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少し短めです。

 居ても立っても居られなくなったランカは、手紙をもう一度出し、王宮を訪ねるとヴィザに連絡をしたところ、ヴィザの方が<魔女の森>を訪ねて来てくれた。

 転移石を使って現れたヴィザに驚きつつ、ランカが出迎えると、ヴィザからファルトがいなくなった状況を聞く事が出来た。


「私はこのまま氷結都市に向かう。ただ不安にさせただけになってしまって申し訳ない」

 士官として来ているせいか口調も表情も固いヴィザは、端的に説明するとそのまま転移石を使って消えてしまいランカが止める術もなかった。


「……ファルト」


 しばらく玄関扉の前でどうすべきか目を閉じて考えていたランカだったが、ふと目を開き部屋の中を走る。

 梯子を使って上がる部屋に行くと、ランカは棚の隅に丸められていた巻物をいくつか広げる。広げては違うと放り投げ、何回目かのものを広げた時にようやく見つけたかったものを探し出した。


 それは古い地図だった。しかも、一般的によくみるこの国の地図ではなく、氷結都市に特化して作られた地図だった。

「……氷結都市の最南端」


 氷結都市にはランカ自身も行ったことがなかった。なんせここからも遠い。しかもあまりに過酷な場所のため、氷結都市内で人が住んでいる場所は限られている。

 この最南端の場所はかつては人が住んでいた町であったが、今はもう町はない。気候の変化により今は全て氷に覆われてしまった。ただ、住民は全員別の街に移住しており、人的な被害はない。ただ、丸ごと町はなくなった。


 今回ファルトがこの場所に行くことになったのは、ここで大きな魔力の動きがあったからだと聞いた。実際魔法道具は反応していたらしいが、あたりには何も見えなかったと言う。


「……、最南端の町と言えば魔法道具師ハルハの出身地なんだけどな」

 魔法道具師の中でも偉大な功績を残しているのがハルハだった。金色の長い髪に碧眼の女性で、いつも好んで白い服を着ていたと言われている。さまざまな魔法道具を生み出し、優秀な弟子を育てた魔法道具師。彼女は自身の故郷を愛していたため、どれだけ王宮から声が掛かろうとも、決して王都に店を構えることもなかった。

 自身の弟か友人のためだけに故郷外へでることもあったが、それ以外は氷結都市の町の一角に構えた店でずっと過ごしていたと言う。


「何か、関係あるのかな」


 ランカはいつもは開けることのない戸棚の引き出しに手をかける。そこにはいくつか転移石が入っていた。何かあった時の非常用にもっているものだ。そこにあるありったけの転移石を一つを残して、ブレスレットの石の空間にしまいこむ。それから、机の上に置いていた魔女の帽子を被り直し、普段滅多に使わないファーのついた外套を羽織る。氷結都市はかなり寒いため防寒も重要だ。


「今使わなきゃ、いつ使うのランカ」

 ランカは苦手な転移石を握り締める。ファルトのように頻繁に利用するわけではないので、いまだに酔う時がある。できるだけ転移場所を刻みながら行くしかないが、それでも氷結都市は距離がある。最南端となれば尚更だ。


「大丈夫」

 使う時は必ずファルトが一緒にいた。彼の手に触れているだけで目的地についてしまう。しかし、今日は違う。

 ランカは移動する場所をできるだけ正確にイメージしてから、手のひらの転移石に魔力を込めた。ランカの手の中で転移石が青く光を帯び、ランカの体はそこから広がった輝きに包まれた。



 三回転移しただけで少し頭がぐらりとした。ファルトは転移する場所もよく考えてくれていたんだなと、今更実感する。なるベくランカが辛くならないように気を使ってくれるだけじゃなく、降り立つ場所もあまり人気のない静かな場所にしてくれていた。ランカが自分でやる時は、来たことのある場所を思い描いてしまいがちで、変な場所や人のいるところに降り立ってしまう。


 まだまだ転移しなきゃ、とてもたどり着かない。しっかりしなさいランカ。


「もう思いつく場所もないし、一気に行こう」

 ランカはパンッと自分の頬を叩くと気合いを入れる。その瞳は力強く南の方を向いていた。


 強く転移石に魔力を込めると、普段なら絶対にやらない長さの距離を一気に飛んだ。



***



「通信が途切れたのはこの辺りか?」


 真っ赤な髪を冷たい風に煽られながら、ヴィザは氷の大地の上に立っていた。あまりにも突然すぎる通信の途切れ方と、後ろに響く大きな崩壊音が流石に気になり、ヴィザも転移石を使い氷結都市にやってきたのだ。

 通信石の反応もなく、他に確認する手段がない。とりあえず出てきたものの、大きな裂け目が出来ているのを確認できたぐらいでファルトの姿を確認することが出来ない。


「この中か?」 


 かなり巨大な裂け目を覗き込むが深くまでは光が届かない為状況が見えない。姿が見えないと言うことはこの中に落ちたと考える方が自然である。

「あいつ飛べないからなぁ」

 そんなことを言いながら、諦めて穴の中に降りようとしたところで、何かの気配を感じて振り返る。


 するとそこに現れたのは、息も絶え絶えなファルトの恋人でもあるドミエの魔女だった。氷結都市に来る想定なのかファー付きの外套を着ており予定通りの転移なのだろうとは思うが、あまりにも体調が悪そうだ。


「大丈夫か」

 声を掛けてみたが今にも倒れそうな状況に、ヴィザは眉を寄せた。おそらくヴィザが氷結都市の最南端という情報を与えたせいだなと反省する。

 

 そう言えば以前の報告書内にドミエの魔女は転移石に不慣れと記載があった気がする。無理をして転移してきたのかもしれない。


 あいつ恋人に関することはめちゃくちゃ心狭いからな……。


 どうするか迷ったが仕方なく風の魔法を使うことにした。風の魔法でランカを浮かし、抱き抱えるような体勢にしつつ、できるだけ触れないようにしながら移動することを選んだ。置いていくわけにもいかないのだから、どうにかして連れていくしかない。


「早く見つかってくれよ」


 そう口にしてヴィザはランカを伴って裂け目に飛び降りた。

ヴィザ好きですみません。

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