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018 ガンダム/医神

【僕が一番上手く】フランクフルトスレ 352【ガンダムを使えるんだ!】

テンプレ以下略


レガト、天狗になる


名無しのフランクフルトファン

七節以降、まあ無敗ですが


名無しのフランクフルトファン

力に溺れすぎている


名無しのフランクフルトファン

お前のガンダム、命令無視しまくってるやないかい


名無しのフランクフルトファン

戦術、モモ


名無しのフランクフルトファン

何だったら戦略すらもモモが考えている節がある


名無しのフランクフルトファン

チームキャプテンの長谷川がいなけりゃお前、チーム空中分解だぞ


名無しのフランクフルトファン

実際この陣容を自由にできるとか、酔っても仕方なくない?

FW バイルング

MF 長谷川 カザーン ケプラー

DF マルクス ジニージャ カプルス

GK カラーン


+モモ

ゲインツ、ファルケン、ホークス、ワーケン


名無しのフランクフルトファン

一理ある


名無しのフランクフルトファン

恐らく世界一守備力がある


名無しのフランクフルトファン

恐らく世界一カウンター攻撃力がある


名無しのフランクフルトファン

トーナメントじゃ、絶対に当たりたくない相手だな


名無しのフランクフルトファン

だから、力に溺れたんや


名無しのフランクフルトファン

『モモを世界一上手く起用できるのは、私なんだ』

レガト監督、渾身の驕り


名無しのフランクフルトファン

バロサとバイエルン、IEMOに対する壮絶な煽り


名無しのフランクフルトファン

何だったら、そろそろモモもA代表が見えてくるので、日本代表監督に対する煽りでもあるぞ


名無しのフランクフルトファン

天パ少年みたいなことを言い出したレガト監督はどこに行くのか


名無しのフランクフルトファン

モモ≒ガンダムという解釈には同意するがね


名無しのフランクフルトファン

ガンダムだけじゃ、戦争は勝てんのですよ


名無しのフランクフルトファン

呪いの聖剣みたいな存在だな、モモ君


名無しのフランクフルトファン

モモ本人に責はないやろ


名無しのフランクフルトファン

俺らが言う事でも無いが、

バイエルンはどうしてモモを放出したんだ?


名無しのフランクフルトファン

バイエルンとしては、レアロに行くと思っとったらしい。


名無しのフランクフルトファン

あの時はレアロ監督が熱烈ラブコールしとったし、ボンゴもバロサに戻ると踏んでいたから妥当な判断ではあったな


なお、結果


名無しのフランクフルトファン

レアロのオーナーがモモ獲得にゴーサイン出さないと思わんだろ


名無しのフランクフルトファン

オーナーのとっちゃまが、『キミクニの野郎の孫がチームに入ってくることは許可できない』との事


名無しのフランクフルトファン

……初耳なのですが


名無しのフランクフルトファン

これって、知ってもいい情報?


名無しのフランクフルトファン

いや、機密情報


名無しのフランクフルトファン

ファッ!?


名無しのフランクフルトファン

俺らの命も危ない情報やんけ!




