ってきた弾丸が後ろの敵を撃ち抜いた。


「馬鹿野郎…。何ついてきてんだ」


俺は無線をつなぎ、反対側のビルの窓を見る。白い髪の毛がなびくのが見えた。


『うるさい。任務中だ』


「戻れと言ったよな」


『私がいなかったらお前は死んでた』


「…わかった。後でちゃんと治療を受けろよ」


彼女は黙って無線を切った。


「俺は近くの敵を排除していく。」


『了解』


俺はビルの中を走り、降りていく。できる限り止まらぬように。敵が途中途中にでてくるが、俺が全員始末していった。


「これじゃあ分が悪い。そちらに移動する」


『了解』


「クソ、敵だ隠れー。だぁ!こっちにもいやがった!」


ザザザと彼の無線がノイズに包まれる


「おい、ジャベリン?返事をしろ」


彼女は冷静さを保っていたが、手が震えていた。彼女の心の中は不安で一杯だった。彼女はできる限り震えを抑え、彼のいるビルの中の敵を狙撃していく。


『あぁ、痛いな。少しやられた。任務に支障はない。続ける』


「了解」

彼女は少し震えた声で答えた。

(任務に支障はないって…馬鹿。無理するやつは嫌いだと言ってるくせに自分は無理して)

彼女は彼の矛盾に怒りを覚えたが。なぜか無線が回復した安堵に包まれた。


『改めて、そちらに移動する』


彼は短くそういい、無線を切った。私は周りを見渡したが、敵は見当たらない。いや、私はМ200を置きっぱにし寝そべった状態から仰向けに回転してホルスターからМ1911を取り出す。敵が私がいる部屋の壁から顔を出してきて、目が合った瞬間私は引き金を引いた。バスっと敵の頭に穴があき、倒れる。

彼女は急いでМ200を構え直し、ジャベリンを見つけ出す。彼女の息は震えていた。



「そちらの階に上がってきた。敵がいる、近距離戦に備えろ」


『了解』


彼女は短く答えた。

足音が複数聞こえてきて、俺は銃を構え直す。敵が次々と出てくる。俺はノアのいる部屋に入る。彼女はデスクの裏に隠れて息を潜めていた。彼女と目が合うと手信号で敵がいることを知らせた。俺は身を乗り出し敵に向けて撃つ。敵はそれに反応して、集まってくる。


「ノア!聞こえるか?応戦しないのか!?」


「いや…私は…」


彼女は少し顔が青ざめていた。まさかコイツ…拳銃が扱えないのか?いや、そんなことはないはずだ。怖いのか?彼女は銃を胸に当て、息を整えていた。俺は考えながら敵に弾を放っていく。


