愛知、カジノ宣言
男は壇上から高らかに宣言した。
「愛知県はカジノを誘致します」
突然の発表に記者らは一瞬息を止めた。
しかし、すかさず最前列のC社の記者が質問した。
「星野知事、AIの次はカジノですか」
星野久人は愛知県をAIの聖地にする公約で当選し、
道路信号システムのAI化プロジェクトは進みだしている。
企業募集は順調だったが、一部メディアは実現に疑問視されている。
「どこに誘致するんですか。
セントレア(中部国際空港)ですか、
それともレゴランドがあるベイエリアですか」
記者はあきれ顔で言い、
「他の自治体に対し、遅すぎます。
場所の確保はできるんですか」
「できます。ご心配ありません」
星野は記者に対しほほ笑んだ。
「横浜のように住民に反対されるに決まってます。
カジノを毛嫌いする人の方が多数派です」
記者は星野に鋭い視線を送っている。
「誘致する場所は必要ありません。
だから建設費も必要ありません」
星野は清々しい顔で断言した。
「場所が必要ないんですか?」
記者はあからさまに眉間にシワを作った。
「お得意のAIですか」
「そうです。
それです」
星野は記者を指さした。
「ネット上でのヴァーチャルカジノです。
見積もりでは数億円で可能ということです」
「ネットカジノは違法じゃないですか?」
記者は声を荒げた。
「カジノ解禁でしょう。
一般人が実際にカジノをするのが合法で、
ネットでするのが違法なんてありえないでしょう。
企業がカジノを運営するのは問題があるかもしれませんが、
自治体が運営するなら問題がないでしょう」
「本当にネットカジノなんて許されるんですか?」
「政治家が抜けているんです。
ネットカジノをどうするか決めてないなんて、
無能な政治家に感謝し、愛知県は自治体としてネットカジノを運営します」
星野は自信満々に言い切った。
「自治体にネットカジノを運営できるんですか」
記者は鼻で笑った。
「自治体ということを活かして、公正なネットカジノを売りにします。
怪しげなネットカジノは勝っていると
赤が連続25回でるような奇異なことが起こり、
明らかに勝てなくなります。
そんなことがないよう公正さを売りにします。
また、AIを活かして、
不正防止、お金を使い過ぎないようにします」
愛知県はネットカジノを設立しますと
星野は記者会見を締めくくった。
明日の朝刊の一面を飾ること間違いないだろう。
だが、星野の野望はまだ続く。
世界支配の野望へと。