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番外編 栞の送り主 3


私こと、森野林檎は里見先輩から、重大なミッションを承りました。


ミッションの内容は、里見先輩の元カノ雪下紗理奈先輩と、その今カレさんが当番の図書室へ赴き、里見先輩の代わりに課題に必要な図書を借りてくるというもの。


クラスメートで演劇部員の矢作悦子(やはぎえつこ)ちゃんにワケあって、変装グッズを借りたいと言うと、二つ返事で貸してくれた。


アフロのカツラは先輩に取られてしまったけど、私は

手で髪をくしゃくしゃにして、ボサボサ頭にして、黒縁メガネをかけて、変装して図書室の入口から、中の様子をを覗うと、カウンターには、男子生徒が一人いるだけで、雪下先輩の姿はなかった。


よし!今がチャンスかも…。


胸をドキドキさせながら、ササッと図書室に潜入した。


先輩に頼まれていた本は、入口付近に課題の図書コーナーがあったので、すぐ見付かった。


「『現代社会における青年の選択 家族or恋愛orペット』これだよね?」


私はハードカバーの本を手に取り、先輩にもらった

メモに書いてある本のタイトルと、照らし合わせ、私は頷いた。


なんか変なタイトルだけど、ま、いいか。


私は雪下先輩が来ない内にとカウンターへ急いだ。


「あのっ、これ借りたいんですけど!」


勇気を出してカウンターのテーブルに本を差し出す。


カウンターにいた図書当番の男子生徒(雪下先輩の今カレらしい)は、短髪で清潔感のあるすらっと背の高い2年の先輩で、私を見ると、涼やかな笑顔を浮かべた。


「ああ、ごめんね。この本、今二年生の課題用の図書に指定されてるから、他の学年は借りられないんだ。君、一年生だよね?」


私の制服の赤いリボンをチラッと見て、図書当番の先輩は申し訳なさそうな顔をする。


「い、いえそれが、かくかくしかじかで、代わりに私が本を借りに来ました。これ、先輩のカードと、私が代理に借りる事に同意する直筆サインです。」


私はドキドキしながら、里見先輩の図書カードと、

直筆サインが書かれたメモを見せる。


「うーん、本当はこういうのダメなんだけど…。」


図書当番の先輩は、顎に指をかけて困った顔をしたが、少し考えると、笑顔になった。


「うん。ま、特別にいいよ。君、なんか一生懸命だし。悪用する子には見えないし。」


「あ、ありがとうございます!」


よかったぁ!当番の先輩、融通の利くいい人!

私はホッと胸を撫で下ろしていたが…。


貸出作業が終わると、当番の先輩はニッといたずらっぽい笑みを浮かべて言った。


「その代わりと言ってはなんだけど、今度一緒に

どっか遊びに行かない?」


「え?」

私の頭にハテナマークが浮かんだ。

今会ったばかりで遊びに行こうと誘う。それってどういうことなんだ?私をナンパしてるって事?

だって確か、この先輩は、雪下先輩と…。


「え、えーと、先輩は…。」


「俺は平井東次(ひらいとうじ)。東次って呼んでいいよ?」


「い、いえ、流石に下の名前はちょっと…。平井先輩は、雪下先輩と付き合ってるんですよね?」


「ああ、紗理奈?大丈夫。今、司書さんと書庫の整理してるから、しばらく戻って来ないよ。」


んん?そういう問題じゃないんだけど…。

この人、里見先輩に負けずとも劣らない()()()なんじゃ…。

やばいな。私の最も苦手とする人種かもしれない。


どうやって断ろうか考えていると、


「君、ちょっともさいけど、メガネ取ればかなり可愛いんじゃない?コンタクトにしてみたら?」


「あ、いえ!私はこのメガネが気に入っていますので!!」


グイグイくる平井先輩に、防戦一方の私。


「頑なだねぇ?でも、恋をすると女の子って変わるもんだよ?例えば、今、返却されたばかりのこの『アムリカの夏』なんか、地味な外見の女の子が恋をして服装もどんどん可愛く変わっていく様子が書かれていてね…。」


平井先輩は返却棚にあった一冊の本を取り出した。

可愛らしいポップなデザインの表紙に私はちょっと興味を惹かれた。


「へ、へぇ〜。」


「本は好きみたいだね?借りてく?」


こちらを見透かしたようにニンマリ笑う平井先輩に慌てて首を振る。


「あ、いえいえ、今、家で読んでる本がありますので、また今度!」


「そっか。残念。じゃ、君の名前だけ教えてよ。」


「えっ。いや、あの…。」


私が困っていると、後ろからしわがれた声が響いた。


「あの…、閉架図書について調べてもらいたいんですが!」


後ろに並んでいたのは、大柄でアフロの男子生徒だった。ネクタイの色が緑のところを見ると、二年の先輩らしい。猫背で少し雰囲気の暗い感じのその生徒は少し苛々している様子で私に言った。


「貸出終わったなら、早く代わってくれませんか?」


「あっ。ハイハイ。すみません!では、私はこれで!」


私は慌てて横へよけて、男子生徒に順番を譲った。

平井先輩はチッと舌打ちをしている。


た、助かった!ありがとう、アフロの先輩!

私はホッと胸を撫で下ろした。


平井先輩が、アフロの男子生徒に応対している間に、ついでに返却台の方に返却する本を置き、小声で呟いた。


「お願いしまーす…。」


よし。これで全ての任務を完了したぞ!

小さくガッツポーズをとった私だったが…。


「閉架の図書をお探しですか?本のタイトル教えて下さい。」


カウンターに雪下先輩の姿が現れ、アフロの先輩に対応しているのを見てドキッとした。


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