「クッソ弾切れだ!」


「ジャベリン!」


彼女は突然俺に話しかける。俺は横目で見ると、彼女はデスクから頭を少し出して銃を掲げていた。


「コレを使え!」


彼女はその銃を勢いよく投げた。俺はそれをノールックでキャッチし

「ありがたい!アンタの銃、使わせていただくぞ!」


彼女は少し頷いた。

М1911は弾が少ない。大事に使わないと。


「ノア!普通に守りきれないから離脱するぞ!経路を見つけろ!」


「了解」


「俺が制圧射撃する、その間に廊下にでろ」


「了解」


彼女は頷いた。

俺は身を乗り出し最後の6発を一気に撃つ。

敵の銃撃が弱まり、彼女はその隙に部屋から脱出する。その後に俺も部屋からでる。

二人で走ってビルを抜ける。その瞬間俺の視界がぐらついた。あの時負った傷がひどかったらしい、貧血になっていた。


「馬鹿。コレだから無理するやつは嫌いなんだ」


ノアが肩を支え、一緒に走っていく。身長差があるから少し走りづらい。


「経路が分かったから行くぞ、気をしっかりしろよ」


「あぁ、わかってる」



数十分後、全力の持久走が終わった。


俺は疲弊して、その場に倒れ込んだ。その時素早くノアが俺の傷口を治療する。


「本当に馬鹿。私には無理するなと言ったくせに自分は無理するなんて。私、そういう人嫌いだから」


彼女は顔の汗を拭いながら冷静に言う。しかし、悲しさが滲み出ていた。

俺の治療が終わった後、彼女は俺に言われた通り、左腕の包帯も新しく巻き出した。

その手つきは慣れているようだった。


「そういえば」


彼女が言葉に反応して手を止める。

「アンタ、いくつなんだ?」


彼女はきょとんとした表情を浮かべた。

そして、少し考えて

「数えたこともなかったし。誕生日も知らない。そんなのは、戦争にも関係ないからな。考える必要もない」


「…」

彼女は当たり前かのように語った。まさか年齢までも分からないなんて。

「私は戦争孤児だったから、多分どこかで拾われたんだよ」


「…そうか」

俺はそれだけ言うと、黙ってしばらくの沈黙が続いた。


気づけば日は落ち、月が出ていた。


「ノア」


俺は彼女の名前を呼ぶ


「何だ?」

彼女の鋭い目が月明かりに反射し水色に光る。それが俺を見ている。


「アンタは、どうしてそんなに素直にならないんだ?」


彼女は少し俯き黙る


「素直…?そんなもの、任務には必要ない」


「どうしてそんなに戦争のことしか考えないんだ?」


「私は、戦争しか知らないんだよ。生まれた時も。今も。私は女だが、ちゃんと女として行きたことがない。どうすればいいかも」


「じゃあ、戦争が終わったらどうするんだ?」


「戦争…終わる…?戦争って終わるのか?そしたら…どうするんだ…私は…。なぁ、どうしたらいいんだ?女ってどんな生活をするんだ?」


彼女の不安そうな言葉に俺は心が強く締め付けられた。こんな少女が戦争の中に育ち、戦争のために生きているだなんて。


俺は彼女の頭の上に手を置き、撫でる。彼女は驚いた反応をし、顔を赤くした。彼女は逃げようとしたが、抵抗をやめ、流れに身を任せた。俺は彼女の頭から手を離し、

「よく…頑張ったな。もう一人で抱え込むな。そうだな…戦争が終わったら、俺が全部教えてやるさ。アンタが飽きるまでな」


「わかった…。なぁ、平和ってなんだ?」

彼女は俺に質問をする。

「そうだな…人と人が善良な心で助け合えるようになったら平和って言えるのかな」


「そうなのか…?」

彼女は理解できないような顔をし、平和について考えていた。


少しの静寂の後、迎えのヘリの音がやってきた。

ヘリの中である会話をした。昔話だ。俺と彼女の。


「何か、昔話をしないか?子供の頃の」


「昔話?そんな面白いのはないぞ、私は、昔村で生まれて、友達と楽しく遊んでた。だけど、敵が村にやってきて、皆、殺された」


彼女は無表情だったが少し涙を浮かべた。


「それで、私は生き残って、この銃に巡り合った」

彼女はМ200を優しく撫でた。

「そうだったのか」


「じゃあ、お前はどうなんだ?」


「俺か?俺も面白い話はないが、この国のもうちょっと北の町に生まれて、暮らしてたら敵が攻め込んできて、同じく、皆死んだ。運命なのか分からないが、この銃を拾ったんだ」

俺はG17を見つめた。


「同じ…なんだ…。私も、ジャベリンも、大切なものを失ったんだ」


彼女は悲しそうな、嬉しそうな表情をしていた。その時の彼女は穏やかで、優しかった。



ノアと俺は当然治療を受け、二人とも上司に無理するな馬鹿野郎とこっぴどく叱られた。そして、治療のために数日の休暇をもらえた。


最初の数日は基地で過ごしたが、ある考えが浮かんできた。


「ノア」

同室の彼女に話しかける。


「どうしたんだ?」


彼女は俺を見る。


「せっかくの休暇だ、明日は最終日だし、よければ外に行ってみるか?」


「外か…わかった行ってみる。行こう」


彼女の表情が少し明るくなった気がした。




ジャベリンに誘われて。街に行くことになった。正直、街っていうものがほとんど廃墟でしか見たことがなくて、人がいるだなんて想像がつかない。

ジャベリンに誘われたから、少し楽しみなのかも。


〜翌日〜


ノアは大量の人間が出す騒音に落ち着きがなくなっていた。彼女は万が一のために持ってきていたМ1911のホルスターに手を触れ、心を落ち着かせる。

(何だこの人の量は…軍よりも多いのか…?)


