番外編 栞の送り主 5
俺がアフロのカツラを取った途端、森野は驚いて目をパチクリさせた。
「せっ、先輩!?」
「おい、まさか全く気付いていなかったのか?」
そもそも、森野が持ってきたカツラだろうに、気付かないとか、俺の方がびっくりだっつーの!
「い、いやぁ…。あんまり、アフロがお似合いで、一体化されていたので。声も姿勢も全く違うし、先輩、演技上手ですねぇ…。」
森野は感心したようにそう言うと、何かを思いついたのか、顔色を変えた。
「はっ。という事は、もしかして、雪下先輩の話…全部聞いていました…か…?」
「ああ、まぁな…。」
「!!」
森野は口元を覆うと、気まずそうに俺に慰めるような言葉をかけてきた。
「いや、あの〜、なんと言っていいか分かりませんが、まぁ、気を落とさずに…。生きていれば、その内いい事がありますよ…。」
「そんなあからさまに気遣うなよ。まぁ、少し腹は立ったけど、そこまで落ち込んではいないよ。
彼女に近付く為に本を好きなフリをしていたのは間違ってないし、薄っぺらいと思われても仕方ないかもな…。
でも、だからって、今カレの平井ってどうなんだ?
あいつ、森野の事口説いてなかったか?とても一途な彼氏とは言えないぜ。」
森野は苦笑いをした。
「た、確かに…。ま、まぁ、同じ趣味を分かち合えるという点ではいい彼氏さん…なのかな?
雪下先輩、他の女の子に目を向けないように平井先輩の首根っこをちゃんと押さえとく必要がありますね…。」
「そうだな…。雪下頑張らないとだな…。」
元カノの事を今はもう遠い他人のようにそう思ったが、まだ、森野は俺の方を心配そうに見ている。
「先輩…。なんか覇気がない…。やっぱ、落ち込んでます…?」
「え?」
いや、ちょっと引っかかる事はあるが、別に落ち込んでるとかじゃないんだが…。
森野の持っている本と栞をチラッと見て、目を逸らした。
「あ!先輩、借りてきた本をお渡しします。これ、図書カード!」
森野は、課題の参考図書の本と、俺のカードを俺に手渡した。
「あ、ああ。ありがとう…。」
「その本、こよりがないようですが、栞いります?私、持ってますけど。」
そう言って、さっき返却した本に忘れていた押し花の栞を差し出してきたので、俺は目を剥いた。
「それ!人にもらった大事なもんじゃねーのかよ?
俺に貸しちゃっていいのか?」
「えっ。でも何枚も持ってますし、それに元々は先輩にもらったものてすし…。」
??!
「は?俺、森野に栞なんてあげた覚えは…。ん?」
俺はその栞の押し花をよく見てみると、ピンクのガーベラと、カスミ草の組み合わせに見覚えがあることに気付いた。
「もしかして、俺が以前あげた花を押し花にした…のか?」
じゃあ、さっき、平井に突っ込まれた時の森野の反応は、俺に対しての…。
俺は、ポカンと口を開けて固まった。
そんな俺の様子を驚き呆れていると思ったのか、
森野は、真っ赤になって言い返してきた。
「な、何ですか?もらった花を押し花にするなんて、こいつ初めてもらった花束にどんだけ浮かれてんだよって思った?
だって、綺麗だったし、すぐ枯れちゃうの勿体ないし…。なんか文句ありますか?」
そんな喧嘩腰の森野にも腹を立てることもせず、俺はただ、素直に森野の好意に甘える事にした。
「いや…。文句はない。栞、まだ他にもあるなら、これ、借りてもいいか?」
「え?あ、は、はい。どうぞどうぞ。」
拍子抜けした様子の森野から、押し花の栞を受け取ると、俺は大事に本の中に挟んだ。
「ま、俺の手にかかれば、課題なんて大した事ないし、ちゃちゃっと終わらせてやるかな。」
「あれ?なんか、先輩、元気出てきました?
そうそう!今日は課題頑張らなきゃいけないから、落ち込んでる暇はありませんよ?先輩、ファイトです!」
そう言って、ガッツポーズをとると、森野は黒縁メガネの奥から笑顔を見せた。
今まで読んで頂きまして、ありがとうございました(^^)
この番外編を最後に、完結表示にさせて頂きます。
続編をどうするかは、来年春頃また活動報告でお知らせしますね。
今後ともよろしくお願いしますm(_ _)m




