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残していくもの

「うー、よっこいしょ!」


キャリーカートと大きめの鞄にに取り敢えずの荷物を詰め込んだものを、ドアの近くに運ぶと私はふーっと息をついた。


それから、自分の部屋をぐるっと見渡して考える。


どうしよう?まだ分からないけど、どうなってもいいように、一応荷物はまとめておこうかな?

クローゼットの端っこの方を見ると、ダンボールを畳んだものが4枚程置いてあった。

ここに来るとき、荷物を入れていたダンボールを何かに使うかと思って、とっておいたのだ。

まさかこんなに早く使う機会があるなんて思わなかったけど…。

私がダンボールを部屋の真ん中に運び、一つ目を組み立てていると、L○NE の着信音が鳴った。

夢ちゃんからだ!


『りんごあれから大丈夫?お母さんとお話できた…かな?』


「!」


私はすぐに夢ちゃんに電話をかけた。


着信音が一回鳴るか鳴らないかぐらいのうちに、夢ちゃんが電話に出た。


『はい!りんご?今家?大丈夫?生きてる?』


畳み掛けるように質問攻めにする夢ちゃんに私は胸が熱くなった。

心配してくれてたんだなぁ…。


「大丈夫だよ。夢ちゃん…!心配かけてごめんねぇ。お母さんから聞いたよ?電話してくれてたんだってね。」


『あ、うん…。ごめんね、りんご…。勝手な事だったかもしれないけど、私、りんごが心配で…。』


いつもキリッとしている夢ちゃんだが、電話口からは珍しくしゅんとした弱々い声音が届いた。

そうさせてしまったのは私のせいだ。謝るのは私の方だ。


「いいんだよ。夢ちゃん。私悪かった!

夢ちゃんがすごく、すごーく心配してくれてるの本当は分かってたのに。私がそれを言わせなかった。自分が寂しくてだめになってるの指摘されたくなくて、カッコつけて、大丈夫なフリしてた。夢ちゃんには余計に負担かけちゃってたよね。本当にごめん!」


『り、りんごぉ…。ほ、本当よぉ。私りんごがどうかなっちゃうんじゃないかってすごく心配したんだからね。バカ!りんごのバカ!』


鼻をすすりながら悪態をついてくる夢ちゃんを宥めるように言った。


「夢ちゃんごめんて。でも、もう大丈夫だから、心配しないで。お母さんとちゃんと話せたから。思ってる事全部言って、私が勝手な思い込みで家族から離れようとしてたこと、それでも家族が大好きで、会えない寂しさでボロボロになってたこと全部伝えた。お母さん全部受け止めてくれた。取り敢えず明日実家に帰ることにしたよ。」


『ほ、ホント?それなら本当によかった…!私もそうするのが一番いいと思ってたのよ。だけど…。』


「ん?」


『里見先輩はその事で何かりんごに言ってた?』


「うん。明日が最後になるかもしれないから見送ってやるって。

私が同居を解消するかもしれないって、思ってるみたい。」


『そう…。りんごはそのつもりなの?』


「うーん…、まだはっきりとは決めてないし、家族とも話し合ってからじゃないとだけど、そうした方がいいんじゃないかなとは思ってる。

今回の事で、私自分がすごく子供だって分かっちゃったし、まだ自立するには早かったなって。」


『そんな事…!。りんごはよくやってたわよ。』


「ううん。最後なんかダメダメだったもの。それに、もうこれ以上里見先輩に迷惑もかけられないしね。やっと森野を追い出せるって言ってたし。」


『え?里見先輩が??そ、そうなんだ…。ひどい人ね…。』


「ねっ。ひどいよね?でも先輩、そんなに嫌ってる私の為にお母さんと話し合うよう一生懸命説得してくれたの。私がすごく意固地になっていたから、先輩の言いたくない事まで、いっぱい言わせちゃった。口は悪いけど、本当は優しい人なんだよ。」


『……。そう…。(あの人も、最後には好きな人の為になる事をしてあげられたのね…。)』


夢ちゃんは小声で何かを低く呟いた。


「うん?夢ちゃん、何て?」


『あっ。ううん。何でもない。りんご、明日はお母さんにうんと甘えてくるのよ?それと…。前から言っていたけど、許嫁と同居の件は私も解消するのに賛成よ?里見先輩の人柄どうこうをおいといてもさ、そういう堅苦しいの、りんごには似合わないよ。』


私は苦笑いして言った。


「私もそう思う。」


『じゃ、りんごも準備もあるだろうからあんまり長くなるのもなんだしもう切るけど、何かあったらまた連絡してよ?』


「うん。ありがとう。夢ちゃん。また連絡する。うん…。じゃあ。」



夢ちゃんとの電話を切ると、私はふーっとため息をついた。

今回の件では大分夢ちゃんに心配と負担をかけちゃったなぁ。夢ちゃん泣いてた…。あんなに優しくて情の深い子の側にいて、自分だけが我慢すればいいなんて私はなんて思い上がっていたんだろうか?

いつか夢ちゃんに同じだけのものをお返しできたらいいのに…。

それに、里見先輩にも…。

私は学習机に向かうと日記帳を手にとった。

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