2015年 12月


ワシは学生である。

故に、学業もしなければならない。

時折、天界に行って勉学をするのは、そこでは時間経過が捻じ曲がるからである。

それはそれとして、

「……?」

「久しぶりじゃねえか、モモ」

「君/グスタフと会うのは久しぶりだ」

「連絡くらいは寄越すべきだな、モモ」


勉強をする時にはモダの家に来るわけだが、非常に珍しい事にそこにはヤダルと統一神もいる。

飲み会と言えばヤダルの家である。

無駄に広い上に、ほぼ無尽蔵に近い酒が置いてある。

戦神ヤダル契約神アルスに、酒神ボーバン水神インファが兄妹で居を構えているというやんごとない事情である。

なお、この四兄妹の内、男神はヤダルだけである。


「なんでヤダルと統一神がいるんじゃ?」

当然の疑問である。静寂と知を求めに来たら、居酒屋だった気分だ。

「いつも俺の家じゃねーか。たまにはな」

一切の過程を、ヤダルは省いた。

「飲めるならどこでも良かったけど。今回はここだったってことさ」

統一神の言葉には一切の情報が無い。

「ヤダルの家では今、女神達が酒宴を開いている。統一神様の奥方殿が主催だ。俺たちは、そこを追い出されてここで飲んでいる」

非常に簡潔に、情けない事情をモダが説明してくれた。


仕方ないのう。

勉強は後回しとして、ワシも飲むか。

駆けつけ一杯。一気に飲み干す。

「良い飲みっぷりじゃないか」

「うん。君/グスタフがモモとなっても、気風の良さは変わらないようだ」

「助かる。好きなだけ……と言うとこの面子じゃ際限が無さそうだ。適度に飲んでくれ」

ワシが一気に杯を空け、そして各々並々に杯を満たして、

『乾杯!』

ガシャン! と杯をぶつけてゴクリごくりと一気に飲み干した。


女神に追い出されたやつらは、磁力を持つらしい。

「すみませーん、俺もここで飲んでいいですかね?」

大樽を抱えて入って来たのは、火神レヴァーゼン。

ヤダルの義理の弟。水神インファの夫である。

「モダ」

「仕方あるまい。同志だ」

「恩に着るぜ。おおい、ゼン! 入って来いよ! ビッグゲストもいるぜ!」

統一神サプライズ付きとは恐れ入る。

恐れ入ったのはレヴァーゼンの方である。

入った瞬間に最敬礼だ。

統一神は鷹揚にブレイコウを言い渡した。

実際にブレイコウしているワシとモダとヤダルに、レヴァーゼンは信じられないものを見る目をした。


「モモ、そういや聞いてるか?」

「何をじゃ?」

「ヴーヴァのヤツ、地上で求愛されているらしいぞ?」

「……ッ! ガハッッハ! ありえんじゃろ!」

「俺も相手の正気を疑ったが、ヤダルの言う通りだ」

「嘘じゃろ?」

「へえ、僕/■■も興味あるね」

「姐さんに春が来たか?」

神界の酒を五杯も飲めば、皆遠慮は無くなるのだ。

話は馬神ヴーヴァの話題になった。初めはぎこちなかったレヴァーゼンも、今では一端の酔客である。

「あれ? ヴーヴァは獅子神からアプローチされてなかったか?」

「動物神全般から、だな。犬神を除いて」

「その辺りどうなんだい? モダ」

「獣神としては、各々の自由意思に任せる次第です、統一神様」

「上手く逃げたね」

「模範的回答とお認め下さい」


「そりゃあ、馬神が次期獣神という評価と一緒に考えるべきだよ」

そして、いらん客も来るものだ。

「インターグ。その手に持つ最上のワイン樽を慎重に置いた後、即座に回り右しろ」

「決して衝撃を与えることなく、な。そして即座に俺の家から出ていけ」

ド真面目な嫁がヤダルの家で宴会している隙に、ド畜生な知神がこちらにやってくることもある。

神界ネットは、ここが男どもの休み処であることを、あっという間に広めてしまっているらしい。

そのうち、奥さんが豊穣神をやっている商売神バイセールなんかもこっちに来るかもしれない。あちらが奥方殿主催なら、こちらは統一神主催なのであって、格は釣り合っているともいえる。


「インターグ。変なことをした瞬間に、貴様の首を即座に飛ばす。その条件で良いな?」

「いいとも。ただ飲みに来ただけなんだから」

「統一神?」

「インターグが良いって言ってるんだ。仮に一神が滅んでも、それは自業自得と言うやつさ」

「モモ」

「断ってどこかに行かれるよりも、ここで飲ました方が良い。ワシはそう判断した」

「……妥当だな」


「で、ヴーヴァが次期獣神ってのはどういうことだ?」

ヤダルはそこが気になる。モダも十分やっているだけに、次期神がどうのこうのというのは、時期尚早だ。そこには本人も気が付いていないが、モダを認めているだけに獣神を長くやれるだろうという贔屓目が混じっている。

「何って、決まっているじゃないか。モダが上司だと、ヴーヴァの結婚認可の権限が君にあると考えているからさ」

「んん? ヴーヴァのヤツには、テメーの結婚なんぞ、テメーで決めろって言ってあるんだが……まさか」

「察しの通り、彼女は君をダシにして結婚を断っているのさ」

ああ、と。

ワシとヤダルとレヴァーゼンから漏れた。

面倒ごとを他人に擦り付ける性分はここでも健在のようだ。


「だが、そりゃ、お前がここに来る理由にはならない。神前決闘でも何でもして、武で追い返す方法はいくらでもある」

「フフ、そうだね」

統一神は、まるで子供の喧嘩の行く末を見るような目をしている。

「モダ、いや、敢えてシシザと言ってやろう。神格が上がっているね、君」

インターグは鋭い視線をモダに向けた。

「“人間”も君の効果範囲になっている。医神は甚くご立腹だよ」

「シマを荒らされたってやつか」

「だから、ここに僕がいる」

“人もまた、動物の一部”

これはモダが現世に来てから持った認識である。

あちらの世界では、人間は“人間”である。

故に、モダは人間を治療することはできなかった。

だが、今では認識が変わっているため、“人間”すら治療の対象となる。

同じく二足歩行するエルフもドワーフも、魔人も獣人も。

神としての権能を拡大したモダは、間違いなくシマを荒らしているのである。

そして、インターグはそれを好まない。

医神と獣神の戦争が勃発することを、彼は好まない。

イタズラでは済まない、ガチ戦争に発展することを望まないからだ。

オモチャが少なることが、嫌だからである。

だから、彼は真剣にこの諍いの妥協点を探るべくこの場に来ているのだ。


「じゃあ、どうしろってんだよ」

「失礼するよ」

魔法神イグニカがエントリーした。

お前までくるのか。知神がここに来たのを警戒したのか?

