様子を見るだけで終わるわけがない
キャッチャーコーナーで男三人に絡まれているのは、やはり伊月だった。
なんとか穏便にかわそうとしてるけど、あれはダメそうだなぁ……。
無理矢理押し切って、お持ち帰りされそうになってるわ。
……っておいお前! 何肩に手ぇ回してんだ!!
「おい、俺のツレに何してんだお前ら」
「えっ……」
しまった、思わず声をかけてしまった……!
しかも俺のツレって!
見ろよあの伊月のぽかんとした顔!
後であんたとツレとか何それキモいとか言われたらどうしよう。
そんなことを考えつつ、伊月の手を引いてこっちに引き寄せる。
うわヤバイめっちゃいい匂いしてる……って違う! いい匂いだけどその前に!!
こんだけアピールしたんだから空気読んでくれ、そしてこれで引いてくれーとの願いを目力に込める!
「……その子俺のツレなんだけど、何してんの?」
「はぁ? なんだこいつ」
「いやいや、お呼びじゃないんですけどー?」
あ、ダメだこれ、俺の目力が全然通用してないわ。
「俺ら今その子と仲良くお話ししてんのよ? なぁ、お前のツレだーとか聞いてねーんだよ!」
それどころかこっちの胸倉を掴んで――――
来た手を逆に、思いっきり握り込んでやる。
一時期、暇にあかせて鍛えた上半身と握力を舐めるなよ……!
「……っ!!!?」
「さっきも言ったけど、こいつ俺のツレなんだよ、もう引いてくれません?」
「わ、わかったから離せよ……!」
手を離してやると、こっちを睨みながら離れていく。
さっさと諦めないから痛い思いするんだよ、ったく。
……はぁ、ごめん、調子乗ったけど本当に怖かったです……!
「あの……」
まあでも、穏便に済んだ方だな。
殴られるとかなくてよかったよかった。
穏便に済んだなという安心感で、俺は忘れていた。
「あのっ!」
「ん?」
「手……そろそろ離して……!!」
涙目上目遣いでこちらを睨む、伊月の存在を。