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未知のジャンル

「だから、言ったろ?期待したようにはならないって。親しい友達や親戚とか近い集まりだと、お互いに貸し借りしてたり、趣味も似てて、同じような本読んでたりするから、ビブリオバトルやっても新しい発見はないような気がしたんだよな。こういうのは、もっとつながりが遠い同士か大人数でやらないと。」


俺はそれ見たことかと言わんばかりに森野に言ってやった。


「ううっ。そうだったんですね。皆さん貴重な時間をとってしまってすみませんでした…。」


ショボンと落ち込んでいる森野に宇多川と恭介は慌てて慰めの声をかけた。


「り、りんご…?でもビブリオバトルの企画楽しかったわよ?りんごに紹介してもらって、また読み返したくなったわ巻毛のアンナ、りんごと語り合いたいな~。」


「ああ、いいね。皆が読んだことあるなら、それぞれの本について内容を語り合うのも楽しいんじゃない?」


「夢ちゃん…。東先輩…。」


「まぁ、森野と俺はそれぞれの紹介する本を読んだことがなかったんだから、紹介する意味が全くなかったワケじゃないか…。森野と俺が本を交換して読んだ後に読書会みたいのしてもいいかもな。」


「そ、そっか。里見先輩は巻毛のアンナ読んだことないんですもんね。

私も先輩の宇宙の本読んでみたいですし。」


森野のざっくりした物言いに苦笑いして、訂正してやる。


「『宇宙英雄伝説』だよ。」


「そう、それです。」


森野は笑顔になり、少し立ち直ったようだった。


***********************



学校から帰って私服に着替えた後、

と俺と森野はリビングで、文庫本を手にお互いに向かい合っていた。


俺は赤い背表紙に表紙にはツインテールの女の子のイラストがある本を手にとっていた。

『巻毛のアンナ』か…。

存在は知っていたが、こういうタイプの本は読んだことなかったな。


「ただ、好きな本を交換こして読むだけに、なっちゃいましたね。」


森野の手には青みがかった銀色の背表紙に表紙に宇宙が描かれた文庫本があった。


「『宇宙英雄伝説』…。こういうタイプの本を読むのは初めてかもしれません。楽しみです。」


俺達はそれぞれ、手にした本の最初のページを

めくった…。


30分後ー。

俺達は疲れたような瞳でお互いを見た。


「おい、森野。この本読み辛いぞ。主人公のセリフが長すぎる。空想癖がすごすぎて、思考についていけない。頭がおかしくなりそうだ。」


「何を言ってるんですか先輩?アンナちゃんの長しゃべりこそ、この本の楽しみ処の一つではありませんか。アンナの想像力の豊かさは周りの人達を楽しい気持ちにさせてくれます。」


「いや、疲れしかないんだが。」


「ストーリーの展開も面白い本なので、めげずに読み進めてみて下さい。

それより、先輩。この本難しくて読み辛いです。まず、最初の設定が難しすぎて話に入っていけないです。戦略の記述も多いし、何が何やら。登場人物もやたら横文字で長い名前の人が出てきて覚えられません。」


「詳細な設定があってこそ読みごたえがあっていいんじゃないか。森野のIQには少し厳しいかもしれないが、読んで損はない本だから、もう少し頑張ってみろ。」



お互いにため息をつきつつ、再び目の前の本に向かい合う俺と森野だった。


***********************


「普段読まないジャンルの本を読むって大変なんですね。いつもなら、文庫本なら1日で二冊ぐらい読んじゃう方なのに、まだ一冊の半分も読めてないんです。」


翌日の昼休み、いつもの屋上で、森野はため息をついていた。


「読みにくいのは俺だって同じだ。森野はもっと頑張れよ。俺は何とか一冊読み終えたんだからな。」


「読むのが遅いのは先輩のせいもあるんですよ。読みながら、あれこれ話しかけてきて。

どうしてアンナはここであんな言動をしたのかとか、それにどういう意味があるのかとか。そういうのはフィーリングで感じるものでしょうが!理解力なさすぎです。」


森野は俺が言った文句の倍は言い返してきた。


「まぁ、里見先輩は残念な人だから、女の子の繊細な心の機微とか分からないんじゃない?どうせ、耳障りのいい決まり文句だけで女の子を口説いてきたんでしょう。だから関係が長続きしないのよ。」