だったら、その濃厚な蒸留酒の樽を持つ理由を説明してくれ。

「ブレイコウですので……ンンッ! 俺っち、イグニッチ。ハイ飲―んで吞んで飲―んで! クソ知神インターグ?」

「いただきますよ、イグニッチ?」

ゴッゴッゴッ

一升の蒸留酒を飲み干すか。侮れんな。

「返杯どうぞ、イグニッチ?」

「クソありがとう、クソ野郎インターグ?」

ゴッゴッゴッ

イグニカは真面目だ。クソまじめだ。

無礼講をインストールして、真面目にチャラ男を実行しようとしとる。

矛盾の塊のような存在と化しておる。

「俺っち、統一神トウイッチ。一杯飲ませてよ」

インターグもイグニカも汗がだらっだらに出ている。

それでリズムを崩さないやつらは、大したもの、かもしれない。

「統一し……トウイッチ? 行ける?」

「行ける行ける!」

統一神をぶっ潰したという最高の不名誉を被りたくない。

仕方ないな。

「俺っち、グスタッチ」

「モモじゃねーのか」

「開き直りはえーな、おい」

煩い外野はさて置き、場を冷めさせるのが最悪手じゃ。

「トウイッチくらい、“吞み潰せる”ぞ?」

戦争が始まった。


トウイッチもとい、統一神は床に沈んだ。

ワシも相応にダメージを負っている。水をがぶ飲みして、過剰循環でアルコールを変換して馬の様に小便を垂れ流して素面の顔である。ワインをお代わりじゃ。

「すまないな、グスタフ。正直、あのキャラはきつかった」

イグニカは相当無理をしていたらしい。

それを見ていたワシたちも正直きつかったので、全てがウィンウィンの結果じゃ。

「グスタフはやめよ。ワシはモモじゃ。そんでもって、お前さんが顔を出しに来たという事は」

「不本意だが、そこのクソと目的は同じだ。戦争の未然解消だな」

「で、二つ目の目的は?」

未然解消とやらで、高濃度アルコールを持ってくる理由はない。

「……俺だって、飲みたいときもある」

本音をゲロっちまった。それでこそ飲み会である。


知神と魔法神から聞いたところ。

医神は偉くご立腹である事と、とにかく怒っていることが分かった。

つまり、“怒ってはいるものの、解消する手段を決めていない”状態だという事である。

だから、交渉に長けたインターグと理性的で善良なイグニカが“落としどころ”をどうにでも設定できる、という状況ではあるらしいのだ。


「もっかい、神前裁判か?」

「そうなったら、お前の姉の引き抜き競争になるじゃねーか」

ヤダルとモダが、飲み屋のオッサン宜しく軽口を叩く。なお、一方は今回の当事者である。

「裁判してもどうにもならんじゃろ。神前決闘ならば」

「同じだね、モモ君。君/グスタフの引き抜き合戦になるだけだ」

いつの間にか復活した統一神が口を挟む。その口にチータラを差し出すと、美味そうにもぐもぐしている。威厳は無いのか?

「そもそも、あのバーサンが裁判だの決闘だのの結果を素直に受け入れますかね?」

「期待薄だな」

「真っ当に白黒つかないから、ここに来たんだよ」

医神をバーサン呼ばわりしたレヴァーゼンに、インターグとイグニカも同調する。

ふと思いついたことを言った。

「もしかしたら、ヤダルの家でも同じような事をやってるかもな」

「ああ……」

「あり得る」

現在の神界は素晴らしく均衡のとれた、平和な状況である。

女神の飲み会でクダを巻きまくる医神をなだめることも、解決策を考えることもあるだろう。何より、医神VS獣神なんて戦争が本格化すれば、ただでは済まない被害が発生することになる。何の益も無い諍いなど、無いに越したことは無いのだ。

