フルーツ三兄弟
「うんまあぁ!やっぱ苺に練乳は最高のパートナーですね!」
森野は夕食後のデザートにこれもかと練乳をかけた苺を食して、うち震えていた。
「この苺もともと結構甘いのに、よくそんなに練乳かけられるな…。」
俺と森野の分の苺は、それぞれガラス製のフルーツ皿に盛り付けられていたが、森野のそれは苺の赤い部分がほとんど見えないぐらい練乳で埋め尽くされていた。
どちらかと言うと甘い物が苦手な俺は甘さを想像しただけで、げんなりした。
「えへへ。苺をこんなに食べられる事滅多にないので、嬉しくってかけすぎちゃいました。家では苺が大人気で、兄弟で取り合いになるんです。いーちゃんなんか、自分の名前でもあるもんで苺が大好きで、一人で半パックぐらい食べちゃうんですよ。それに対抗してかっくんもたくさん食べるから、私はいつも2.3個しか食べられないんですよ…。」
「ふーん、兄弟がいるってのも大変なんだな。そう言えば森野のとこは、皆果物が名前になってるんだな。誰が名前を付けたんだ?」
「いーちゃん(苺)の名前を付けたのはお父さん、かっくん(柿人)の名前を付けたのはお母さんです。昔はよく森のフルーツ三兄弟などと言われていたものです。」
「誰に?」
「夢ちゃんにです!」
何故かドヤ顔でえばる森野。
っていうか、宇多川のネーミングセンスよ…。
「それ、他に浸透していたのか?」
「うちの家族と夢ちゃんの間では流行っていましたよ?」
めちゃめちゃ内輪ネタじゃねーか…。
「森野(林檎)の名前を付けたのは、お母さん…か?」
森野は聞かれて目を見開いたまま、固まった。
ん?
まずい事言ったか?
そういや、森野の両親は再婚だったな。
名付け親が離婚した父とかだったら、もしかして無神経な事言ってしまったんじゃないか?
「あっ、別に言いたくないなら…。」
俺が言いかけると、森野はにっこり笑って答えた。
「あ、はい。お母さんですよ。私の名前はお母さんが、付けてくれました。」
「そ、そうか。」
俺はホッと胸を撫で下ろした。
「先輩。今ちょっとまずい事聞いちゃったかな?って顔したでしょ!ウケる!!」
「うるさいな。森野が変な間をあけるからだろ?」
「ぷぷっ。してやったりです。」
森野は手を口に当ててほくそ笑んだ。
くそっ。遊ばれてる。腹立つな!
「いーちゃんも、私もそれぞれ自分の名前にもなってる苺と林檎が大好きなんですが、かっくんは食感が苦手みたいで柿があまり好きじゃないんですよね。だから、家に柿がある時は平和にいーちゃんと私で山分けにしてますよ。ちなみに先輩はどの果物が好きですか?」
「ああ、やっぱり俺は林檎が一番好きかな。」
「…!!」
深い考えもなしに言った事だったが、目をパチクリさせて時が止まっている森野を見て、俺は急いで付け足した。
「い、いや、深い意味はないぞ。林檎は甘過ぎないし、口がさっぱりするから、あくまで果物、果物として好きって事だから!」
「そ、そんなに言わなくても分かってますよ。先輩!私も林檎が一番好きだから、一緒で嬉しいなと思っただけですから!」
森野も慌てたように言った。
「そ、そうか…。林檎美味しいよな。栄養価高いしな!」
「美味しいですよね…。消化にもいいですしね!」
ちょっと気まずい空気の中俺達は林檎を必死に褒め称えた。
「今度デザートに買ってきますね。林檎。」
「あ、ああ、楽しみにしてるよ…。」
それぞれの顔が熟した果実のようにほんのり赤く染まっている事にはお互いに気が付かない振りをした…。
入れ忘れたお話を後から差し込んでいます。
ちょっと甘過ぎちゃったかな?(^.^;
番外編的な位置づけのお話と思って頂ければ…。
予約投稿のスケジュール動かすのしんどいので今回は2話投稿でお願いします。