宇多川は流し目で軽蔑するように言った。


「そこまで言うことないだろ?単に本の嗜好の問題だろうが。」


「あはは。宇多川さんのセリフ耳に痛いやね。」


恭介も苦笑いしていた。


「まぁ、ちょっと分からないところもあるけど、自分の世界を持ってて、アンナちゃん魅力的な子だよね。

昨日姉貴に借りて読み直したけど、面白かったよ。」


「本当ですかぁ?」


森野は、顔を紅潮させて、喜んだ。


「東先輩はどのシーンが好きですか?」


「うーん、そうだなぁ。アンナが湖で溺れかかったときに、例の男の子が助けるシーンかな?あそこで和解できないのがまた切なくていいよね。」


「あぁ、私もそのシーン好きです!情景を思い浮かべるときれいだし、なかなか素直になれないアンナちゃん可愛いですよね~。東先輩、ツボ押さえてますね~。」


森野は満足そうに微笑んだ。


何だよ?俺に対する態度と随分違うじゃねーか。

恭介も、裏切って女子側につきやがって。

俺は面白くない気持ちで聞いていた。


「東先輩、なかなか分かってるじゃない。私は、アンナが親友の女の子に間違ってお酒入りのフルーツポンチをすすめちゃうところかな?」


「ああ、そのシーンもいいよね~。

あの後、結構大事になっちゃって二人共しばらく会えなくて可哀想だったよね。」


「ねぇ、りんご。今日帰りに、家に寄ってかない?

紫崎さん今日はアップルパイ焼いてくれる予定なの。一緒にパイ食べながら『巻毛のアンナ』について語り合いましょうよ。」


宇多川が森野にウインクをした。


「!!それ、素敵すぎ!!いいの?夢ちゃん?」


「勿論よ。私も昨日本を読み返してたら、りんごとの小学生のときの出来事を色々思い出しちゃってさ。」


「夢ちゃーん、私もだよ~。」


りんごは感動したように宇多川の手を握った。


「そういうのも含めて語りましょ?たまには乙女心の分からない男子から離れてさ。」


宇多川は俺を蔑むような視線を俺に向けると

勝ち誇ったような笑顔を見せた。

くそ。ムカつくな。女心が、分からないて何だよ?


「いいなぁ。俺も行きたい。」


「残念ながら、男子禁制です。」


羨ましがった恭介は速攻で断られていた。


「森野。勝手に遊ぶ約束するな!まだ俺の薦めた本読んでないだろ?俺にだけ読ませてずるいぞ。」


「ごめんなさい。今日だけ友情の為に読書はお休みさせてください。明日から再開しますから…。」


森野は申し訳なさそうな顔で手を合わせた。


「何だよそれ…!だいたいビブリオバトルやりたいって言ってきたのは森野だろ…、何だよ恭介。」


なおも言い募ろうとした俺だったが、

恭介にワイシャツの袖を引っ張られ、こそっと耳打ちされた。


「今日は引いといた方がいいんでないの?空気読めよ、浩史郎?宇多川さん敵に回してもいいことないよ。

将を射んと欲すれば先ず馬を射よってね。

女の子にまで焼きもちやいても仕方ないよ。」


「なっ。そんなんじゃない。ただ俺は、自分だけ読まされて納得がいかないってだけで…。」


俺はすっかり遊ぶモードになってるんるんしている森野と宇多川を見遣った。


「分かった。好きにしろよ。」


俺は観念したようにため息をついた。


「先輩、すみません。ありがとうございます。」


森野が手を擦り合わせて拝み倒してきた。


「じゃ、俺もう行くから。」


「あっ、はい。また後で。」


「はい、さようなら。里見先輩。」


宇多川は笑みを含んだ目で早く行けと訴えていた。


くっそ。宇多川のあの目がムカつく。

ついつい対抗したくなるんだよな。


「あっ、じゃあ、俺も。森野さん、宇多川さんまたね~。」


女子二人に手を降りながら、恭介が後ろから追いかけてきた。


「待てよ、浩史郎。一緒に行こうぜ。振られた者同士仲良くしようぜ?」


「だから違うっての。」


「もういい加減認めればいいのに。強情だな~。」


恭介が肩を竦めた。


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