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おや? 後輩の様子が……?

 ここ数日、ひかりの様子がおかしい。


いや、様子がおかしいというか、あいつの姿を見かけないというか。

いつもならウザ絡みしてきてあーうぜえ! ……となるのだが、一向に姿を見せない。

夜もほぼ毎日一緒に走っていたのが急に来なくなったので、調子が狂って仕方がない……。


「なぁ陽愛ちゃんや……最近、ひかりの様子はどうなんだ?」

「ん? つっちー……はいつも通りだと思うけど……なんで?」

「最近、あいつ顔見せないんだよ」

「え? 昼間はともかく、夜一緒に走ってるんじゃないの?」

「それが、ここ数日は夜も来ないんだよなぁ……」


なんとなく、あいつが来ないと寂しいというか……張り合いがないと言うか。

なんなんだろうな、これ?


「つっちー、そんな事何にも言ってなかったけど……ほんとに来なかったの?」

「ああ、来てない」


ほんと、どうしたんだろうな、あいつ……。


「ったく……何やってんのよ……つっちー……」

「ま、あいつも色々あるんだろうけどさ」

「もしかして……兄はつっちーに何かした……!?」

「何かってなんだ陽愛ちゃんよ」

()()()の差し入れ使わずに、つっちーを無理矢理押し倒して……」

「してない! してませんから!!」


陽愛ちゃんの中での俺はどんなケダモノなんですか!

というかナチュラルに俺をクズだと思ってませんか!?


「まぁ、兄にそんな事が出来るとは、私も思ってないけどね?」

「思ってないなら言わないで欲しいよ……びっくりするから……」


よかった! まだ陽愛ちゃんの中の俺は、頼れる兄のままだ!

これで心からケダモノだと思われてたら、俺はもう立ち直れなかったかもしれない。


「まぁ、とりあえずつっちーの事は私に任せておいて」

「ん、わかった。お願いね陽愛ちゃん」

「この借りはハーゲンダッツでないと埋められないよ?」

「了解、愛してるよ陽愛ちゃん!」

「ん」


さすが、うちの陽愛ちゃんは頼れる妹だ……。

俺は安心して、走りに出るのだった。



「つっちー……昨日も一昨日もちゃんと情報流してたのに……どうしたんだろ……」


 * * *



 そうして、ひかりと顔を合わせることなく、終業式がやってきた。

これでついに1学期が終わり、明日から夏休みが来る。

学校が休みになれば、ひかりと会う可能性もぐんと減るだろう。


このまま、もやもやを抱えたまま夏休みを迎えるのかと思うと、微妙な気分だ。


(まぁ、今は陽愛ちゃんに任せるしかないんだけど)


しかし、よくよく思い返してみると……今更だけど、俺、ひかりの連絡先って知らないんだよなぁ……

どこに住んでるかっていうのは知ってるんだけど。

普通これだけ付き合いが長いと、携帯の番号とかメアド、なんならlineなんかも

交換するもんじゃないんだろうか?


……あれ? もしかして俺とひかりって、間に陽愛ちゃんがいないと、

マジで一切の接点なくなるんじゃないの……?

これまでは放っておいても向こうから寄ってきていたからなんとも思っていなかったけど、

来なくなったら来なくなったで、逆に気になって仕方なくなるんだから困った奴だ……。


「……ん?」


そんな事を考えながら廊下を歩いていると、ひかりが体育館の方へ歩いているのが見えた。

今いるところからなら、追いかけたら捕まえる事が出来る、ギリギリの距離だ。

数日振りにひかりを見たことで、なんとなくもやもやしていた気分が少し晴れたような気がする。


「なんか……一言、言ってやりたくなってきたな……」


そうと決まれば話は早い、俺はひかりの後を追うことにし……。



「俺、ずっと前から土矢さんの事が好きだったんだ。だから俺と付き合ってくれ!」



告白シーンを見せられることになった。

て言うか……おいおい……お前誰だよ……!

ひかりもひかりで、何顔を赤くしてきょろきょろと挙動不審な態度してるんだよ……!

自分の知らない、ひかりの一面を見せられて、また心の中のもやもやが増えていく。


「兄は知らないかもしれないけど」

「うわっ!? ひ、陽愛ちゃん何時の間に!?」

「しーっ、ひーちゃんに気付かれる」


だからって音もなく忍び寄って、急に声かけてくるのやめてくんない!?

ていうか何時の間に俺と一緒に覗き見してたの……忍者かよ。


「ひーちゃんは、意外と人気があるんだよ」

「……ふぅん」

「ヒナちゃんには負けるけど、明るいし、優しいし、スタイルいいし……」

「ちなみに陽愛ちゃんは」

「今は私の事はどうでもいいし!」


あ、痛い痛い、やめて足踏まないで陽愛ちゃん!


「ちなみに、今ひーちゃんに告白してる人も、結構人気がある」

「………………ふぅん」

「ひーちゃんが、あれで付き合うって言ったらどうする?」


どうするんだろう。

その時、俺は笑ってよかったな、って言ってやるんだろうか?

なんとなく、今の光景を見ているとイライラしてくる。


「あれ、まだ終わってないけど最後まで見ていかないの?」

「俺に後輩の恋愛事情を覗き見する趣味はないからね」

「めちゃくちゃ気になって仕方ないくせに」

「そそそそんなことありませんよよよよ?」

「あ! ひーちゃんが……!」

「!!」


頭を下げて、なにやら謝っているように見える。

どうやら、今回はご縁がなかったようで……といった話にまとまったようだ。


「ほっとした?」

「してない……お兄ちゃんは先に帰るよ」

「はいはい、また後でね」

「ん」



「ね、そろそろ、色々とはっきりしないとダメだよ?」


陽愛ちゃんが、何を言ってるのかよくわからなかった。

だからこそ、俺の返事は……。


「そうなぁ……」


当たり障りのないものに、なってしまった。

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