二人の旅行3 (ランカ/ファルト)
続きです。
海で遊び疲れたのもあり、部屋でのんびりしていた二人だが、夕食の時間になり外に出ることになった。
「着替えてくる」
そう言ってランカがしばらくして戻ってきたのだが、目の前には、いつもと違い肌の露出が多めのランカがいた。
気温が高いため開放的な気分になるのか、ノースリーブのワンピースで丈もいつもよりやや短い。そこまではまだいいのだが、よく見れば背中が大きく開いている。ランカの長い銀色の髪がほとんどを隠しているとはいえ、彼女の髪が揺れるたび、背中の白い素肌が見え隠れする。
「……もう、無理だ」
「え?」
ランカが後ろにいたファルトを振り返ると髪が浮き、その瞬間背中の素肌が露わになる。このまま外に出てしまうと、このランカの白い背中や胸元も誰か知らない男が見るのかと思うと腹だたしい。
水着はやむを得ず我慢したところもあるがこれは自分を説得できそうにない。
「……、ランカ」
「ん?」
「外に食べに行くのやめよう」
思わず振り向いたランカを抱きしめる。こんな格好のランカを他の誰にも見せたくない。抱きしめただけでランカの素肌に触れてしまう。それだけで、ファルトは自分がとんでもなく悪いことをしている気がしたが、それでも離したくなくて、ランカの腰を強く引き寄せる。
「他の男に見せたくない」
そうファルトが言うと、ランカが驚いたように息をのんだ。
「……、ファルト」
何故か呼びかけてくる声が泣きそうな声なことに気づき、ファルトは慌ててランカを離す。顔を見るとランカは泣きそうになっている。
「ランカ?俺が何か……」
「私、魅力がないのかと思って」
「魅力がない?」
「だって、ファルト全然手を出してこないし」
かつてなく呆けた顔をした自信がある。まさかそんな風に思われていたとは考えてもみなかった。
……、出してよかったのか。
まさか我慢したことが裏目にでることがあるとは。
もう一度ファルトはランカを抱きしめた。抱きしめた手はランカの素肌の背中をゆっくりと撫でる。滑らかな肌に触れると、彼女がびくりと体を震わせたのがわかったが、もうそれぐらいでは動じないことにした。
右手はランカの首元をなぞり、耳を掠める。小さく悲鳴をあげた気がするが、それもファルトにとっては可愛いだけだ。
「我慢しなくていいなら、もう我慢しない」
ファルトはランカの顔を捉えると、そのまま顔を寄せて口付けした。触れるだけのキスを何度か繰り返したあと、ランカが苦しそうに口を開けたところで、ファルトは深くキスをした。
明らかに驚いたように、目を見開いたランカが離れようとしたが、ファルトはそれを許さなかった。逃れようとするランカをファルトは執拗に追いかける。
苦しそうにするのがわかりファルトはどれだけかしてようやくランカから少し離れた。見るとランカは、真っ赤な顔をして息も絶え絶えだ。目は潤んだ状態でぼんやりとしたままファルトを見つめている。
「もう我慢しなくていいなら、いくらでも欲しい」
それがファルトの本音だ。触れるようなキスまでで止まっているのは、自分から好きになった手前、ランカにどうしても遠慮してしまうからだ。自分の気持ちにランカが追いつくのを待った方がいいと思っていた。
でも、そんなことをしなくてもいいなら。手を出すことをランカ自身が許してくれるなら、それはもう遠慮なんてしない。
欲しいままに奪いたい。
ファルトが背中に回していた手で背中をゆっくりとなぞり、右手で彼女の胸元に触れようとした時、ランカがびくりと反応して声を上げる。
「だ、……」
「だ?」
「だめ!」
思わずファルトは動きを止め、目を伏せ、現実逃避したくなった。これだけ煽られてるのにダメなんて何の罰だろうか。
「……、ダメならあんまり煽らないでくれ」
「違うの、だって、さっきのキスもびっくりして!」
真っ赤になって答えるランカももちろん可愛いが、寸止めをくらった右手はこれ以上動かせず止まるしかない。
「きょ、今日はもう、これ以上無理だけど、少しずつなら……」
「今日は?」
「今日は……」
明日になったらこの胸に触れても許されるのだろうかと思い、思わすランカの胸をじっと見てしまうと、ランカがさらに真っ赤になって自分の腕で胸元を隠した。
「ファルトのバカ……!」
最早何を言われても明日以降の自分の為になら、今日一日ぐらいなんでも我慢できそうなファルトだった。
***
恋人になってすぐにキスをしたのに、それ以上はなかなか先に進むことはなかった。休みの日も一緒にいることを望んでくれているのに、そんなに進展しない状態にランカの方が少し不安に思っていた。
手を出されないのは、自分に魅力がないからかも。
そんな風に感じ始めていた。いつも魔女の黒い服を着てることが多く、ファッションもこだわりは少ない。好きなのは楽なワンピースが多くて、いつも似たような格好になりがちだ。