「今、エリンってどこに居たっけ?」

非常に確認したくないことを、インターグが口走った。

「……ヴーヴァの所だ」

「で、ヴーヴァは?」

「ヤダル邸の宴会に参加中だ」

「……ついていってると思う?」

「十中八九」

もうすでに、あちらで神殺しが実行されているかもしれない。

さらばだ医神。おそらく、エーファ一派としてこちら側の面子になっているので、白昼堂々の暗殺劇となるだろう。

それはともかく。

「もし、亡くなっていたら、それは仕方ないのう」

問題が事前に解消するのであって、何より医神候補なんぞいくらでもいるので、どうにかなるじゃろう、とワシは気軽に言った。

統一神以外はみなドン引きしていたが、飲ませれば皆、“そうなったら仕方ないか”で再びどんちゃん騒ぎの無礼講となった。

問題の先送りともいう。


この飲み会で判明したことが、いくつかある。

一つ目、イグニカが愉快な酒豪であるという事。

「実はね、見たよ君の世界のアレコレ。魔術と魔法と術法を区別するのは、まあ、便宜的な言い換えではあるけども、その事に気が付いた天才が最近現れてね。彼女には加護を与えようと思って天啓を授けようと思ったが、何て言ったのだと思う? “私は人の身で、人のワザの中で研究シンリを追求しようと思います”とのことだ。何と素晴らしい高潔な魂か! でな、彼女の姿勢に感化された弟子がだね……」

ガッポガッポとクソほど度数の高い酒をクジラの如く飲み干しながら、あれやこれやと好きな人間について語っていく。その姿勢には感動すら覚える。

武神ヤダルを見てみろ。

ヤツの加護は半分くらい呪いの類である。

『お、こいつ見どころあるじゃねーか。加護あげたろ。そんでもって、試練はこれな』

で終わりである。酷いときには、

『いっちょ稽古つけてやるか。サービス精神は大切だよな』

で、瀕死の重傷を負わせて放置なんてザラである。本人は完全なる善意なのだから、尚の事質が悪い。


二つ目、レヴァーゼンの素性。

ヤダルの血縁の夫くらいにしか知らなかったのだが、竜神の四男坊で火精霊そのものと言う、激レアな存在であることが判明した。火神を名乗っているのは、彼以上に火を扱える存在がいないという、実に実力主義的な選定方法によるものらしい。

精霊とは自然そのものであるので、不滅の存在である。

そして、精霊存在となるのは、精霊界の気まぐれが大いに働くところである。

結果的に、レヴァーゼンは不滅の火炎竜神という、どこのチートキャラだよお前、という属性てんこ盛りの四男坊であることが判明した。

「しっかし、お前さんがすごいのは分かったが。良くヤダルが妹の結婚を許したな」

と、ワシが特大のお口スリップをしたときに、

「まだ許してねーよ」

「兄貴にはまだ勝てていません」

「“まだ”? まるでこれから先で勝てるみたいな言い方じゃねーか火トカゲ」

「そう言いましたよ、どっかの誰か(チラッ)に連敗中の兄貴」

「上等じゃねーか! 表出ろや!」

なお、ワシと家主モダと知神と魔法神と統一神という、理不尽極まりないチームによって、一瞬で沈静化された。

不滅と謂えども、無敵でも無敗でもないようだ。

「いやー、偶にはこういうのもいいもんだね」

一切、自身の権能を使わずに部下をボッコボコにした統一神は、今回のチームの闘いで満足げにそう言った。巻き添えで犠牲になったヤダルは只々不憫である。


「まいど、やってますかな?」

予想はしていたが、商売神バイセールがやってきた。

もう、飲み屋の暖簾をくぐって、『大将、まだやってるかい?』みたいな雰囲気である。

そのバイセールは、統一神に最敬礼はするものの、この場にいる事に全く驚いてはいない。

天界ネットワークは、ここが男子会であることを周知しているらしい。


流石、商売神である。

極上の酒に、極上の肴。

少し前に理不尽五人組(?)に暴力の極みを見せられたヤダルとレヴァーゼンも戦線復帰である。

その本人(本神)は、甲斐甲斐しく酒を注いで回っている。

バイセールは、戦闘能力ではこの場にいる誰にも勝てない。

どころか、十秒もしない内に負けるだろう。

だが、人間の世界で。もしくは、世界全体で商売に関わっている種族にとっては最高に近い信仰を得ている。彼の妻である豊穣神が農業と畜産を司る権能であることを考えると……言わずもがな、である。


