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興味の向かう先

「いよーう!浩史郎。最近生徒会の仕事忙しくて、構ってあげられなくて、すまんね。元気してたー?」

昼休み、教室で一人で弁当の包みを広げていると、恭介が後ろから抱きついて絡んで来た。


「いーよ。構ってこなくて。」


俺はげんなり答え、恭介を引き剥がした。


周りにいたクラスの女子達が「キャーッ。」

と声にならない悲鳴をあげた。

遠巻きにしてるくせに、そういうのは反応すんのな。


「あれっ。お弁当?浩史郎料理なんかしたっけ?」


「……。」


ヤバい奴にヤバいものを見つかった。俺のこめかみを冷や汗が伝った。


「それって森野さんの手作…。」


間髪入れず、恭介の口を手で塞ぐ。


「学校でその名前出すの禁止な。」


「ほーへい。ふぎからBふぁんとひようか。」

 (OK。次からBさんとしようか。)


俺は恭介の口から手を離してやった。


「ちょっと事情があって、作ってもらってるだけだ。」


「へーぇ。Bさんと随分仲良くなったんだな。もしかして賭けは俺の負けかな?浩史郎に奢ってやるべき?」


「いや、全然そういうんじゃないんだ。

Bは恋愛の価値観が幼稚園レベルのガキだ。いや、今どきの幼稚園児の方が上かもしれん。

今だにお母さんが好きな人とか言ってんだぜ。」


「あはー。だから言ったろ?Bさんは難しいって。」


「お前以前Bがまだ“女じゃない”って言ってたけど、あれって“子供”って意味だったんだな。」


「まぁね。それと、Bさん、男に対して壁作ってるし、宇多川さんのガードがあるからね。うかつに近づいていけない雰囲気あるよ。」


「確かに、用事があって今日Bのクラスに行ったんだが、Bの態度が男子にはかなり大人しかったもんな。家では、あんなに生意気にポンポン言い返してくるのに。」


「浩史郎、その発言って…。」


恭介が呆れたように言った。


「何だよ?」


「授業参観に来た親の感想みたいじゃね?

ウチではあんなにうるさいのに、学校では結構人見知りなのね的な。」


「なっ。」


「浩史郎、お前…。もしかしてBさんに情が移ってない?」


「そんなワケないだろーが!」


俺は恭介の問いを全力で否定した。


「むしろ、俺は生意気で鬱陶しいBを早く追い出してやりたいと思ってるんだよ。」


「ふんふん。じゃあ、浩史郎はBさんに対しては何の興味もないとそう言うんだな。」


「ああ。当たり前だろ。それだけは自信を持って言えるよ。」


俺は胸を反らして言った。


「俺はBさんにちょっと興味湧いてきちゃったな。」


「え?」


「学校じゃないところでいいから、今度一度会わせてくれない?」


恭介は、いたずらっぽい笑みを浮かべて言った。


「?だってお前は宇多川狙いじゃ…。」


「うん。でも可愛い女子とは、何人知り合いになってもいーじゃん?浩史郎が紹介してくれるならBさんも警戒心薄れるだろうし。」


「ああ…。そうだな…。」


こいつの言う知り合いって…。

いかにも女ウケの良さそうな従兄弟の爽やかな笑顔を凝視した。


それから、先ほどの警戒心ゼロの森野の笑顔を思い浮かべた。


警戒心のない森野なんて、年下キラーの恭介の手にかかれば赤子の手を捻るようなもんだな。


俺は赤ずきんの格好をしたアホ面森野が、

狼に扮装した恭介にまんまと騙され襲われる場面が頭に浮かんだ。


まぁ、森野にされた事を思えば、どうなろうと知った事ではないのだが、形の上では許嫁だし、今は生活の事も色々やってもらってるしな…。


「いや、悪い。Bとはいずれ許嫁も解消して、他人に戻るつもりだし、あんまり俺の知り合いに紹介とかしたくないんだ。

特にお前は従兄弟だしさ。すまんな。」


俺は片手を立てて、恭介に謝った。


「そうか。そりゃ、残念だな。」


恭介はどこか面白がっているような笑みを崩さないまま言った。



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