表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/87

記憶の中の女

あれは確か、中2の夏の日だった。

部活の朝練の後、公園のベンチでへばっていた俺は、あの人に会った。


あの頃、俺は勉強も部活も全てを完璧にこなそうと頑張っていた。


両親も、中1から付き合っていた彼女も、友人も

誰もが俺にそれを期待した。


俺も、それが自分の道だと信じて、成績は常に学年1位を保持し、テニスの部活ではキャプテンを務めた。


だが、勉強とは違い、キャプテンという仕事は

自分自身が努力していたらいいというものではなかった。

今日の朝練で、自分と同じ練習メニューの3分の2ぐらいを課しただけで、あまりの厳しさに部員達は音を上げた。

新入生の一人がボソッと不平をもらした。


「誰もがキャプテンみたいに、機械みたいに完璧ってワケにはいかないんですよ?」


「なんだよ、機械みたいって…。」


俺は入道雲が浮かぶ夏の空を睨みつけた。


そんなワケないだろ?俺だってしんどい中なんとかやってんだよ。さぼるための言い訳しかしない奴に何が分かるっていうんだ。


「そこの美少年。青春してるわねー。」


俺は背後から突然話しかけられて、驚いて振り返った。


そこには、日傘を差した20代前半位のワンピース姿の女性が佇んでいた。


白い肌、ウェーブのかかった綺麗な黒髪、白いレースのワンピースは起伏にとんだスタイルを際立たせている。

瓜実顔に紫がかった大きな目が輝き、

紅をひいた薄い唇はいたずらっぽい笑みを浮かべている。


こんなに綺麗な女の人を俺は見た事がなかった。


その人を見た瞬間、うだるような暑さも、蝉の声も全てが消えて、まるで別世界に迷い込んだような気がした。


その人は躊躇いもなく、俺に近づいて来て、正面に立つと更に話しかけてきた。


「若いのにー、眉間に皺を寄せてたら、ハゲちゃうわよ。ちょっと休憩したら?はい。」


そう言って、少女のように無邪気な笑顔で、スポーツドリンクのペットボトルを俺に渡した。


これが俺と桐生よし乃との出会い。


あの時俺は、喉が死ぬほど渇いていた。


彼女が与えてくれた癒やしの水を飽くことなく、求め続けた。


それが毒の水だとも知らずに。


『どんなに綺麗で清廉潔白そうな顔をしていても、女は皆同じ。嘘と打算と裏切りにまみれた毒虫を心に飼っている。

覚えておいてね。浩史郎…。』


彼女の言葉は今もこの胸に棘のように刺さっている。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