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少し短めです。

 氷の裂け目に落ちたファルトは、足元に地の魔法を繰り出しどこに落下してもいいように身構える。裂け目はかなり深いところまであるのか、かなりの高さを落ちていくのがわかる。魔法で速度をゆっくりにしているものの、下に落ちるに従って何か別のところに魔力を持っていかれるのを感じる。

 足元に繰り出している地の魔法が徐々に弱くなっているのを感じるとともに、徐々に落下速度が上がっていく。


「まずいな」


 足元に目を凝らしていると、きらりと何かが光るのが見えて無理やり魔力の放出を強めて何とか何かに奪われる前に足元の魔法を繰り出す。魔力放出とともに足元に衝撃を和らげるための柔らかい土が出現する。ファルトの髪やコートもその反動で舞い上がるが、直接固い場所に下りるよりいくらか足元の衝撃が和らいだ。


 すとんと降りた地面は不思議な色合いで輝いている。床が気にはなったがまずは周りを警戒して、魔力を感知しようとするが、人的なそれは見当たらない。ただ、この場所全体が謎の魔力で満ちている気がして不思議な感じがする。


 ひとまず床に危険性がないことを確認するため、ファルトは膝をつく。一見氷の床に見えたが、触れてみるとそれは地上にいた時の氷とは違う。白い滑らかな大理石のような石に青と緑の不思議な光沢を纏ったものだった。

「あまり見たことのない素材だな」

 不思議な輝きに何度か触れてみるが、はっきりとなんの素材かはわからない。

「いや、魔法を纏っているだけか」

 あたりを見渡すと全て同じような床になっており、青や緑の不思議な色で辺りがうっすらと輝いて見える。


「一体何なんだこの場所は」

 ただ、おそらくこの場所が士官への調査依頼のあった不思議な光の原因なのではないかと思う。


 再び立ち上がると辺りを確認するためファルトは歩き始めた。一度天井を見上げてみたものの、空すら確認することができない。もしかしたら、ここは何か空間が作られており、外とは隔離されているのかもしれない。


 歩き始めたところで床の一部が透けているところがあることに気がつく。同じ石のようなところでも、白っぽい場所と透明な部分に分かれるようだ。透けているところを覗き込むと、淡く黄緑色に光る線が見えた。線以外にも文字らしきものが見えて、ファルトは眉を寄せる。


「魔法陣?この下は魔法陣が描かれてるのか」

 全体を見渡してみようとするものの、かなり大きな魔法陣のようで何に関する魔法陣なのかも読み取ることができない。古語なのか現代語で書かれているかも判断できない。


 魔法陣の読解は諦め、ファルトは再び足を進める。すると何か建物があるのに気づく。

「こんな地下深くに、家?」

 それは紛れもなく家に見えた。


 昔ながらの木造の家で、屋根や煙突の形も見える。ただ全体が凍っているのかうっすらとした氷に家自体が覆われているように見えた。家には看板がかけられており、ファルトはそれを口に出した。

 

「パン屋……?」


 読んだままに口に出したのだが思わず首を横に傾げる。もう少し歩いてみるとその横にももう一軒家があった。

 そちらにもやはり看板が軒下からかけられており、ファルトはそれも口に出した。


「魔法、道具屋」


 その看板にハッとした。ここ氷結都市は偉大な魔法道具師ハルハの出身地でもある。この最南端にはかつて町があった。ほんの数十年の間に気候の変動で住めなくなり、町はなくなった。

 氷結都市に魔法道具屋は現在一軒もない。そもそも人口が少ない場所である。こんなところに魔法道具屋を構える理由がない。


「まさかこの魔法道具屋は、あのハルハの?」

 もしかしたら誰かが保存魔法の類をかけて、ここに残した可能性はある。しかし、少し歩いてみても、家はこの二軒しか見当たらない。

「だとしたらなぜパン屋まで?」

 意味がわからない。

 

 魔法道具師ハルハの魔法道具屋であればかなり貴重な建物であるし保存した理由もなんとなくわかる気がする。

 

 疑問に思いながら魔法道具屋の看板がかかっている方へ歩き出したところで、突然ドォンと大きな音と振動が空間内に広がった。ビリビリと空間が小刻みに振動する様子に身構える。


 すると、突然上から何かが降って来た。よく見えず身構えるが、目を凝らして見えてきたものにファルトはぐっと眉を寄せた。


「ランカ、……とヴィザさん」


 ファルトの目の前に現れたのヴィザに横抱きにされたランカだった。明らかに顔色が悪い彼女の様子にファルトは駆け寄り、ヴィザから奪い取るようにランカを自分の腕に抱き上げる。腕の中のランカは青ざめており、息が荒い。


「どう言うことですか、ヴィザさん」


 堪らずヴィザを睨みつけてしまうが、ヴィザは両手をあげて誤解だとアピールする。

「オレより後にその子が来たんだ。来た瞬間倒れてやむを得なく抱えて降りて来た。放っておいた方が良かったか?」

「いえ。ありがとうございます」

「たぶん転移酔いだろ。一気に飛んできたんじゃないのか?」

「……、俺はここに来るなんて言ってません。ヴィザさんが情報もらしたんですよね」

 その指摘にヴィザは思い当たる節があるらしく、頭を掻いた。

「オレだって、お前に何かあったかと思って動揺してたんだ。通信石も途切れたし。……、悪かった」

 ぐっと手の中で握りしめてはいたものの、その存在を完全に忘れていた。手のひらを開くと、色のない通信石があった。


「この中で通信石は使えないらしいな」

「すみません、存在も忘れてました」

「で、この空間は?調査依頼の件の確認が取れそうか?」

 ヴィザが周りを見渡しながらファルトに尋ねる。

「まだわかりません。この床の下には巨大な魔法陣がありそうですが、床の状態が悪く読み辛くすぐの読解は困難です。また、この空間が何のためにあるのかよくわかりません。この建物の保存のためのような気がしますが、まだ家の中は見ていないのでなんとも言えません」

「オレは中見てくるから、しばらく見てあげろ」

 ヴィザはそう言うと魔法道具屋と書かれた建物の中に入っていった。


 それを見届けるとファルトは横抱きにしたランカをぎゅっと抱きしめた。ヴィザに聞いて心配してらこちらに向かって来てくれたのだろうかと思うと、こんな苦しそうなランカの状態を見ても愛おしく思ってしまう自分がいる。


 ランカは転移石を使うのは慣れていない。それても使って来てくれたのだから、嬉しくなってしまう。

 ファルトが抱きしめたせいか、ランカがぴくりと反応する。


「ファ、ルト……」

 頭痛がするのだろう額を押さえたランカにファルトは首を横に振る。

「無理しなくて良い」

「……、無事だったんだね。よかった」

 辛そうにしながらも腕を伸ばして弱々しく抱きしめてくるため、ファルトはさらに抱きしめ返した。

無事でよかったね。

この世界好きすぎて書きたいこと多くて困ります。

いつか魔法道具屋も書けたらいいな。

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