「で、バイセールは今回の件でどう動いているんじゃ?」

「それは、次期補佐様のお言葉で?」

「いや、エリンの保護者としての言葉じゃ。ババアは死んだか?」

バイセールは口に含んだ酒を噴出した。

「……ッック。 死んでませんぞ」

笑いを堪える肩の微動を隠そうともせんな。情報は掴んでいると見ていいな。

「何で、死んでないんじゃ?」

ビクビクとバイセールが痙攣する。必死で笑いの波動に耐えているようだ。

その様子を見逃さないヤツがいる。

「モモ、貴様はエリンに何回殺されたか答えよ」

無駄に仰々しく。インターグがワシに聞いた。

「覚えておりません」

罪人のように、ワシは答えた。

もうこの時点で、ヤダルとモダの腹筋はヤバい域に達している。レヴァーゼンは、直視しては我慢できないとそっぽを向いている。直視して真顔で観察するのはイグニカである。自身に足りないお笑いを学ぼうとしているようだ。

「貴様が覚えていない……? なるほど、嘘はないようだ」

何処かの天命使のような口調で厳かに言う。

雑に似ている物まねに、レヴァーゼンは撃沈した。

「しかしですね、インターグ卿。ババアを殺害しなかったのは、何か理由があるかと愚考します」

“インターグ卿”でイグニカが沈み、“ババア”でヤダルが沈んだ。

「そうだな。バーセール次期統一神殿、発言を頼む」

「……エッ!!」

「明日から、君は統一神なんだ。僕/■は、明日からここに住むよ」

統一神の冗談に、モダの顔色が一気に真っ青になった。

「もう、やめじゃ。もったいぶるなよ、バイセール。ここにいるのは、酔っぱらった勢いで何するか分からん輩だと心得よ」

「ハッ! ……早くモモがこっちに来ればいいのに」

「何か言ったか?」

「いえ!」


千客万来。

ワシらが小芝居をしているうちに、モダの家は男神の巣窟と化した。

「今回の一件、一言申し上げたいことがありまして」

唯一ヴーヴァに求婚していない獣神、犬神アヌビスが、まあ大量のビール樽を抱えてやってきた。

「ようよう、やって来たぜ。って、何だこりゃ! アッ! ……この度は」

猫神ケーイットもやってきた。愛妻家であるので、あちら側にいると思ったが、『あそこで飲むなんて真っ平ごめんだぜ』とのこと。

「面白い宴会だと聞いた。足りるかな?」

山神ン・ガダも本当に、本当に大量の酒を持参して参上した。ほとんど自分が呑むためだ。


ここまでくると、作戦本部の様相を呈している。

ガダが作った円卓テーブルで、飲みながらの会議のようなものが始まった。

口火を切ったのはバイセールである。

「まず、一度の衝突は不可避です。その衝突の方法を、探っている状況であります」

医神ケイトのクソババアは、モダ許すまじ、と。

戦争を辞さないと言っているらしいが、誰もそんなものは望んでいない。

それは女神側もそうである。

「状況を整理しよう。小娘ババアがモダに対して戦争を仕掛けようとしている。理由は、自分のシマを荒らされたから。それでいいのかい?」

インターグにとっては、ケイトの方がクソガキである。年季が違うのだ。

そういう意味では、バイセールはクソガキ以下の年季であるが。

「それは、少々正確ではありません」

「ふうん?」

商売神にして、交渉神。

「落としどころを、“あちら”に用意させることです」

「そうだね」

「ちょっと待てよ。俺は、戦争だって聞いたぜ?」

ケーイットが口を挟む。

「ふ……ケーイット。こちらから戦争を仕掛けて、誰が得をするかな?」

「ムム……統一神様」

「僕は今回、一切の手出しはしないよ。妻もね」

「ムグウ……犬神、貴様はどう思う?」

思案の限界を、ライバルにバトンタッチした。

「妄言でしかないが、結果的に獣神様を引き釣り降ろせればいい。ヒントはそれだな」

「ほーん。“戦争状態を匂わせること”そのものが今回の目的の一つってことだな」

正着。良い勘してるのう。

「で、次だ。ババアの決着点はどこか」

「決まってないんだろ? あるかよそんなもん」

「無ければ、ヤツを“殺す”。このメンツで」

「……嘘だろ?」

「ま、“ある”と確信しているから、ここでのんびりと酒をかっ食らっていると言ってもいいな」

「ムムム……い」

「犬神ヘルプは無しじゃ」


ケーイットが悶々としている状況で、ワシらは酒盛りじゃ。

ブットい商売神()がいるので、無制限に飲み会ができるぞい。

と、ワシが口走ったら、モダが本気の表情で言った。


「バーとか、作りませんか?」と。


モダとしては、自分の住居が飲み屋扱いされるのは不本意極まりないだろう。