「あぁ、お待たせ、待ったか?」


俺が到着すると彼女はずっと周りをキョロキョロしていた。彼女は不安げに見えた。

「落ち着け、ここは誰もアンタのことを傷つけはしない」

続けて言う

「ここが俺の住んでた世界だよ」


「ここがか…」


彼女は周りを見渡し、人の多さに立ちすくんでしまってどこに行こうか分からないようだ。俺はまずはカフェに案内した。


「…ここはどういうところだ?どんな任務をやるんだ?」


俺は彼女の発言に悲しくなった。


「おい、今は戦争のことは忘れろ。ここじゃ戦争の話はご法度だ」


「なるほど…そんなルールが……」


ルールではないがここはちょっと嘘を言わせてもらう。彼女は戦争しか知らないからな。

彼女はメニュー表を広げて顔を顰めた。


「なんだ…これ…何をすればいいんだ…?」


「まぁ待ってろ、俺が手本を見せる」


そう言って近くの店員を呼び止め、2人分の注文をする。


「私は1人でできた」


彼女が不機嫌そうにこちらを見る。


「じゃあ、ちょっとメニューをみてみろ」


「嫌だ、頭が痛くなる」


「ほらな」


「うー…」


彼女は不機嫌そうだった。


数分後、二杯のコーヒーが渡された。勿論片方は甘いやつだ。

彼女は受け取ったらすぐに口にして、ビクッと跳ね上がる。


「あたっ!なんだこれは!?」


「馬鹿野郎、アッツアツのやつを直で行くやつがいるか。冷ますんだよ、息を吹きかけろ」


「こ、こうか?」


彼女は不器用に息を吹きかけ、こっちを見る。


「あぁ、バッチリだ」



コーヒーを楽しんだ後、店を出て彼女と話す。


「次はどこを行くんだ?」


彼女は少しワクワクしているようだった。これが本来の姿なのだ。少女としての。


「じゃあ、その服装はちょっとアレだからな、服屋に行こう」


彼女は自分の格好に目を向ける。Tシャツに軍の長ズボン。お世辞でもいい服装とはいえなかった。こうして俺たちは服屋に入店した。色とりどりな服にノアは驚き、立ちすくんでしまった。


「私に何が似合うんだ…?」


俺はそうだなと悩む…正直俺もファッションのことはサッパリだ。俺も、戦争で育ったのだからな。


彼女は様々な服を手にとっては戻していた。


「1回試着してみるか?」


「試着…そんなものがあるのか?」


「とにかく1回試してみろ」


彼女は服を何着か持って試着室へ入っていった。

彼女の布が擦れる音がカーテン越しに聞こえてくる。


「…馬鹿野郎」


俺は自分自身に言った。


すると、カーテンがあき、ノアが出てくる。


「どうかな?」


あの服とは打って変わって可愛らしくはなったが、彼女らしいかと言われれば何かが違う…。


「なんだろう…こう、もう一捻り」


「どういうことだよ、まぁいい、もう一個試す」


彼女はカーテンを閉め、着替え始めた。


「これはどうかな…?左腕の傷が目立っちゃうけど…」

彼女は左腕をそっと隠した。だが、


「おぉ…」


「おぉ…?」


今回はシンプルなワンピースだが、彼女の魅力を引き立てている。これは…完璧じゃないか?


「いいな、似合ってるぞ」


「ほ、ほんとか?」


彼女は安心したように息を吐いた。


「ならコレがいい」


いつもの真顔だった彼女が少し微笑んだ。それはまるで、立派な女の子だ。俺も少し、口角が上がった。

だが、彼女の足にはまだ、ホルスターがついていた。彼女は平和という存在を信じきれていないようだ。

「…俺が変える」


「ん?どうしたんだ?」

彼女はどこか不安げに俺を見た。


「いや、何でもない」

俺は悲しそうな目で彼女を見てしまい、不安にさせてしまった。



彼女が片付けをしている間にこっそりと俺は会計を済ませた。


「あれ…?さっきみたいにお金を出さないのか?」


「あぁ、これはいいんだ」


「いいって…もしかしてタダなのか!?」


「まぁ、そういうことだな」


そういうことにしておこう。彼女が真相を知る頃には平和も訪れているだろう。俺は店員に人差し指を立てた。店員はにこやかに首を縦に振った。


「じゃあ、次行こうぜ」


彼女は、ニコッと微笑んだ。



「そうだな、どこか行きたいところはあるか?」


「行きたいところか…あ、ここを見渡したい」


「職業病がでてるぞ。」


「まぁいいんだよ、行きたいんだ」


俺たちは一番高いビルの屋上へやってきた。そこからは砂漠、海、山、夕焼け、街。すべてが見えた。

彼女は手すりから身を乗り出し、周りの景色を堪能している。


「うわー…すげぇな街って。こんなにでかくて。全部に人間がいるのか」


彼女は幼い子供みたいに周りを見渡す。

彼女が俺に振り返る。遠心力でワンピースと白い髪の毛がなびき、太陽の光に反射して、キラッと光る。こちらを振り返った時、太陽が逆光になって顔が見えにくいが、笑っているようだった。

