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先攻 森野林檎

「はい!そういうワケでいきなりビブリオバトル開催します!!」


昼休み、いつもの屋上で、森野は高らかに宣言した。


「今回は先輩と協議した結果、

①世代を越えて読み継がれる名作であること、

②読み易い文章で書かれているもの

③若い世代の人が興味を持ちやすい内容である

この3点を踏まえた本を選ぶことにしました。


一人持ち時間は五分間で、私と先輩の紹介を聞いて、読んでみたいと思った方を選んで下さい。」



「また楽しそうな事やり始めたね。森野さん。」


「りんご、頑張って!」


恭介と宇多川は森野の後押しをするように好意的な反応を示した。


「はぁ。」


俺はそれを疲れたように見守るしかなかった。


「先攻、後攻、どっちがいいですか?先輩?

コイン?コインで決めますか?」


やる気一杯の森野が鼻息荒く、コインを取り出したが、かなり温度差のある俺は、それを制した。


「いや、森野が先攻でいいよ。」


「えっ。そ、そうですか…?」


一瞬出鼻を挫かれた感のある森野だったが、すぐに気を取り直して笑顔になった。


「じゃあ、先攻は私から。先輩、これのストップウォッチ機能を使って5分時間を計ってもらえますか?。」


森野は俺に手の平サイズのキッチンタイマーを渡してきた。

「こんなものまで用意してたのか…。めんどいが仕方ないな。準備はいいか?」


「はい!」


「3.2.1…。始めっ。」


「はいっ。私の紹介したい本はコレです!『巻毛のアンナ』」


森野は赤い背表紙の文庫本を手提げの袋から

取り出して見せた。


「言わずとしれた、名作です。

最初は男の子と間違えられて、老夫婦のもとに引き取られた孤児の女の子が、美しい自然の中で、少女から大人へと成長していくお話です。」


「ああ、それ、知ってるよ。」


「素敵なお話ね。」


恭介と宇多川が口々に感想を言う。


「はい。アンナは、持ち前の想像力や明るい性格で、周りの人々を楽しく幸せにする力を持っている子なんです。癇癪を起こして、クラスメートの男の子の頭を筆箱で殴りつけちゃったり、間違えて髪型をパンチパーマにしちゃったり、たまにお茶目なハプニングもありますが…。」


「ちょっと待て?今さらっと言ったが、筆箱でクラスメートの頭を殴るって、傷害事件じゃないか?髪をパンチパーマにするってファンキーだな。

アンナって子かなり危険じゃないか?」


俺はつい、聞き逃せず、突っ込んでしまうと、

森野は明らかにムッとした様子で、反論してきた。


「アンナを不良みたいに言わないで下さい!

そうしたのにはちゃんと理由があるんですから!

クラスメートの男の子を殴ってしまったのは、アンナが気にしている巻毛の事でひどくからかったからなんです。髪をパンチパーマにしたのは、自分のコンプレックスである巻毛をストレートヘアに変えたいと思って失敗しちゃったんです。

私はアンナの悔しさや辛い気持ちが凄くよく分かるんですが…。

うーん、先輩には、コンプレックスがあまりなさそうだから、アンナの気持ちが、分からないかもしれませんねぇ。」


森野は少し困ったような顔をした。


「だから、デリカシーがないのかしらね。」


宇多川が間髪入れずに付け加えた。


「な、なんだよ。俺が人の痛みが分からない人間みたいに…。」


二人に散々言われて抗議しようとしたところに、恭介が間に入った。


「あー、ホラ。皆本の内容から逸れてない?

森野さん、続けて続けて。」


「はっ。そうでした!」

「残り三十秒だぞ?」


我に返った森野に、冷たく残り時間を知らせてやった。


「えっ。もうそんな?え、え〜と、アンナは時々やらかしちゃうことはあるけど、努力家で、優しくて、賢くて、言葉では言い尽くせない程沢山の魅力を持っている女の子なんです。

えーと、カナダの美しい自然描写。それにアンナの友人や家族、近所の住人など、周りの人々との交流の様子など、素晴らしく、何度読み返しても暖かい気持ちにさせてくれる本です。これが私の愛読書です。二人にぜひ実際に手にとって読んでもらいたいです。」


ピピピピ…!


「はい、5分ピッタリ。終了だな!」


0:00と表示されたタイマーを見せてやると森野は半泣きになった。


「うぅっ。言いたいこと全部言えなかった。」


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