自分の居住領域の端っこに、庵を献上するので、そこで勝手に飲んでいてくださいと。

猫の額のような面積の統一神直下区域は、ワシらに好き勝手されることとなった。

ケーイットよ。

好きなだけ悩んでくれ。

何だったら、一世紀くらい悩んでくれ。ここでは時間経過なんぞ無意味なんじゃ。


ワシらは好きほど自分の好みを突っ込みまくる事となった。

統一神は、フカフカのベッドと、アツアツのシャワーを希望した。

要するに、秘密基地で一泊したい、という欲望である。

ワシは、そこに便乗した。

温泉施設と、巨大な冷蔵庫だ。いつでも“風呂上がりの一杯”を堪能したい。

ヤダルは、そこにサウナ施設と、製氷機を望んだ。

熱いサウナと、キンキンに冷えたハイボール。

言うことは無い。

そのほか。

男の子の欲望と、大人の男の欲望がぎっちりと詰め込まれることとなった庵は。

モダの提供した土地の三倍になった。だが、モダは、『これくらいで済んだか』と、我々に合流した。初めから三倍の土地を提供していた場合の我々の暴走を見越していたらしい。


『バカ、モモ』

姉君、来襲である。


全ては、山神のせいである。

ヤツはクソでかい。

声も、クソデカい。

権能も、クソデカい。

で、ワシらの隠れ家の全てをスピーカーの如く、天界に響かせるのだ。

『なに! この“サウナ”には、美容効果があると!』

『ああ、何と美味か! ミルク、風呂上がりの一杯よ!』

『おっと、すまんな、グスタフ! カーンぱーい!』

ワシらの一挙手一投足は、ヤツのせいでバレバレだった。

モダの“秘境”は、全く隠れることが無かった。

天界最強が、一部に隠れている。

武闘派の神がワシらに戦いを挑んで、湯につかり、一服した。

逃れられん。

警察テンシが、ワシらに戦いを以下略。

山神を抜けるモノは居ない。

モダも、ヤダルも勝てはしない。

偶に、ワシとアヌビスがいる。

時折、■がいる。

それはそれとして、居心地は良い。

リゾート・モダ。

戦士の桃源郷である。


『キエエエ!』

医神が激怒して、契約神アルスを送り込んだ。

こういう顛末である。


『姉貴よお、どう考えてんだ?』

ヤダルはアルスに聞く。

『私には、解決策が無い』

アルスは、正直に真実を答えた。

『モモか、ヴーヴァか。業腹だけど』

ヤダルは、その言葉を、嬉しく思った。

『やってやろうぜ。最悪センソウになったら、モモがあれだぜ』

“あれ”と、誤魔化した弟の心情をアルスは察した。

神殺し、である。

不本意ながら、できる、と確信する。

だけど、してほしくない。

『バカは、神を救うかしら?』

アルスは聞いた。

ヤダルは、力強く頷いた。


「どうする」

「白黒つけねばならんな」

阿保グスタフ阿保ヴーヴァ

モダ別邸で、話し合いが始まった。

「……パン食い競争、か?」

先手、アホ。

「やはり、一気飲みじゃろう」

後手、アホ。

モダ別邸は、女神も手を出している。

好き勝手にいじくりまくった結果、モダ温泉郷と化している。

ホカホカしたアルス以下女神も、ワシらの話し合いを見ている。

見ているか?

ワシの眼には、宴会にしか見えん。

激烈に広くなった宴会場で、好き勝手に飲んでいる。

統一神も、その妻も、ユカタでわっしょいしているので、もうどうだっていいのだろう。

レヴァーゼンが見えた。あの兄妹の娘婿というのは、肩身が狭いのか。

不滅の神は、甲斐甲斐しく杯を満たすことに集中しているらしい。

山神は海神と仲が悪いらしい。

ぐちゃぐちゃと言いながら、山神は統一神の、海神は統一神の妻の肩に手を回して、『目の前のわからず屋を蹴っ飛ばせ』とか言っている。

共に、蹴っ飛ばされた。


『モダは、私を裏切りました』

ババアが、来た。

男神が、奮い立った。

『なんだよお前は!』

『楽しい宴会だぞ手前!』

『許せない』

『死せる覚悟はあるか』

『万死に値する』

女神の方が、倍くらい手加減しないらしい。


『静かにしろ!』

ワシが一喝すると、場は冷めた。

いや、困惑したと言ってもいい。

その場に最速で乗ったのは、言うまでも無い、インターグだ。

『補佐神殿、御身の前で失礼を致しました』

モダ本宅でゲロを吐くほど飲んでいるのを見ているので、ありがたみなど何もない。

『御前で、大変な失礼を。“次席”殿』

イグニカがそう言ってワシに頭を垂れると、

『卑小な身で、御前を汚すなど』

バイセールが頭を垂れ、その妻も。

『補佐神様、夫と共に、永劫の忠誠を』

『補佐神様……』

やられた!