王都で周りを見るともっと可愛い服を着た女の子やオシャレした女の子が多く、自分とは違うなと感じた。
ファルトはいつも王都にいるし、そういうの見慣れてるだろうから。
私なんて全然魅力を感じないのかも。
そんな風に一度考えてしまうとなかなかその考えを捨てることはできなくなっていった。
でもそれをなんとか変えたくて、ランカはファルトを旅行に誘ってみた。水着や服もこの日の為に新調して、ちょっとでもファルトの気持ちが動いてくれたらいい、そんな風に思っていたのに。
「そんな風に考えてたのに……」
今は何故かホテルの部屋で、ファルトに抱きしめられたまま座っている。背中にファルトの熱を感じて顔が赤くなる。しかも、ランカがどんな考えをしていたのかを話してしまい、さらに恥ずかしい。
でもファルトの方も何故全く進展させようとしなかったかを話してくれたため、ランカも少しホッとした。
ランカが魅力がないからではなく、自分が先に好きになっていることもあり、ランカの気持ちが追いつくまで待っていたと言われると、ファルトの優しさに胸がきゅんとする。
さっきのファルトの表情はいつものファルトと違って、とても男らしい顔つきでランカもどきりとした。食べられてしまいそうとはこのことかと思ったが、ランカの言葉に素直にとまってくれるファルトが愛おしすぎる。
「ごめんね」
「いや、俺が性急すぎた」
だんだん頭が冷静になってくると、次第に背中きら伝わるファルトの熱と前にある腕が気になってくる。
と言うか、この体勢恥ずかしくない⁈
一度そう思うともうダメなようで、ランカは顔だけ後ろを振り返る。
「ねぇ!そろそろ外にご飯でも買いに」
そこまで言ったが、ファルトが思いの外熱い視線を向けてきていて、ランカは続きの言葉を言うことができなかった。
少しずつファルトの顔が近付いてくるのに目を離すことができない。
「今日したことまでは、何度でも許される?」
そう囁いたファルトの唇が、ランカのそれを捉えた。何度か触れるだけのキスをした後、先ほどのように深く口付けをされる。先ほどあれだけ驚いたのに、今度はランカもファルトの求めに応じてしまう。
どれだけかして、ファルトが唇を離すとランカはぐったりとファルトの腕に倒れた。
「ファルトのバカ……」
負け惜しみでそう言うとファルトが困ったように笑った。
「ごめん」
「謝らないでよ!」
「……、俺は明日が待ち遠しい」
ぎゅっと抱きしめられてそう耳元で囁かれると、自分は言ってはいけないことをファルトに言ってしまったことに気づく。
「少しずつって言ったよ⁉︎」
「ああ、少しずつだろ?」
わかってるよ。そう微笑んだファルトの笑顔が眩しすぎてランカは不安にならざるを得ない。
恥ずかしくなってファルトに背を向けると、代わりに背中にファルトの大きな手が触れた。
少し忘れていたが今は背中が大きく開いた服を着ているのだ。背中を向けると当然ファルトにはそれが見えているはず。
急に恥ずかしくなりファルトの方を向こうとしたのだが、背中に触れていた手がゆっくりと動き、何か別のものがさらに触れた気がした。
「ひゃっ!」
驚いて思わず声を上げると、ようやく何かがわかりランカは声を上げる。
「ファルト!」
背中に吐息がかかるほと近くにファルトが近づいていたのだ。
「背中はさっきも触れただろ?」
いけしゃあしゃあと述べるファルトに、ランカが非難の声を上げる。
「さっき触ったからってなんでもしていいわけじゃ!」
ファルトはランカの首に近い背中に唇を寄せた。ランカが声もあげられずにいる間に、ファルトはさっさと自分のやりたいことをしたのか、さっと顔を離した。
ランカの真っ白な背中に赤い印が浮く。
「ファ、ファルト⁈」
ランカが慌てて振り返るがもう遅い。満足そうな顔をしたファルトがランカを見て微笑んでいる。
「少しぐらい主張しても許されないか?」
「どこへの何の主張なの‼︎」
「知らない男たちへのランカは自分のものだと言う主張」
珍しいファルトの態度にランカが焦る。
「なんか怒ってる⁈」
「怒ってはいない。けど、今日は嫉妬と牽制に疲れた一日だったから。……自分がこの印をつけたかと思うとちょっと、優越感に浸れる」
「話変わってない⁈」
嬉しそうに微笑むファルトにツッコミを入れざるを得ないが、そんなことすらあまり意味ないようだ。
「もう少しつけても?」
「ダメに決まってるでしょー‼︎」
真っ赤になって怒ったランカにファルトはとても楽しそうに笑い返した。
そんな二人は2泊3日の海上都市の旅行をとても楽しんだとか、どうとか?
終
夜のプールも描きたかったんですけど、ダメな想像しかできなかったので諦めました。
きっと楽しんだでしょう!