「ありがとな。誘ってくれて。私、こんな所、知らなかった。ずっと戦争に行ってたから。だから、また、一緒に行ってくれるか?」


彼女の笑顔は純粋無垢な子供だった。


「あぁ、勿論だ。いくらでも、付き合ってやる」


俺たちは束の間の『平和』を楽しんだ。




『任務を説明する。今回は敵司令官の暗殺任務だ。先駆者が場所を把握して、いいスポットを見つけてくれたようだ。お前らは敵地に侵入し、敵司令官を殺害しろ。その後直ぐに味方海兵隊が上陸する。』


「「了解」」


『 生還 を祈る』




俺たち敵地の奥に侵入している。この作戦でこの戦争が終わるかもしれない。そしたらー。いや、まだ考えるのは辞めておこう。


「おい、緊張してるのか?」


ノアが俺の顔を覗き込んでくる。

「この作戦で、戦争の勝敗が決まるかもしれないからな。緊張だってするさ」


「これが終わったら、平和になれるのか?」


「そうだ。だから、本気を出す」


彼女は俺のやる気を未だ理解していなかった。


俺たちはスポットに着き、銃を展開しだす。

「目標が見えた。油断してる。馬鹿だね」


彼女は引き金を引き、素早く銃を畳みだす。


「これで…戦争は終わったのか?」


「分からないが…そうだろうな」


俺たちは赤くなった窓を見る。

「なら、早く離脱しよう」


彼女は俺を急かす。

「わかった、そんなに急ぐな、時間はある……!?」


特徴的な風切り音が鳴り響き、俺たちの数十メートル横で炸裂する。激しい轟音が耳をつんざく。

大きい銃声のせいで、だいたいの場所がバレてしまったのだろう。敵は、奇襲を予知していて、態勢を整えていた。このままでは敵兵が来るのも時間の問題だ。


「クソ!迫撃砲だ!ノア!逃げるぞ!」


「了解!」


俺たちは森の中を駆けていく。隣の木が折れ、倒れてくる。それをギリギリで回避する。地面のぬかるみに足を取られそうになっても、ノアが支えてくれる。逆に彼女が遅れそうになった時、俺がノアの手を引いた。

順調に逃げてきたと思ったその時

「グッ!」

俺のすぐ横で炸裂した弾が俺の体を浮かす。そして、2人して倒れ、坂道を転げ落ちて止まる。



ノアは起き上がり、耳鳴りに耐えながらジャベリンの姿を探す。

「生きてるか…!?」


彼女の掠れた叫び声が遠くで聞こえる。大きい音のせいで耳がやられたのか耳鳴りがやまない。彼女が俺を覗き込んでいるのを回復しだした視界で見た。


「ジャベリン!おい!ジャベリン!」


彼女は俺を見つけ出し、駆け寄ってくる。周りは爆発音でまさにカオス状態だ。

俺は立ち上がろうとしたが、なぜか力が入らない。その後、お腹に激痛が走った。


「クソ…まだ…俺は……ノアと…一緒に……!」

彼女は息を呑んだ。心臓の音がうるさくなり、彼女は不安で一杯になる。彼の腹には大きな裂傷ができていた。


「動くな!治療する!」


彼女は周りが爆発する中。治療を開始した。

彼女は黙って布を強く押し当て、止血しようとする。直ぐに布が真っ赤に染まり、彼女の指も赤く染まる


「ノア…!俺を置いて遮蔽物に行け!ここじゃアンタも死ぬぞ!」

俺が爆発音に掻き消されそうになりながらも必死に彼女にそう言うと、彼女ら怒ったようにこちらを見つめた。


「うるさい…黙って、ならお前も連れて行く」

彼女の声は、小さかったが、澄んでいて、爆音の中でも不思議と聞き取れた。彼女は俺を引っ張り上げ、無理やり背中に乗せる。

彼女は俺を背負って走り出す。彼女は、М200を捨てて走っていく。あれは、彼女の過去が詰まっているはずなのに、俺なんかのために。


「クソ…アンタ、大事なものを……」


「いい…いいから」


彼女は無言で走っていく。

「おい、進路を西へ変えろ、海に出て海兵隊に助けを求められる」


「了解」


そのやり取りをした瞬間、真上で風切り音が聞こえた。俺がマズイと言おうとした瞬間。彼女が俺を瞬時に降ろし、音がする方に寝そべる。


ドォォオオオオ!!