これで、状況はワシVSババアになるじゃないか!


『グスタフ』

ケイトは、まあ、ババアだ。

『こっちに来い』

『貴様が、こちらに来い』

中学生くらいの見た目でも、2,000歳くらいの“若い”神である。

こいつを“殺す”事に、ワシは何の苦労も無いじゃろう。

だが、聞くだけは聞いてやる。

『モダを殺すなら、ワシが貴様を殺す。戦争は起きない。この場で、貴様の首を飛ばす』

『は?』

『え』

『『『『『え』』』』』

どういうことじゃ?


ババアの弁解は、

『医神の領域を侵害された。その補填を求めたかっただけに過ぎない』とのこと。

嘘百パーセントだ。

モダ別邸がスパリゾートと化して、そこで男神女神問わず集まってどんちゃんしている状況に“詰み”を確信したに過ぎない。

仮にここで、スパリゾートの持ち主(とワシと統一神がモダに何度も言っているが、頑なにモダは否定している)をヌッコロそうとすれば、この場にいる全神が敵に回るのだ。灰も残るまい。

今は一時的に頭を下げる。裁定も甘んじて受ける。

だが、この恨みを決して忘れない。

そういう眼をしている。

そんなケイトを、嘘を見抜くアルスはゴミムシを見るような目で見ている。


それに疑問もある。

『しかし、そもそも。何故モダ排斥を企んだんじゃ?』

『それはあなた様も知っている通り……』

『そこからは私が言う』

口を挟んだのは、犬神アヌビスだ。

『酒宴と隠れ家(全く隠れてない)作りが楽しくて言うのを忘れていたが、モモに言いたい事とは、動物神が今回の一件に関わっているという事だ』

……それは、早めに共有する事柄では?

『続きを』

『モダの排斥はあくまで手段だ。ヴーヴァとの婚姻、それが真の目的だ。モダさえいなければ、結婚の許可を得る必要もなくなる。ケイトは、そいつらに踊らされていた。しかし、私も動物神だ。奴らはその性質として、頂点を目指す志向が強い。ヤダルが戦神として強者を求める欲求と同じだ』

『お前は違うのか?』

『私も含めて、強者に従う事、群れを成すことが欲求だ。そういう意味では、私たちはヴーヴァを認めていない。こんな奴をボスにするくらいなら、自裁したほうがマシだ』

それを聞いて、ヴーヴァはへにょんと項垂れた。ここまでストレートにディスられたことも無いだろう。

だが、合点がいった。

アヌビスは初めから、モダを支持していたのだ。だから、最初期からこちらの陣営にいた。

『今になってこの事情を話すのは?』

『理由は二つ。一つ、この情報を話したとしても、戦争にはならないと判断したこと。二つ、モダの秘密基地計画が策として有効であり、この情報を開示する必要のあるタイミングが無かったからだ』

