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11.金のアクセサリー

遅くなりましてすみません、長くなってしまったので二話にわけました。


この話の前に一話あります(同じ時間に二話投稿しましたので、読む順番にお気をつけくださいm(_ _)m)

レイナートはレシアに街を案内しながら歩く。

「この辺りには商店が数多く並んでいる。レシアも欲しいものがあればここで買うといい。だいたいのものは揃うぞ」

そうは言ってもレシアに必要なものはメイドたちが全て揃えてくれるし、これと言って欲しいものもない。あいまいな微笑みを見せるレシアにレイナートは言った。

「なにか欲しいものはないか?」

と長身のレイナートに顔を覗き込むように聞かれてレシアは赤面し、慌てて顔をそらした。

「いえ、間に合ってますので」

しかしレイナートにはレシアの言葉が聞こえていないのか、なにがいいかな、と微笑みながら思案している。

「あの、本当に必要ありませんから」

レシアの固辞にレイナートは悲しげな顔をして眉を下げた。

「君に贈り物をする権利すら、俺には与えてくれないのか?」

そんな言い方をされてはレシアは断れない。

「レイナート様はずるいです」

顔を赤らめ俯くレシアにレイナートはそっと言った。

「男は誰しもずるいものだ」

耳元で囁かれ思わず顔を上げたレシアにレイナートは熱のこもった視線で、よく覚えておくように、と言った。

真っ赤になってしまったレシアの肩を抱いてレイナートは意気揚々と、とある商店に入っていった。

「店主、邪魔をする」

「レイナート様、ようこそ」

「みな、息災か?」

「おかげさまで変わりなく過ごさせていただいております」

「それはよかった。実は彼女になにか見繕ってもらいたくてな」

そう言ってレイナートは背中に隠れていたレシアをずいっと店主の前に押し出した。

「あの、レシアと申します」

しどろもどろの物言いをするレシアに店主は優しい微笑みを見せ、ようこそお越しくださいました、と丁寧な挨拶を返してくれた。


「こちらなどいかがでしょうか」

ソファに案内され、出されたお茶を飲んでいると、店主がいくつかのアクセサリーを持ってきた。それらはどれも美しくて綺麗だったが、レシアには分不相応に思えた。

「せっかくですが」

断りの言葉を口にしたレシアの横でレイナートが、

「いいな、全部もらおう」

と言う。

「いえ、いりません!」

慌ててレシアが断るとレイナートが寂しそうな顔でこちらを見た。

「気に入らなかったか?」

「そうではなく」

見ると店主も寂しそうな顔をしている。

「あの、では、こちらだけ」

ふたりに押し負けたレシアは宝石が付いてない、一番安そうなアクセサリーを選んだ(安いといってもレシアにとってはかなりの金額になるだろうが)。それは細かい文様の入った金色のネックレスと揃いのイヤリングで、余計な装飾がない分、かえって上品にみえた。

「これがいいのか?」

「はい」

ごてごてと宝石で飾られたいかにもお高そうな品物に交換されてはたまらない、とレシアは即答したが、レイナートは口を手でおおい、そうか、と言ったきり、難しい顔をしている。少し顔が赤いように見えるのは気のせいだろうか。

実は一番高いものを選んでしまったのかとレシアは青くなったが、店主は、後ほどお屋敷にお届けします、とさっさと話を進めてしまう。レイナートも何も言わず購入承諾の書類にさらさらとサインをし、レシアに声をかけ、店を出た。

「そろそろ昼どきだな、せっかくだから食事を楽しんでから帰ろう」

外に出たときにはレイナートの様子は元に戻っていて、彼の馴染みの店で昼食をとったあと、帰路についた。


後日、届けられたアクセサリーを引き出しにしまう際、メイドが、

「レイナート様もやりますねぇ」

と笑った。

「どういう意味ですか?」

レシアが尋ねるとメイドはおかしそうな顔をして、

「だって、これ、金しかつかってません。レイナート様のお色だけを使ったアクセサリーをレシア様にお贈りするなんて」

とくすくすと笑った。

メイドの言葉でレイナートの様子が変だった理由がわかった。彼の瞳も髪も金色で、このアクセサリーも金しか使っていない。

レシア自ら彼の色が欲しいと強請(ねだ)ったことになってしまったのだ。あのときレイナートの顔が赤かったのは見間違いではない。さすがの彼も羞恥を感じたのだろう、しかしレシアはもっと恥ずかしい。

「違うわ、それはわたしが選んだの。高そうなものばかり並べられてしまって。それが一番安そうに見えたから」

事実を述べ訂正したが、メイドはどう受け取ったのか、

「まぁ、レシア様が?」

それはそれは、と微笑んで、丁寧な手つきでアクセサリーを引き出しにしまった。


その日は間の悪いことに、レイナートが珍しく自宅で夕食をとった。当然のようにレシアも同席させられたのだが、メイドとのやり取りのあとだったため、どんな顔をしていいかわからず、明らかに口数の少ないレシアをレイナートは不審がった。

食事を終え、そそくさと部屋に戻ろうとするレシアをレイナートは呼び止めた。

「どうした、レシア。具合でも悪いのか?」

「いえ、なんでもありません」

レイナートの顔をまともに見られないレシアは俯くしかない。

「レシア」

レイナートはレシアの顎についっと人差し指をあて、すっと顔を上に向かせた。

「俺にも話せないことなのか?」

レイナートの澄んだ瞳に射貫かれたレシアは結局、理由を話す羽目になり、ふたりはまた気恥ずかしい思いをすることになった。


食後、サロンでメイドの用意したお茶を前にレイナートとレシアはお互いに赤面している。

「そうか、あれを選んだのはそういうことだったのか」

「すみません、王都の常識(?)を存じませんでした」

「いや、だとしても」

レイナートはそこで言葉を切り、レシアに視線を向けた。

「君が身に着けてくれたら、俺は嬉しいな」

レイナートの頬はまだ少し赤らんでおり、その微笑みにレシアも、

「機会がありましたら」

と、はにかんだ微笑みで応じた。

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