大きな手のひら
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【5月29日(土)】
今日は、里見先輩とご両親へのプレゼントを買いに行った。
夢ちゃんにお化粧してもらったり、服や小物を貸してもらったり、別人のように可愛くしてもらったせいか、途中ナンパをされる事があったり、先輩の元カノさんに会ったり色々あったけど、無事先輩のご両親へプレゼント(キレイなペアのワイングラス)を買うことができた。
お家用の可愛いマグも買えた。(なんと先輩とお揃い!さすがにペアは気恥ずかしいので、4コセットを買いごまかした。)
お昼は里見先輩にパンケーキのお店に連れてってもらった。
生クリームこってりもられたフワフワのパンケーキ…!幸せだった〜。
お小遣いもぎりぎりで、カロリー的にも多分アウトだったけど、悔い無し!!
お出かけ楽しかったけど、どうしてか、先輩は家に帰ってからの方が優しかった。
珍しく夕食を褒めてくれたりした。
野菜スープに入れたピーマンはやっぱり残していたけど。あんなに薄切りにしたのに、目ざとい!
いつか完食させてやりたいなぁ。
ともあれ、いい一日だった。明日は一ヶ月の生活を報告しに、里見先輩の実家に行く予定。
色々うまくいくといいなぁ。
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「う〜ん!」
私は今日の日記を書き終えると、学習机の椅子に座ったまま、パジャマ姿で伸びをした。
デジタル時計を見ると21:30を表示している。
少し早いけど、今日は色々あって疲れたし、明日は朝早くに予定もあるし、
もう寝るかな…。
赤のチェック柄のシーツが敷いてある木製のベッドにどうっと倒れ込み、仰向けに寝っ転がると、今日一日の出来事が走馬灯のように頭を駆け巡った。
朝一番に夢ちゃんに会った。
「きゃあぁーっ。可愛い!!!さすが私のりんご!見立てに狂いはなかったわ。ふふっ。見てなさい二股先輩!これで、りんごをモブとは二度と呼べないようにしてやる。」
メイクセットを手にした夢ちゃんのキラキラした瞳&小悪魔系笑顔。
そんな君の方がよっぽど可愛いぞ?
それから、里見先輩と買い物に行って…。
「森野……なんだよな…?」
「君はバカなのか?ああいうこ慣れた奴が一番危ないんだよ!」
私は今日見た先輩の色んな表情を思い出していた。
驚いた顔、心配して怒っている顔。
元カノさんに会った時の焦ったような顔。
「ふふっ。どうせすぐ解消する許嫁なんだから、私に気を遣う必要ないのに…。慌てちゃって!」
先輩の顔、今思い出しても笑えてくる。
ふと、手をかざしてみる。
途中、ナンパされる私を見かねて手をつないでくれた。
「大きい手だったなー。」
少し骨ばってて、温かくて。
かっくんの小さい手とも、お父さんのふっくらした手とも、ちょっと違う感触。
彼は正しい人ではないんだけど、根は悪い人じゃないんだよな……。
今日の色んな出来事を思い出すと、お腹の辺りがフヨフヨ暖かくなるような…。
なんか不思議な感じ…。
明日は里見先輩の実家へ行って、一ヶ月の報告をする事になっている。
そこで、先輩が同居をどうしても解消したいというならそれもやむを得ないと思う。
私は先輩が体調を崩した時の苦しそうな様子を思い出していた。
どんな人であれ、思いを踏みつけたままでいていい訳がないんだ。
お父さん、お母さんはがっかりするかもしれないけど。
夢ちゃんの言うように、自立するにはまた他の方法を考えてもいいし。
明日はどうなるにせよ、皆が納得した結果にまとまるといいな…。
ぼんやりそんな事を考えているうちに私はあっという間に睡魔に襲われ、眠りに落ちていた。




