閑 話:『ここではない世界の話』
西暦20☓☓年。
ここではないどこかの話──
とあるWEB小説投稿サイトにて、悪役令嬢に転生したJKが異世界で無双し、ぶりっこなピンク頭を断罪する物語がとても流行っていた。
スペックの高い悪役令嬢によって、可愛いだけの脳内お花畑で常識のない男爵令嬢は、物語の終盤でいつもピンチに立たされ、最終的に容赦のない制裁を受けた。
ありきたりで、テンプレートな物語。
一部では嫌悪されていたが、需要があった。
だから、皆がこぞってそれを書いたし、読んだ。
可愛いだけで何の努力しない馬鹿女が、酷い目に遭うシーンを読んでも、読者達は『いい気味だ!』、『ざまあ!』と言って笑顔になった。
それだけのことをしたのだから裁きは受けて然るべき、ということなのだろう。
だから、テンプレートヒロインである『ピンク頭の男爵令嬢』の最期にはたくさんのパターンがあった。
厳しい修道院や娼館送りなんてまだいい方で、言うのも憚れる内容で彼女らは死んでいった。
そんな物語を皆が嬉々として読んだ。
そして、どんどんと制裁は増えた。
ヒロインは皆の敵で嫌われ者だった。
『悪役令嬢に転生したので我儘でぶりっこなピンク頭の男爵令嬢ヒロインを殺害して、憧れの騎士様と結婚してみせる!』という物語のピンクの髪を持つヒロインも、酷い目に遭った。
その物語は『悪役ヴィヴィアンの一生』という物語のオマージュで書かれたもので、作者は学校でいじめを受けている少女だった。
『悪役ヴィヴィアンの一生』の中のヴィヴィアンは、正しく悪役だった。
そんな悪役が成敗される物語はスカッとした。
いじめっ子をヴィヴィアンに当てはめて読むのが楽しくて、何度も何度も読んでいた。
……が、ある日突然『悪役ヴィヴィアンの一生』はサイト上から消えた。
少女はひどく残念に思った。
そして、ふと、自分で書いてみようと思い立ったのだ。
流行りの悪役令嬢もので、ヒロインを痛めつける話を書こうと思った。
しかし、いざ書き始めたら、『ヒロイン』の具体的な悪事が思い浮かばない。
なので、とりあえず『悪役ヴィヴィアンの一生』のヴィヴィアンの性格とエピソードを真似た。
だが、完結したのは稚拙な物語で……。
──感想欄での悪役令嬢に対する批判が堪えたのは、少女が自分を投影させたキャラクターが、悪役令嬢だったからだった。
「ここでも味方はいないんだ」
【削除しますか?】
三章に渡る物語をデリートしてもいいのか、という意味の文言に、少女はボタンをクリックした──
【はい】




