幼馴染は宣戦布告する
「ヨウくん、誰この子?」
「センパイ、この人誰っすか?」
何で君ら、初対面なのにそんな態度硬いの?
「えーっと……土矢、こいつは伊月 日向って言って……」
「はじめまして、ヨウくんの幼馴染の伊月 日向です、よろしくね?」
「……よろしくっす」
なにこの雰囲気、怖いんだけど。
「で、こいつは土矢 光。陽愛ちゃんの友達で、陸上部の後輩」
「ああ、陽愛ちゃんのお友達なんだ」
「……ええそうっすね、陽愛ちゃんとは小学生の頃から仲いいんで、もちろんセンパイともその頃から仲いいんすよね。てことは、ボクとセンパイも幼馴染って言えるんすかね?」
「うーん、どうだろうなぁ……幼馴染……になるのかお前?」
「多分幼馴染っすよ! 伊月さんもそう思うっすよね!」
「……ふーん……」
怖い。
帰ってもいいかな、俺。
一見にこやかに会話してるように見えて、目が笑ってないよこの二人……。
「それにしても、珍しいっすね、センパイがこんなところでお昼食べてるのって」
土矢が何の遠慮もなく俺の隣に座ってくる……って近い近い!
こいつほんと、パーソナルスペース狭いんだよ、もう密着だよ!
俺はあえて土矢のほうを見ないようにする。くそ、顔が熱い……。
「あー、ちょっと教室が居づらくてな……土矢はいっつも外で食ってるのか?」
「いつもみたいに、『ひーちゃん』って呼んでいいっすよ?」
「呼んでないだろ」
「伊月さんの前だからって照れなくてもいいっすよぉ」
ケラケラと笑いながら、背中をぺちぺちと叩いてくる。
痛く……はない、痛くはないけども! ああ! 腕に! 腕に!!
伊月が物凄い冷たい目で見てる気がするが、ここはスルーだ。怖い。
「ボクらはもう食べ終わって……ほら、あそこでバレーでもしようって。陽愛ちゃんも来てるっすよ」
「お、本当だ。おーい陽愛ちゃーん! 今日も可愛いよー!!」
「うわぁ、センパイキモいっす」
「ほっとけ」
陽愛ちゃんもこちらに気付いたのか、手を振り返してきてくれる。
もはやこの場の癒しは陽愛ちゃんしかいない……土矢引き取ってくれないかな……。
との意思を目力にをこめてみたが、どうやら通じなかったようだ。
まだまだ愛情パラメーターが足りない……!
「ほんと、陽愛ちゃんのこと溺愛してるっすねぇ」
「兄が妹を大事にするのは当たり前の事だ、何言ってんだお前」
「その溺愛っぷりをボクにも回してくれてもいいんすよ?」
「えー……お前に回したってリターンなんもないじゃん」
「なんと! 超絶美少女であるボクの愛を独り占めできます!」
「心の底からいらねぇ……」
「お得だと思うっすけどねぇ」
何がお得なものか。
仮にお前と付き合うなんてなったら、絶対俺が苦労するに決まってるだろうが。
そのテンションについていくの、結構しんどいんだからな。
「……ふーんふーん、ヨウくんと土矢さん、仲いいんだねぇ」
「にひひ、やっぱりボクとセンパイは特別に見えるんすね! 恥ずかしいっす!」
「はいはい言ってろ。伊月はこいつの言うこと真に受けなくてもいいからな」
ほんとにそんなんじゃないからな、こいつ。
そんな話をしていると、陽愛ちゃんからの呼び出しがかかった。
どうやら土矢を呼んでいるようだ。
「っとと、陽愛ちゃんが呼んでるから、そろそろ行くっす!」
「おー、陽愛ちゃんのこと頼むぞ」
「了解っす! じゃあまた、夜に!」
「絶対来るなよ!?」
そういい残し、土矢が走り去っていく。
ふむ、後ろでぴょこぴょこ揺れるポニーテールもなかなか可愛いな……。
……はっ! お、俺は今…いったい何を……!?
「ねぇヨウくん、夜にって何のこと? 土矢さんと遊びに行くの?」
「え……いや、そういうわけじゃないんだけど……」
「……ふーん、私には言えない事するんだ、不純異性交遊なんだ」
「何すねてるんだよ」
「どうせー、私は土矢さんみたいにスタイルよくないですよーだ」
ぷーっと、またあひる口になる伊月のほっぺたをぷすっと突いてやる。
じろり、とこちらを睨んでくるが、全然怖くない。
むしろ可愛いとさえ思う。
「はぁ……わかったわかった、あんまり人に言って欲しくないんだけどさ」
そうして、日課として朝夜に走っていることを説明し、
そのときにたまたま、土矢が合流し、一緒に走っていることを説明する。
たまたま合流、のところで伊月の目が冷たくなった気がするが、
本当にたまたまとしか言い様がないのだから仕方がない。
え、俺監視とかされてないよね? 盗聴器とかついてないよね??
「そっか……。ねぇ、もう走っても大丈夫なの?」
「あれ、あのこと知ってるんだっけ」
「まぁ……うん、お母さんからも聞いてたし……」
「お隣さんだしなぁ。……うん、経過は問題ないって言われてる」
「そっか……」
「で、走り出してすぐから、土矢がついてくるようになってって感じかな」
正直、あの頃は結構精神的にキていた時期だったから、土矢が付き合ってくれたのはありがたかった。
いつもふざけた態度を取っているが、あの底抜けの明るさに助けられたと、本当に思っている。
絶対本人には言わないけど。
調子に乗ったら、本気でウザいから。
「そっか、じゃあヨウくんが一番辛い時を支えてたのって、土矢さんなんだね」
「いやぁ、あいつは支えてたっていうか……」
支えてもらったことあったっけ?
うーん……うーーん??
ダメだ、なんか、いつもケラケラ笑ってたところしか思い浮かばない。
「……これは、土矢さんと相当な差がついちゃってるなぁ……」
「うん?」
「ううん、なんでもない。……ヨウくん、私負けないから!」
「お、おう……まぁ、頑張れ?」
俺の幼馴染は、本当によくわからない。




