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幼馴染と俺とあいつと

 日向の突然の告白から、1週間。

あれから、特に日向から何かを言ってくることもなく、こちらからも何も言わない。

いつも通り、変わらぬ関係が続いていた。


なんなら、昼は一緒に宿題でもやろうか、という話が出れば、

そのまま昼も食べて、夜も食べて、なんて時もあった。


ひかりにも、何かあったと見抜かれているようだが特に何も言っては来ない。

……まぁ、何か言われても返答に困るんで、助かってはいるんだけどな?


普段と特に変わらぬ毎日に、安堵しかけていた。

……時間は前には戻らず、常に進み続けているというのに。



気付いたときには、それは始まっていた。


――――ぺこん

日向

今日、時間あるかな?


「ん? なんだ日向からメッセか……わざわざこんなもん送らなくても、暇なのわかってんだろー」


『時間、あるぞ、なんか用事か?』

『大事な用事なんだ、13時頃に出て来られる?』


13時……今が10時だから、余裕だな、問題ない。


『大丈夫だ、問題ない。駅前でいいのか?』

『ううん、今日は学校まで来て欲しいんだ』

『学校? どっか連れてけーとかじゃないのか』

『ヨウくんは、私をなんだと思ってるのかな!?』

『悪い悪い、じゃあ13時に……学校のどこだ?』

『屋上で待ってる』

『了解、じゃあ後でな』


 13時に学校の屋上、か……。

これは、来るものが来たのかもしれない。

まだ、俺の中で答えが出ていないものに、俺はどう対応すればいいのだろうか?



 * * *



「暑い……」


 今日も今日とて、ボクは陸上の練習で、学校に来ていた。

これで夜も先輩と走りに行くんだから、どんだけ走るんだよ! って言いたくなる。

これは、次の休息日は先輩にどっか遊びに連れてってもらうしかないよね!

毎晩付き合ってるんだから、それくらいの役得はあるはず、うんうん。


「ひかりー、そろそろ次行くってー」

「了解~、ちょっと待って、新しいタオル取ってくる……暑すぎ!」

「おっけー、夏の昼間の練習はほんと、勘弁してほしいわ」

「シャツもずぶ濡れだよね」


そこまで言って、先日の先輩とのずぶ濡れ事件を思い出す。

今思い出しても、顔から火が出そうなくらい恥かしい……!


それにしても。


「最近の先輩、絶対様子おかしいよね」


何かを考え込んでいるというか、いつもは見せない表情を時々するのだ。

ふっと、遠くを見ているような……なんだろう、あれ。

絶対何か、あったんだと思うんだけどな。


そんな風に考えていると、夏休みに学校で見ることのない、人の姿をみかけた。


「あれ、センパイだ……センパーイ!!」


呼びかけてはみるけど、反応がない、聞こえてないのかな?

よくよく考えれば、センパイだって陸上部なんだから、夏休みに来ていても不思議はない。

あ、もしかして金屋先輩あたりに呼び出されたのかな?


「よーし! 追いかけてびっくりさせてやろう!」


驚くセンパイの顔を思い浮かべていると、楽しくなってきた。

ボクは校舎へと入っていく、センパイの後を気付かれないよう、こっそりと追いかけた。


そこで、何を見ることになるのかなんて、想像もしていなかった。


 * * *



 ふぅ……緊張してきた……。


時間は13時10分前、ヨウくんを学校へ呼び出した私は、すでに屋上に来ていた。

これから、ヨウくんがここに来る、そして私は、ちゃんとヨウくんに好き、って伝える。


……どうなるかなんて、分からない。

これでふられて、また前みたいに、話もできない関係に戻るかもしれない。


想像しただけでじわりと涙が滲んできて、自分でもびっくりする。

じゃあ何もせず、今まで通りのぬるま湯に浸かったような関係でいればよかったのか?

そう思うも、それも私は嫌だった。


ヨウくんに、女の子としてみて欲しい、もっと触れて欲しい。

……そう、どうしようもなく思ってしまったのだ。


いつの間に、私はこんなに我慢が出来ない子になったんだろう?

でも、それくらいヨウくんが好きで好きで、どうしようもなかったんだ。

約束の時間まで、あと5分……。


「うわ、屋上あっちぃな……地面焼けてるぞ……」


そう思っていると、屋上に私の想い人、ヨウくんがやってきた。

ふふ、少し早めにきてくれたんだ? 嬉しいな。


「ヨウくん、ごめんねこんなところまできてもらって」

「いや、いいけど……こんなとこじゃないとダメだったのか?」

「うん、どうしてもここじゃないとダメだったの」

「そか」


ヨウくんも、今日私が呼んだ理由、わかってるよね?

私、これから好きだ、って言うからね?



そうして、私たちの時間が、動き出した。


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