『アルス』

『嘘はない』

動物神どもは後で愉快なパーティーに招待するとして、まずはこの戦争もどきに終止符を打たねばな。


『おい、モモ。話は終わったか? この漫画の続きは無いのかよ』

空気を読まないヤダルが、会話がひと段落着いたとワシに声を掛けた。

『お前さんなあ……』

振り向いた先にあるのは、“食劇のソーマン”である。

我、天啓を得たり。

『ケイト、貴様、料理に自信はあるか?』

『ええ、手慰みではありますが』

凄腕の執事が、“心得などは、少々”くらいの言い方である。

浦野の執事がその言い方をして、少々だったことは一度もない。

現に、ケイトの眼には絶対の自負が見て取れた。

『食劇で、勝負と行こうか』

ショクゲキ? と神々は疑問に思った。

ヤダルが姉貴アルスにその一巻を手渡すと、超速読で読み終えた。

じゅるり、と。欲望の音がした。

『契約神アルス、その提案に賛成する』

『そりゃ何ですか、姐さん』レヴァーゼンが聞いた。


『料理勝負よ』



あれよあれよと食劇の準備は進んだ。

神界は、娯楽が少ない。非常に少ない。

だから、面白い祭りとなれば、食いつかないはずがない。

その場に最高神二柱である、統一神とその妻がいたのも大きい。

即時即決で第一回食劇の開催が決定され、ルールすらも宴会の中で決まった。

審査員席はその二柱のごり押しで二席が速攻で埋まった。本人たちである。

そして何故か、男神VS女神という謎ルールが決定された。

男神は決死の形相で反対した。五対五のチーム戦。各組二名というレギュレーションがその理由である。

確かに、調理神は男神である。だが、そいつは早々に審査員になった。最高戦力が使えない上に、もっと根本的な問題がある。

男神は、全体的に家事ができない。宴会場で『この場で料理ができるやつはいるか?』と聞いたところ、バイセールだけが手を挙げた。最悪である。

大将戦は固定だ。ケイトVSモダ。はっきり言おう。負け戦決定である。

ワシの構想は違っていた。

ヴーヴァは粉ものだけは達人級の腕前を誇るし、アルスだって『料理は化学』と豪語するだけあって、レシピさえあれば完璧な料理を作ることができる。どちらの爺様に泣きついたとしても、最高レベルの料理人が用意されるに違いない。その指導を受けられるならば、完全コピーした一品を出せるはずだとタカをくくっていた。

その二柱は、ニッコニコで女神チームでの参戦である。

『モモのチームに勝てる。ならやるしかない』

『フハハハ! 貴様に土を付けてやるわ!』

普段ワシらは地上でチームを組んでいる。

だが、勝てるときには勝ちたい。その気持ちはよーくわかる。


結果から言おう。

0-5

完全なる敗北である。

唯一勝ちの目があったバイセールは、その妻である豊穣神にボッコボコにされた。

そもそも一戦目で、

『レインボードラゴンステーキ(塩コショウで味付けしただけ)』

VS

『七色鮭のクリームソース仕立て』

という、原始人と現代人が料理対決しているのか、と言いたいくらいのレベルの開きで全てを察したのだ。なお、一戦目はヤダルが出た。

バイセールの試合は、最もレベルが高かった。実際、最も盛り上がった試合だっただろう。負けたけど。統一神夫妻が、非常に素晴らしい笑顔で舌鼓を打っていたので、まあ良しとしよう。

ケイトは(名目上とはいえ)チームリーダーとして第一回食劇の勝者として持ち上げられることとなった。周りがヨイショしまくるので、モダ云々はどうでもよくなったらしい。

全てが丸く収まったな、ヨシ!


ワシらは、モダ別邸の片隅でBBQパーティーをしている。

いや、表現が正しくない。

勝者である女神がスパリゾートを占拠し、敗者たる男神が屋外追放された形である。

男の料理は大雑把でいい。根本的にそんな思考である。

男は寝床が外でもいい。そんなことは無いがな。

『モモ、感謝するよ。ここまで読んでいたのかい?』

胡散臭いインターグは抜け目なく良い肉を確保しては焼いている。

三回戦で出てきたこいつは、発酵食品フルコースという狂気を見せた。

統一神に食わせて愉悦に浸る為だろうと、結論は出ている。

匂いは酷いものだが、味は良い。だが、こいつの性根は真っ黒である。

『いんや。ワシは流れでそうしただけじゃな』

『そういう事にしておこうか、次官殿』

嫌味なことに、こいつがワインを傾ける姿は絵になる。

『我々の勝利に』

『我々の勝利に』

コンッと、ジョッキを突き合わせる。目的が達成したのだ。乾杯が相応しい。


『で、親心か?』

インターグがケイトを守るために動いていたことは、薄々気が付いていた。

『いや……うん、親心だ』

歯切れが悪い。あたかも聞いてくれ、と言わんばかりである。

『まさか、本当に?』

『ハハ、そういう意味での娘ではないよ』

『では?』

インターグは語った。

ケイトは生前、インターグの加護を持った村娘であったらしい。

あくまで気まぐれで加護を授けたらしいが、彼女は持ち前の根性と天賦の才でもって、“治癒の聖女”として人間界では持ち上げられる存在となった。

ワシの前世の聖国の成り立ちのようなストーリーだが、そこは全くの別世界の話らしい。

最後は、“王家に殺された”。

平民出身が王家よりも強い信奉を得ていたことがその理由だ。

これは、インターグなりの懺悔であり、罪滅ぼしのようだった。

『すまないね、酒がマズくなるようなことを』

『いんや、ワシの中で貴様のモモポイントが上昇したわ』

『ハハ、聞き流してくれ、こんな話』

インターグもそうだが、地上出身の神は存外多い。

だから、人間臭い神は多い。

目の前で油滴る肉に食らいついているのも、神だ。


だが、腐っても神だ。

その権能は、絶大であるらしい。


ワシはもともと、勉学の為にモダ宅に向かった。

その目的は、図らずも達成した。


“知神の加護(特大)”

大図書館フルライブラリ


試験は余裕の加護を手に入れた。

大変失礼なことに、ワシは教師にカンニングを疑われ、再テストでその学力を証明するハメになった。

あと、薬物検査の際にチームドクターも帯同していた理由を、ワシは理解できないことにした。


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