また爆発がおき、破片が飛んでくる。そのほとんどをノアの小さい背中が受けた。

彼女の声が漏れ、彼女がゆっくりと起き上がる。彼女は顔をしかめながら自身の背中を見る。

「平気…すぐ治る。」


俺は爆発音が響き渡る中ゆっくりと起き上がり彼女をビンタする。彼女の顔が大きくブレる。


「馬鹿野郎!!アンタが!アンタが俺を庇ってどうする!未来あるアンタが!どうしてそこまでする!?俺なんかよりアンタを心配しろ!!」


彼女は衝撃で目が見開かれる。ゆっくりと赤くなった頬を撫で、俺を見る。大声を出したからか、出血が早まる。

驚いた目は鋭くなり、俺を見る。その目は涙ぐんでいた。


「黙れ!!お前が!ジャベリンが!!いなかったら!誰が私のことを理解してくれるんだよ!!私はずっと孤独だった!ジャベリンが来てからはそうじゃない!それを大切にして何が悪い!!自分を犠牲にして英雄気取りか!?ふざけるな大バカ野郎!!私には、ジャベリンが必要なんだ!!だから…もう…離れないでくれよ…」


彼女はだんだん声が掠れていき、しまいには涙を流した。

俺は、黙り込んでしまった。彼女の気持ちが今やっと理解できたのかもしれない。


「…わかった。今だけ、ノアの為に、無理をしてくれるか?」


「…了解」

彼女は息を整え、感情を抑え込んだ。

彼女は血がにじんた背中に俺を乗せ、海の方向へ走り出す。次第に迫撃が止み、彼女の息遣いと足音だけになる。


「おぉ…海だ…海に出たぞ…」


「そうか…よかっ…たな…」


俺は安堵と同時に意識が遠のく。

彼女はそれに気づき俺を降ろす。

俺は薄れ行く意識の中、グーを彼女の前に差し出した。


「…平…和……だ」


彼女はその差し出されたグーに応え、彼女は泣きそうになりながらもグーを差し出し、コンっと当てる。

「私は…お前がいないと平和の生き方を知らないからな、生きろ。私の為に。お前が私を思うなら生きろ」

俺は少し微笑み、目を閉じた。


「…馬鹿。…馬鹿野郎。気絶してどうする?私も無理する人は嫌いだ。だけど、今だけは、今だけは無理をしろ!」

彼女がそう言っていたのを揺らぐ景色の中感じた。自分の意識が遠くなっていく。これで…平和が訪れる。


「おい…。約束したじゃんか、買い物、また行ってくれるって」

彼女は泣きながら彼に優しく、語りかけた。彼が聞いているかは分からない。



20年近く続いた戦争は司令官の死亡によって終わりを迎えた。犠牲者は計りしれず、現在も、行方不明者の捜索が行われている。



ある国西部の海岸


少女が1人、ワンピースを着て走る。そして、後ろを振り返り

「おーい!早く来いよ!」

彼女は笑顔で後ろの人物に叫ぶ。


「速いんだよ、置いていくな」

ジャベリン。そう呼ばれる人が後ろをついていく。


「だってよ、海だぞ!不思議だよな!こんなにでかい水たまりだぞ!」

彼女が左手を大きく回すと、傷があらわになる。

彼も、上着を脱ぐと大きいお腹の傷があらわになる。

二人とも。大きな代償を背負っている。だが、それを理解し、助け合っていく。それが平和だ。


俺は彼女のもとへ足早に歩いていった。




この海岸の内陸側、ぼろぼろになった建物の付近に、錆つき、草が巻きついたМ200がある。

曰く、それは失われた思い出らしい。



だが、そんなものはもう要らないのかもしれない。

興味本位で書いてみました。どんな評価が貰えるかは分かりませんが、恐らく伸びないでしょうね!()

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